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第3章-3 アイドル島を出る

 その悲鳴だけでこの霧を消し去り太陽までの道を開いてくれそうな位に、クリスは叫んだ。

「何! 何! 何なのここ⁉ あたし死んだ⁉ あたし死んだの⁉」

「大丈夫です! まだ死んでませんから! 私たちはまだ死んでませんから!」

「それならそれで大問題よ! ここはどこ⁉ ここは何なの⁉」

 昨日の肝試しとは違い今回は本当の死霊。手を意味も無く上下するクリスの焦り方は本格的だ。

 ここからどうにかして、危機感をクリスに持たせなければならないんだけど。

「ちっ。こっちまで来るか」

「ふぇ? えっ⁉」

 そこへタイミングを合わせたかの如く、アーチェが私たちに向かって後退してきた。

 無論、そのアーチェを追っている骸骨たちもその後に続く。単純な視点から見れば、私たちに向かって骸骨の群れが突撃してきているという風に見える。

 特に私の隣の人には。

「き、き、き、来た! こっち来た⁉」

 それはもうこの世の終わりと言わんばかりの表情で、私にすがってくる。

「流石にこれだけの数を契約したり、何とかすることは……」

「あなたネクロマンサーでしょ! 何とかしなさいよ! カトリナも聖職者なら浄化してよ!」

「それは先ほどしました。けれども、数が数で」

 先ほど聖職者としての力を存分に発揮し疲れた上にディーナに二回も落とされているのだから相当消耗しているのは間違いない。

「でも、メリアスさんの抱擁があればまだ」

「はいよっ!」

「えぇぇぇ⁉」

 クリスからボールのような扱いを受け、私は茨の(カトリナ)へと放り投げられた。

「あぁ。こうしていると元気が湧いてきます……」

 私は寿命が減っていく気がします。

「元気が湧いたならこれ何とかしてよ!」

 抱きかかえたまま頬擦りし続けるカトリナにクリスが癇癪を起す。そのクリスの横をアーチェが、そしてその後ろの骸骨たちが横切る。

 カシャカシャと独特の骨がぶつかり合う音を横にするのは身の毛もよだつ光景でしょうね。今の私もそうですよ。身の毛もよだつ状態。

 一体、それも紛い物で逃げ出す位なんだから、それが数十なら発狂してもおかしくは、


「せ、せ、殲滅よぉ‼ センメツョォー」


 あ、やばい、壊れた。

 丁度足元にあった愛剣を抜くと、脇を通り抜けようとしていた数匹をものの一回の閃にて切り払った。

 そして焦点を完全に失った瞳はアーチェを追いかけていた一団を見据え、背後から襲撃。狂戦士じみた剣戟が骨を砕き、崩れ落ちた骨をも足で踏み砕いていく。

「恐怖心が遂に起こしてはいけん何らかの本能を呼び覚ましてもうたんやな……」

「ふぅ。これで少しは楽になるか」

 ディーナとアーチェがそれぞれ思い思いの事を口にする。

「あー……やっぱりここが天国です……」

 一方未だに夢見心地なこの方。天国と言うか寧ろ地獄ですよここは。

「で、どうするんや? まさか全部倒すいうんか?」

「いえ、これは恐らく――」

「うへへあはは。消えろ、消えろ!」

 私の見解を応えようとする中で轟く奇声。型破りも甚だしい乱切りが容赦なく骸骨たちを襲う。その結果私たちの船上にいた骸骨たちはかなり消滅し、新たな兵たちもクリスに幾度も立ち向かうも、木っ端微塵になっていく。

「いくらいるのかわからないのなら、いっそのこと敵地に入り込むか?」

「うーん。正直気乗りはしないのですが、それしか方法は」

 と、そこで現状を整理するために動いていた頭が少し前に遡った。

「あれ? アーチェさん?」

「どうかしたか?」

 普段は透き通るような白い肌が息切れするほどに高揚しているのが霧の立ち込める中でもハッキリと見えた。

「振り切れたんですか? かなりの骸骨に追われていましたけど」

 先ほど横切って行ったアーチェの後ろにはかなりの骸骨たちが迫っていたはず。クリスが背後からかなりをバッサリしたものの、全部とはいかない。数が減ったから全部倒し切ってしまったのだろうか。だとしても銃声が一切聞こえなかった。

「振り切ったわけじゃない。クリスが斬りかかった途端、後ろにいた奴らがクリスを狙い始めたんだ。残弾数も不安になってきたから深追いせずに戻ってきたんだ」

 あれだけ執拗に追いかけていたアーチェを意図も簡単に諦めた? ずっと襲っていたアーチェに見切りをつけた? それもずっといた私ではなく新たに加わったクリスを狙い始めた?

