第2章-8 アイドル島に行く
「ね、ねぇ」
「なんでしょうか?」
「今物音が聞こえなかった?」
「恐らく風でしょう」
「そ、そう……」
…………。
「ね、ねぇ」
「なんでしょうか?」
「今そこで何か動かなかった?」
「恐らくただの浮遊霊でしょう」
「そ、そう……」
…………。
「ふ、浮遊霊っ⁉」
「うわっ。ち、違います、違います! 言葉選びを誤りました! だから、首、首にしがみつくのは止めてください! 折れちゃいます!」
「誤ったってことは本当はいるんじゃないの⁉」
「いませんから! 何も感じませんから!」
クリスの先導の元、歩き始めて一分経たず。ディーナたちの姿が見えなくなった頃、ようやく私が剛腕拘束による危機的状況に陥っていることにクリスが気付いてくれ、解放してくれた。と同時に周囲を冷静に見渡したクリスが、何もないはずの森の中で何かを過敏に察知するようになってしまい、ネクロマンサーの後ろに隠れながら進む騎士という風変わりな光景が誕生した。
恐らく私の返事はあまり入ってないのだろう、度々聞かされる問いに私は風の音でしょう、獣でもいたのでしょう、虫が飛んだのでしょう、葉が落ちたんでしょう、葉が枯れたのでしょう、魚が跳ねたのでしょう、馬車が通ったのでしょう、トーストが焼きあがったのでしょうなどと適当な返事をしても何となく納得していた。
けど、今回ばかりはネタのレパートリーも尽きてしまい、禁句をうっかり言い放ってしまった。
「まず大前提として魔力を感じない時点で悪害をきたす死霊はここにはいません! いたとしても私みたいなネクロマンサー以外には見えない微弱な霊魂ばかりですから空気と一緒です!」
「その空気に似た死霊がここにはいっぱいいるのね⁉」
「いるかもしれないだけです! 気にしないでください!」
気にしたら負けです!
幽霊のことに関すると殊更この人はシビアになる。防衛本能が働いてしまうくらいだから仕方ないのは仕方ないのだけど。
そもそも、このようなよくわからない雰囲気を写真に収めて本当に価値があるのだろうか。
――いや、私が使った鉛筆の折れた芯ですら価値になる人たちならあり得るのかも。
「ひゃ!」
「ぎゃぁぁぁっ!」
今回の仕事の主旨を模索しているといきなり首を持ってかれそうになる。もう少しで私はデュラハンになる所だった。
「痛いですよ! 何するんですか!」
「声よ!」
「声?」
「そう! 声! 今声が聞こえたの!」
「誰の?」
「わからないわよ! こうひくーい声で何がぼやいてたの!」
慌ただしく否定したかと思うとトーンを落としてその声の再現を試みた。
首が繋がっているのを確認した後耳を澄ませてみる。
時刻的に言えばまだ街中は灯りを消すには早すぎる時間。けど、ここは自然豊かな島。人の喧騒も調理器具がぶつかり醸し出すリズムも街灯にぶつかる羽虫の音も何一つ聞こえない。聞こえるのは風の音、木の囀り。それくらい。
「っれ」
「ん?」
「カ~ェ~レ~」
「ひっ! やっぱ何かいる!」
うん。何かいた。そして聞こえた。
先ほどクリスが再現したようなトーンでか~ぇ~れ~と言っている。つまりは自分たちを拒絶しているということなのだろう。
拒絶するということは悪霊の類の可能性は低い。寧ろ悪霊は欲求を満たすために自分から人に寄っていく性質がある。こんなことをするのは立ち寄ることができない人間の困った顔を見て楽しむ愉快犯くらいだ。
まぁ。そもそも。
私は声のする方の茂みに近寄る。
「近づいてきたぞ?」
「うわっ。何やねあいつは! ネタバレさせるの早すぎやで!」
私が近づいた途端何かが茂みを伝って離れていく音がした。でっかい死霊だな。まぁそもそも霊体なら音をたてずに逃げる手段もあると思いますけどね。透明化とか。
「どっか行きましたよ?」
「そ、そうなの?」
「はい」
「ふぅ……」
何とか落ち着いてくれたようだ。
それにしてもディーナさんは何故このような子供だましな計画を立てたのだろうか? 謎解き? 簡単すぎるけど。
それでも一応仕事は仕事。どんな結果になろうともこちらの知ったことではないので、走破を目指す。通るだけと言う説明があった故に文句を言われる筋合いもないし。
「で、な、何だったのさっきの? あの声何?」
寧ろ問題はこっちであったりも。先ほどの首狩り紛いのようなことを何度も繰り返されてはこちらの身体が持ちません。帰る頃には操り人形の如く関節動かし放題は勘弁していただきたい。
「恐らく先ほどの声はディーナさんですよ? 装った感じがあってすごく違和感ありましたし。そもそも大概の死霊は喋れませんからね」
「え? そうなの?」
あ、戻った。死霊と言う可能性を0にしたことによって体の拒否反応が完全に無くなったのだろうか?
