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第1章-3 アイドルの旅立ち

「死ぬかと思った……」

「当たり前ですよ! いきなり無知のまま飛び込むから。赤ちゃんが自然と歩けるみたいに何の予備動作も無くできるわけじゃないんですからね!」

「ごめんなさい」

 沈みゆく私をミクシェとアーチェが助けてくれた。その上泳ぎ方すら教えてもらったのだが、最終的には犬かきで二メートル泳ぐのがやっとだった。

「今回はプールでしたけど、海だと今度は波がありますからね。何らかの拍子に攫われると陸に戻りたくても戻れなくなりますよ?」

「重々承知……」

 ここまで来たら認めざるを得ません。私は水を舐めていました。海を舐めていました。

「でも海には余り入らないようでよかったじゃないですか」

「でも、撮影が主って言われましたよ。あんな姿で撮影するのか……」

 ここからはアーチェから得た新情報で、海に行くとは言う物の実際には私の水着姿を撮影し販売するのが趣旨らしい。まぁ言ってみれば今回タナカがやろうとしていたことのディーナ経由版なので、泳げなくてもいいことが解消されてもあまり嬉しくは無い。

「私も行きたかったなぁ。何で連休中に新聞部の寄り合いがあるのかな」

 何人でもという訳でミクシェも誘おうとしたら既にディーナに誘われていた。けれども、三連休のうちちょうどど真ん中に彼女が所属するナンデモ学園新聞部の寄り合いがあるそうで、どうしても欠席できないという。

「島を借り切るとか流石大富豪。どんな設備やもてなしや財宝が隠れているのか知りたかったのにな」

「それを記事にするって言って休めなかったの?」

「学園内の出来事から離れた内容は記事にできないって決まり事だから……」

 ネタがほしかったのか、単純に島での休暇を堪能したかったのか。ミクシェの落ち込み具合は激しい。

「そういえば今回どこの島に行くの?」

「確か、ここからずっと南に行ったサイナン島って言う島だって」

「へぇ。ん?」

「どしたの?」

 不意にしかめた顔をしたので声をかける。

「その島どこかで聞いた覚えがあるんだけど」

「単純に地図じゃないの?」

 私の問いかけにミクシェは首を横に振った。

「うぅ~ん。地図じゃない。何だったかな。何らかの要因があった気がするんだけど。覚えてないってことはさほど急ぐネタじゃないんだけど、名前だけ憶えている時点で何かあった気がするのよね……」

 情報屋らしい解釈で上を向く、頭に両人差し指を差して円を描くなどして記憶の回復を試みるミクシェ。

「だめだ。思い出せない」

「思い出せないならいんじゃないの? そんなに重要な事じゃないわけだし」

「……まぁ、それもそうかな。んじゃお昼休みかき氷奢ってね」

「何で⁉」

「授業料」

「うぐっ」

 結局奢る羽目になったかき氷をおいしそうに食べるミクシェだったが、たまにサイナン島の名前が頭をよぎるらしく、複雑な顔をすることがしばしあった。

 そのことが後に大きな問題を起こすことになろうとは、午後から謎の筋肉痛に悩む私には知る由も無かった。


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