 狙う順番? 何らかの法則がある?

 悪霊の法則……一つだけ心当たりが。

「カトリナさん。あの後って」

「えっ! この後ですか! もちろん、もちろんOKですよ! さぁどこへ行きますか⁉」

「え、え、えぇぇ⁉」

 確認を取る前にカトリナが私を担ぎ上げて船内に戻ろうとする。いやいや、この状況で籠城作戦ですか⁉

「んなこと言っとる場合かあほ!」

「いだっ!」

 その様子を見ていたディーナが怒りの鉄槌。カトリナの頭部にハンマーが振り下されると同時にカトリナが呻き、ついでに私が解放された。

「何するんですか悪鬼!」

「うちを化け物扱いするな! てか餓鬼から悪鬼にランクあげかい!」

 カトリナのディーナに対する格付け(悪い方)が上がった。そのやり取りを見てあることを思い出す。

「そういえばディーナさんも一時期追われてましたよね?」

「んやで。重たい荷物持ってひたすら逃げ回っとったんやで!」

「重たいとはなんですか! 乙女に対して失礼ですよ!」

「うっさい! そんなでかいもんぶら下げてる癖に重くない訳ないやろ!」

 まぁ確かに重たそうですよね。私も何度圧死させられたことやら。

 ただ、今確認したいのはそこではなく襲われた基準である。

「アーッハッハハー。次に殺されたいのはどいつだー!」

 その襲われた基準最新が遂に殺人、基殺霊鬼に変わり果てていた。

「あ、クリスはんが一人で攻め込んでいくで⁉」

「何で今まで気絶したり逃げてばっかりだったのにここは追うんですか⁉」

 限りなく両極端すぎる!

 骸骨たちが渡したぼろぼろな傾斜のある橋を、今度はこちら側から渡っていく。無論、行く先は敵地。

「追うしかないな。敵はまだいっぱいいる」

「死霊がらみになるととんだやっかい者やな!」

 明らかに危険と判断したアーチェと呆れながらも自分の非を理解しているディーナが追いかける。

「ちょっと待ってください! 行くのはいいんですがまだ私の話が!」

 けど二人ともまだ死霊の行動理由を理解していない。そこを考えるのはネクロマンサーである私なのだが、答えを得るにはまだ時間と決定打が足りない。

 仕方なしに私も追う。うわ、橋が不安定にかかっている為にぐらぐら揺れて落ちそう。現に何体もの骸骨が海に落ちているのが見えてしまった。

「メリアスさぁ~ん!」

 その橋が大きく揺れる。

「待ってください! 怖いですから! 怖いですから揺らさないでください!」

 足元と背後に恐怖、そして前方に死地。最悪の局面だ!

 もうこれ以上は前に進むしかあるまいと観念し、不安定な橋を走り抜ける。幸いにして今回はこけることもなく最後まで走りぬき、死霊船に乗り込んだ。

 そこは私たちの船から見た風景となんら変わりなく、腐敗していた。そして高さの関係上私たちの船からは見えなかった床は所々穴が開いている。

「キ、キ、キ来たわね! ミ、ミ、ミ皆殺しよ!」

 その中央付近、クリスの周りには新たな骸骨兵が近寄ってきていた。

「まずいな」

 アーチェが再び銃を構えなおす。

「待ってください! まだ相手の動向がわかってません!」

「動向って何なんや! 普通にうちら襲っとるだけやろ⁉」

 先行しているクリス、それに追随しようとするアーチェ、ディーナをなかなか止められず、戦況はどんどん佳境へと近づいている。それがいい方か悪い方かは別として。

「メリアスさぁーん‼」

 こっちは悪い方へ向かい中。

 カトリナが後ろからものすごい勢いで走ってきて、そして橋を踏み切り飛び込んで、

 バキャッ。

「えぇぇ⁉」

 嫌な音がして跳びかかってくるカトリナをしゃがんで避けて、船の縁まで駆け寄ってみる。

「まじかぁぁぁ⁉」

 アクシデントには敏感なディーナも嫌な音につられ、船の縁まできて絶叫する。

 カトリナが踏み込んだであろう箇所から橋代わりの板が真っ二つに折れ曲がり、支点を失った橋が縄の間からこぼれ、着水と共に大きな水飛沫をあげた。


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