「この前屋敷に来てもらった時にいた二人は特別で死霊、特に悪霊と言うのは生前の記憶や知識を大抵は持ち合わせていません。唯一残るとしたらその死霊が人だった頃もっとも興味を持った物、所謂欲だけなので悪霊で喋れる類は本当に希少です」
「でも、怖い話とかに出る幽霊ってどれも脅かすために」
「それはお話の中だけです」
そもそもネクロマンサーがほとんど姿を消した今、死霊に体が似た魔物以外本物を見る機会がどれだけあるだろうか。
「な、なんだ。驚かさないでよ……」
「私が驚かしたわけじゃありませんからね。寧ろ私はそのせいで首折らされそうになった身ですからね! もしあれで絶命してたら首なし幽霊になって一生クリスさんに憑いてましたから」
「ごめん! ごめんだから、憑くのはやめて!」
両手を合わせて本気で懇願してくるクリスが何ともレアだったので、許すことにする。
「それで、肝試しってこんな感じのことするんですか?」
「知らなかったの?」
「はい」
「それじゃ、お化け屋敷とかも?」
「この前の先生の家の略称ですか?」
「あれはお化けの屋敷でお化け屋敷はお化けの住む屋敷って意味! あんな家が近くにあったらあたし引っ越すわよ!」
「確かに主があれだったら怖いですけど。理解ある主でしたらすぐにお風呂にいけたり、キッチンにいけたり、西日が強かったら窓の位置変えたりと便利じゃないですか?」
「便利でも嫌よ!」
死霊嫌いは利便性をも上回った。
「とりあえず、お化け屋敷も肝試しも場所が違うだけで人がお化けの役に扮して人を驚かせる催し物なの」
「人が扮してやるんですか。何故またそんなことを」
「知らないわよ。好きな人はそれで楽しんでるみたいだけど――これのどこが楽しいのよ!」
クリスの嘆きは本格的なようだ。
「でも」
そこで一点気づく。
「本物じゃないってわかってるなら怖がる必要性は無いんじゃないですか?」
クリス自身肝試しやお化け屋敷の知識を身に着けているわけなのだから相手が本物でないことは重々承知のはず。なら普通に「お疲れ様」「お仕事がんばってください」程度に流すことはできないのだろうか?
それともなんだかんだ言いながらクリス自身これらのイベントを楽しんでいるのか。
「……甘いのよ」
「え?」
今なんと?
