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第2章-9 アイドル島に行く

 目を開けるとまだ暗闇が続いていた。おかしい、瞼が開いた感触はあったはず。

 瞼に力を込める。うん、瞬きはできる。

 ではここは、と思ったら微かな風と共に揺れる何かが見えた。

 そうかここはまだ森の中。揺れるものは木々の葉、そしてそこから見える光は星々。

「メリアスさぁーん!」

「ぐべっ!」

 予告も無く闇は再び襲い掛かる。だが、今度は物理的に何か柔らかい物が覆い被さるように視界は消えた。消える前に聞き覚えのある声が聞こえた気もするけど。

「メリアスが窒息しかけてるぞ?」

「えっ⁉ あぁ! メリアスさん!」

 再度また光は戻った。そこにはカトリナとアーチェの姿があった。

「えっと……これは一体どんな状況で?」

「クリスさんとディーナさんですよ! メリアスさんをいじめて」

 戒めるような視線をカトリナが送る先にはへばる二人がいた。

「ディーナが悪いのよ……。たちの悪い仕掛けばっか揃えて」

「ぜぇぜぇ。そのたちの悪い仕掛けに過敏反応するクリスはんが悪いんや。どうしてくれねんうちの仕掛け!」

「知らないわよ!」

 互いに顔を紅潮させ、息を切らせながら怒鳴りあう。切らせてる度合いが違うのは体力の差だろうか。

「どうすんねんや……投写水晶(フィルム)なんも取れへんかったやないか」

「そもそも幽霊なんていなかった訳ですし。こんな企画をするくらいならもうあの技術を売りに出した方が早いのでは?」

「嘘よ! いたでしょ! めっちゃやばいの!」

「クリスさん。あれは違いますから」

「嘘よ!」

 ここまで信じちゃう人がいるんだから相当なヒット商品になるのでは。私も侵入者防止用に一個ほしいです。そしたら鬼般若をクビにします。

「一応撮ったには撮ったぞ。逃げてるシーンだが」

「ぬぁに! よく撮れたな。あんなかまいたち!」

「誰がかまいたちよ! ディーナの足が短いだけでしょ!」

「んやと!」

 あ、また言い争いが始まりそうだ。

「事実に目を背けるな。これがそれだ」

「煩いわ! うちとて好きでこの体型維持しとるんやない! て、なんやこれは! どこに写っとんねん!」

「真ん中にだ」

「この豆粒みたいなのか! 何でこんな遠いんや!」

「ちゃんと標準は合わせたぞ。メリアスの心臓部」

「そこでハンター気質ださんでええわ!」

 アーチェの本性を垣間見た気がする。というか心臓部ですか。せめてアイドルなら顔とかにしてもらいたい。「じゃあ脳にするか」とか言い出しそうだけど。

「あぁ……もう疲れたわい。こうなったら明日何が何でもいいシーン撮るで!」

「もう肝試しは止めなさいよね」

「誰かさんがセット壊したせいでもうやれへんわ!」

「ならよかったわ。それじゃ帰ってお風呂にしましょ。もう嫌な汗でべとべとよ」

「どこがええんや! セットに費やしたお金いくらやと思っとるんや!」

「騒がしい人たちですね……」

 口論の末にクリスは何か納得した様子で今度は森ルートを外し、海岸ルートをいく。一方のディーナは何か名残惜しそうに森ルートに入っていく。

「ちゃんと給与が出てくれるかが心配だが」

「仕事にならなくても私はものすごく疲れましたよ……」

「私もまだメリアスさんと全くスキンシップ取れてません!」

 いやいや、今日肌に触れあっていた時間はクリスさんよりダントツで長いですよ。

「明日もこんな感じが続くんでしょうかね……」

「その予定だぞ」

「はぁぁ……」

 当事者グループに言われたんじゃ仕方ないか。

「うんしょ、じゃあ私も戻ろうかな今日は疲れたし――て、クリスさんこんな崖を降りて行ったんですか!」

 確かにここからだと私たちが乗ってきた船は見えるけど、そこは断崖絶壁とまでは言わないけど、足場の少ない斜面。足を滑らせれば大怪我間違いなしの場所である。

 ――あれ?

 今見える船の前にあるバーベキューの名残火、船の中を照らす何らかの照明。そしてこの位置。

 ここって海辺にいた時に人影を見た場所?

 もしかしてと辺りを見渡してみる。が、今見ている崖以外には森に行くルート以外に道はない。残りの面は全て海に面している。あの影は今どこに?

 移動したのかな? いや、そもそも同じ場所に居続ける可能性もないか。私が見たときだっていたのは一瞬だし、また戻ってきている可能性がないにしても、かなり低いわけだし。

 それにここが肝試しのゴールであるのならばここにも何らかの仕掛けを設置に船乗りの人たちが来ていたのかもしれない。私が見たのはそれかもしれない。

「どうしたんだメリアス?」

 あ、今の行動ってかなり不審だったかな。アーチェが声をかけてきた。

「いえ、実は昼頃あそこの浜辺からこちらを見た時に人影がいたんで、その時は何だろうなぁと思ったんですけど、恐らくこの肝試しの仕掛けをしていた船乗りさんだったんだろうなと今思っただけです」