「そこが甘いのよ皆! 確かに出るのは端から仕掛け人なのはわかるわよ! でももしかしたらそこに本物が混ざってるかもしれないじゃない! だって気づかないんだよ! 例えお化け役しててもお化け見える訳じゃないから気づかないんだよ⁉ もしそれが自分にだけ見えたらどうするの⁉ もし、そいつがあたしにだけ目を付けてきたらどうするのよ⁉」
「ど、どうするって言われても!」
そんなのいる訳、
と言い切れない。
先ほど話の中に出てきた微弱な霊魂は探そうと思えば結構見つかる。そして死霊と言うのも見えないだけで居る所にはいる。更に言うと霊魂が集う場所、墓地などに死霊が集まりやすい性質があるため、肝試しやお化け屋敷の会場を墓地の類と誤認する可能性も否定できない。ただ悪魔でも可能性のことであって確率は極めて低いし、確かめたことも無い。どう答えればいいのか困ってしまう。
そしてここで言葉が詰まってしまうネクロマンサーである性がまた困る。
「やっぱりそうなのね! そういうことはあるのね! 専門家が言うんだから間違いないわよね! 帰ったらその事実を伝えに行きましょう。今すぐにお化け屋敷業を辞めさせるのよ!」
クリスが感づいてしまうから。
「待ってください! 落ち着いてください! そんな極まれな惨事のせいで何人もの人のお仕事を奪うのは駄目です!」
「その極まれに巻き込まれた人は重い代償を寿命尽きるまで背負い続けなくちゃならないのよ! これは決してあたしの願望じゃないのよ!」
「例え巻き込まれたとしてもそこまで重大なことにはなりませんから! せいぜいいたずらされる程度です」
「そこが問題よ! いたずらされた相手がお年寄りだったらどうするのよ! いきなりの出来事に驚いて心臓止まっちゃうかもしれないじゃない! 子供だったら幽霊に憑りつかれた子っていじめ受けるかもしれないでしょ! これは決してあたしの願望じゃないのよ!」
「そんな諸事情が本当にあるんですか!」
「ある! これは決してあたしの願望じゃないのよ!」
「もう隠す気すらありませんね⁉」
ネクロマンサーに優しくできるなら死霊にもやさしくしてあげて! 悪い子ばかりじゃないんだから!
「……めろ」
「何よ。まだ異議あるわけ!」
「な、何ですか! それよりもクリスさんこそまだ私を引込むつもりですか⁉」
「何よ! まだ何も言ってないじゃない! それよりメリアスは何用よ!」
「私は何も言ってませんから!」
「やめんかぁぁぃぃぃ‼」
怒声が響く。しつこいからって大声あげるのはやめて。
と、目の前の人物には言えなかった。
それはクリスも同等であって、私に言い返すことはしない。
「何よ、ディーナ」
変わりに茂みに問いかける。
「でぇぃ! 端から仕掛け人の名を呼ぶんやない!」
もう完全にばれてるんだから仕方ないんですよ。
「それよりも何やさっきから仕掛け紐解いたと思ったら、今度は立派な経営にいちゃもん付け始めて。そんなに廃業者出したいんか⁉」
もうお化け役と言うのはどこへやら、普通の商人が泣き言言い出すという怖くも何ともないシーンが生まれる。
「お化け出すならハロウィンでいいでしょ。もうこんな悪意のある商売はやめよ!」
「夏場真っ盛りの三ヶ月の稼ぎ時を一日だけに集約する気かおどれは⁉」
ハロウィン。聞いたことがあったような無かったような。後でフロースにでも聞いてみよ。
「あぁそうかい、そうかい! そこまでコケにするんなら本気の本気見せたろうやないか! もう泣き言言うても知らへんで!」
「えぇどうぞどうぞ! ディーナがどんな格好で出てくるのか見ものだわ!」
お化け役ディーナと観客役クリスが売り言葉に買い言葉。なんだかんだ言って始めの頃はこんな感じだったよね。
ただ、本来仕事するはずの私がこうやってさぼっていていいのだろうか? まぁ楽だからいいんだけど。
で、散々言われた揚句奥の手を出すと言ったディーナが右腕をあげる。それと同時に茂みから何かを動かしたカチッと言う音が聞こえた。助手が何か動かしたようだ。
「聞こえたわよスイッチ音。何が落ちてくるのかしら? それとも地面から何か出てくるの?」
「そうやろな。そう思うやろな」
自信満々に答えを言い出したクリス。それに対して納得のいく答えが聞けたという口調のディーナ。これは残念ながら後者が勝っている。何をする気なんだろう。
「うちの技術を舐めて貰っちゃ困るで。うちはな、遂に死霊を呼び寄せる道具を作り出すことができたんや!」
「へぇ」
「へ、へぇ……」
何とも信用できない説明にとりあえず空返事を送る。何故かお隣さんは声が掠れている。
「そんな返事をするのもここまでやで。もうすぐうちの技術に二人とも慄くことになるんやで」
「というか大丈夫何ですか? 死霊なんか呼んじゃって。もし高等死霊でも来たら後の対処はできるんですか?」
微弱な浮遊霊や最悪グールやスケルトンなどの下位死霊ならどうにでもできると思う。もしリッチや、カムシンクラスの高等死霊が来てしまったらどうする気なのだろうか? カトリナさんは今いないし。もしかしたら自分がどうにかしなくちゃいけないの?
「その心配はいらんで!」
無い胸を張ってディーナは言い切った。
「更に言うと、何とこいつは死霊を使役する能力すらあるんや!」
何かとんでもないこと言い出した!
「召喚士でも果てには獣使いですらないディーナさんがそんなことできるわけないじゃないですか!」
「そ、そぅよ! 空想話も大概にしなさいよ」
で、その空想話に何故あなたは足を震わせているのですか?
「せや! うちは根っからの商人や! だから商人の手口でその召喚術と使役法を買わせてもらったで!」
暗かった森に灯りが満ちたのはその瞬間だった。満ちる、と言っても果てしない暗闇は全て拭いきれず、まるでステージの照明みたいに一点を明るくしている。
「来たれ商売繁盛の霊よ! 傍若無人なクレイマーに銭の怒りを!」
呼び方に難ありなのだが、それよりもおどろくべき事態はすぐさま起きた。
光の中に黒い影が現れた。それもただ黒いだけではなく、上に左右斜め下がりの二点、下に細長い一点、むっちゃんのような人の顔を成すように影が一段と深くなっている。その見た目は所謂亡霊と言った類だろうか。
「ぉ、ぉ……おぉぉぉ」
更にどこからか呻きのような声。先ほどのディーナさんの物とは明らかに違う声。
「え、ぇ、ぇ、ぇ」
困惑の声が隣から聞こえる。けど、自分もそれに構うことが出来ない。目の前の光景にただ、ただ。
「ふぇ、ふぇ、ふぇ。いい表情や。そこをシャッター頂き」
「すごぉーい!」
興奮するしかなかった。
「ずごっ!」
一瞬何かが倒れる音がしたけど気のせいだろう。
それよりも今目の前にあるこの死霊もどき。絵でも無いし、何らかの像でも無い。まるで大きな投写水晶が置かれているような感覚。でも、私の身丈の二,三倍もある死霊もどきを収める投写水晶なんてどうやって、それもいつのまに設置したのだろう?
何らかの大掛りな仕掛けで持ち運んだ?
転移の呪文?
こんなにも迫力のある死霊もどきを作れるディーナの技量ならどれもあり得そうで怖くなる。
本当にこれは何なんだろう。何らかの動作が無い以上、恐らく危害を加えることは無いだろうから触ってみようかな。
「ちょいと失礼しま~す」
「あ、待てぃ! 危ないからいくんやない!」
「大丈夫ですって、倒れないように少し触るだけですから」
「そういう問題やない!」
ディーナが喚いているけど、私ってそんなに危なっかしいかな?