 特に怪しまれることもないだろうと全てを打ち明ける。そうか程度の話で治まるだろうと思った。

「それはないぞ」

 が、否定が入った。

「え?」

「ここはそもそも肝試しのルートから外れている」

「えぇっ」

 おかしい。私が目を覚ましたのがここならば、恐らくクリスがこのゴールまで突っ切った物と考えるのが正しいはず。

「ここはクリスがでたらめに走った挙句に着いた地点。本来のゴールはまた別の場所なんだ」

 けど、それさえアーチェは否定した。

「ちょっと待ってください! じゃあここは肝試しの中間地点だとか、通り道だとかいう可能性は」

「それもない。ここはコースからもだいぶ外れている」

「そ、それじゃ私が見たのって」

 誰? ここの原住民? いやでも無人島みたいなことをディーナは言ってたし。

「あ、あの」

 そこでまた違う声。ここに残っている人物から考えると自ずと誰か決定する。

「どうしたカトリナ」

「メリアスさんと一緒な人かわかりませんけど、私も人影を見ました」

「本当ですか!」

「はい! 運命を感じますね!」

 いや、感じなくていいです。

「どこでなんだ?」

「それが――甲板何です」

「えぇ⁉」

「なんだと」

 こればかりはアーチェも若干だが、声が高ぶる。なんせ私たちの船の上なんだから。

「それは船乗りの間違いではないのか?」

「私もそうだと思ってご挨拶をしたんですけれども、いきなり逃げ出したかと思ったら、いきなり甲板から外へと飛び降りまして」

「飛び降りたんですか⁉」

「怪我でもしたら大変とすぐ近寄ったんですけれども、もうどこにもいなくて」

 飛び降りたという点は違うけど、すぐにいなくなる点は私の見た影と似ている。もしかしたらあの時私が目を逸らした瞬間に海に飛び込んだんだろうか。

「船の上で何をしていたんでしょうか?」

「……まさか、メリアスさんのお着替えシーンを覗きに! 私でさえ頑張って無理だったものを横取りなんて!」

 あなたもやろうとしたのですね。明日からは部屋のカーテンを閉めよう。鍵、はないから何らかの押さえるものも用意しておかないと。

「いや、それかもな」

「えぇぇぇぇ⁉」

 意外なところから援護が来た! 

「何でその不審者さんは私の裸をみたいんですか!」

 それもわざわざこんな離島で!

「実は僕も感じていたんだ。視線を」

「え⁉ 着替え中に?」

「いや、着替え中じゃない。バーベキューの際だ。カトリナが不審者を見つけたのはいつだ?」

「島についてすぐです。水着に着替える前ですね」

「となるとその人影は島に船が着いた時点で既に船への侵入が済んでいたことになる。行動が早いな」

「でも、これだけ大きな船がこの海岸に近づいているのであればすぐに気が付きませんか? ここならば船が到着するまでの一部始終が全部見えるはずですけど」

 今は星と波の波紋が照らす光以外闇夜に包まれた空と海。しかし、それも昼になれば全てが青に変わり、視界を遮るものは一切なくなるはず。

 ならば着いた瞬間に船に侵入するのは容易いのでは。

「そこについては犯人が何を狙っているか次第だ」

「何をですか?」

「今考えられるのは三つ」

 そう言ってまずは人差し指を立てた。

「一つは食糧。見た感じ自然豊かな土地だけど、果実や山菜などには限度があり、どうしても補えない栄養素もある。だからと言って鳥や魚、もしくはこの島に生息している獣を捕るにしてもそれなりの道具が必要。故にこれだけでかい船舶ならそれなりの人数を補える食糧があるのではないかと踏んだ。という考え」

 次に中指が立った。

「二つ目はこの船そのものの強奪。何らかの理由で流れ着いた人、それも事情が話せないほどの不法者なら交渉するよりも奪った方が手っ取り早くなる。もし、そうであるならば今後の警戒が必要だな」

「そもそも食糧の方も危険じゃないのでしょうか? よほど飢えられた方であれば、見つかった瞬間何をされるかわかりませんよ?」

 カトリナの不安に私も恐怖を覚える。原住民、或いは蛮族という言葉で思い浮かぶのは強面な男たちの姿。

 船の中にはクリスにアーチェ、それに屈強な船乗りたちもいるが、万が一、一人の時に襲われたらどうしよう。召喚は間に合うのだろうか。

「うん。それもそうなんだ。だからこその肯定であり、不安要素がある」

 意味深な発言後、自信なさげな薬指が立った。

「最後は――僕たち」

「は?」

 僕たち。なぜここで男?

 と考えが大きく逸れるがアーチェの一人称を思い出した際、その軌道は修正される。僕たち言い返せば私たち。

 私たち。

「え、えぇぇ⁉」

 そこで思わぬ論点に至ることになる。

「そ、それってもしかして」

「うん。身体目的だろう」

「なんてふしだらな!」

 三つ目にして私たちに最大の恐怖が襲う。

「どれだけこの島に取り残されているのかはわからない。その間に溜まった性欲が爆発したのかもしれない」

「いえ、まだ爆発はしてませんよね⁉ そもそもまだ確定もしてませんし!」

 学園内でも、それなりに変態達をうまく往なしながら過ごしていたが、まさか島で変態を相手取るようになるとは。

「そうだな。メリアスの言うとおりまだ確定ではない。それら三つの可能性は十分にあり得る。カトリナが見たのは強奪、僕のは食糧、メリアスが性欲の可能性有り」

「私が性欲の塊みたいな言い方になってませんか⁉」

 違いますからね! 断じて違いますからね!

「とりあえず船に戻ろう。船長には僕から伝えておく。二人はクリスとディーナ会った方に一応伝えておいてほしい」

「はい」

「わかりました」

 薄ら灯る黒色の船。それが一瞬恐ろしく見えた。


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