それにしても近くで見ると迫力あるな。遠くからじゃわからなかったけど本物よりも少しばかし顔つきが濃いかも。このぼやけ具合も定位置を得た地縛霊とは違い、居場所を彷徨い求める浮遊霊っぽくていい味出してる。幽霊見えないのにどうしてここまでいい感じの出来になるのかな……。
てか本当に死霊なのかな。そんなわけないはずだけど、一応警戒しながらその本体に触れてみる。
すかっ。
「?」
すかっ。
「」
すかっ。
「⁉ すごい⁉ 透けてる!」
嘘っ⁉ これ投写水晶じゃないの⁉ と言うか物体でも立体でも死霊でも何でもないこれは何なの、幻影⁉
「わぁわぁ。すごい、すごいよこれ。本物の死霊みたい!」
「やめい! はしゃぐんやない! うちはそんなシーンを取りたかったんやない! と言うか動くな! 投写基盤踏みつけそうになるやろ!」
「踏みつけなんてそんなご冗談を。こんなでかいもの踏みつけるほど私の足は大きくありませんよ」
「せやない! 見るもんがちゃうんや! 下や、下!」
ディーナが更に喚いているけど、そんなにこの場面はよくないのでしょうか? 別段このシーンもよくありませんか、死霊と戯れる少女って。
「ほらほら見てくださいよ! 死霊と私ががった~い」
「だからやめい言うとるやろ! あぁ! それ以上右行くんやない!」
「右に行くと枠から外れるんですか?」
「そういうわけやない!」
むぅ。折角人が乗り気でやってあげてるのに、これでもいちゃもんですか。
「もぅ。クリスさんも言ってあげてくださいよ。自分から企画しておきながらやることなすこと文句ばっかりで、クリスさん?」
先ほどまで威勢が――いや、途中から若干おかしかったクリスが今現在かなりおかしくなっている。
口も目も開いたまま手や足も動かない。堂々とした腕組みも今では単に動きを止める鎖にしか見えない。あれ? これってもしかして、さっきまでもう騙されないとか豪語していたのに。
「ぉぉーぃクリスさぁん?」
手を振る。あちゃー。これは例の硬直状態かな。失神しない辺り成長したのか、はたまた本能が相手を偽物だと判断しているのか。
けど、倒れていないということは完全に気を失っていない訳だからまだ意識があるのかもしれない。どうにかして覚醒したら話くらい聞いてくれるかも。
でも、どうやって覚醒させよう、呼びかけはあまり意味が無かったし、揺すってみた方がいいのかな? でも、そんな単純なことで目を覚ましてくれるだろうか? もっとこう直情的な、何かを。
怒り?
よし。ならやってみよ。
「つ~るぺた~」
ぐわっし。
「そ、れ、は、誰に向かって言ってるのかしら?」
一瞬の覚醒でした。
そして瞬殺でした。
瞬きする余裕さえ与えられぬまま、私の顔は鷲掴みにされる。
「あんた最近調子乗り始めたんじゃないのかしら? 言っとくけどあたし相当強いからね。あなたみたいに大きなお荷物ぶら下げてないからね!」
「ご、ご、ごごめんなさい! ごめんなさい! 嘘です! 嘘です! と言うか私もそこまで大きくはありませんから! そんな細かい所でムキにならないでください!」
「あぁっ? 小学校三期生からずっと変わらないあたしに対して、それだけの物持って言える、の……か?」
……? あ。
そういえばリッチの際もカムシンの際も先生の家の際も倒れた際の記憶って無かったんだっけ。実際あれは自衛本能だと私自身も予測していた。
それじゃ今の状況って?
死霊ではないけど完全硬直するほどの存在が目の前にいる中で覚醒させた今の状況って。
もしかして、いやもしかしなくても、それを無視した?
「いぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
「げふっ!」
クリスの悲鳴と共に体全体に強烈な衝撃と痛み! クリスが恐怖の余り私を今度は前から抱く形で、いだだだだっ! 折れる! 骨が折れる! それ以前に出る! お腹が圧迫されて色々出ちゃいけない物が出ちゃう!
「やぁぁぁぁぁ‼」
ガチャーン。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
今度は違う声。ディーナの物だろう悲鳴が硬質な音の後。
「うわぁぁぁぁぁ‼」
今度は疾風。強烈な風が吹き付ける。
いや、これは恐らく。
「止めろぉ! そっち行くんやない! まだ仕掛け」
「うわぁぁぁぁぁ‼」
「あぁぁぁぁ‼ うちの仕掛けが‼」
どうやらクリスが猛スピードで走、痛っ! それに自分が固定され、つぅっ! 風が突然吹いたように、ったぁぁぁい! 枝が! 風が痛い! 腰に巻きついた腕が痛い!
「止めろ! メリアスはん、そいつ止めろ!」
むりですむりですむりですむりですむりです。




