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エピローグ

「˝あぁぁー……」

 風呂上がりのいっぱいを楽しむ親父のような声が出てしまった。もっとも感情的には真逆に近いのだけれど。

 倦怠感。今回もまた色々ありすぎた。結構時間が経っているようにも思えるが、私が素性を見せるようになってからまだ一ヶ月も経っていない。

 災厄を撒き散らしたネクロマンサーらしいといえばらしいけど、そもそもこれは災厄なのだろうか? そもそも火の粉が全部自分自身に降り注いでいる気がするのは気のせいだろうか? そもそもこれは私の撒き散らしたものなのだろうか? そもそもそももそもそもそ。

「駄目だ。寝よう」

 今日もまた朝からアイドル活動、昼間は普通に学校通いで午後から謎レッスン。やっとこさできた時間で書く手紙も、このような精神状態では何を書くかわからない。もし、父上カチコミ上等なことを知らぬうちに書いてしまえばそれこそ災厄の到来である。

 幸いにして明日は特にアイドル活動の予定がない。と言うのも先生の家から盗まれた財布が見つかったというので、持ち主の確認と受取作業が行われるという。ディーナさんのことだから1マニーでも無くなっていないかきっちり確認するに違いない。そうでも無くても被害者が多い以上受取には時間がかかるはず。同様にミクシェも自分の財布を取りに行くので、明日の午後は本当に予定がない。予定を共にする友達がいないとかそういうわけではないからね!

 ……けど、手紙を書くだけじゃどうしても時間が余ってしまう。ヘイボンが無い以上、下手にテリトリーへと入って何らかの.面倒事を起こすわけにはいかない。魔物退治していました、と言えばトウハさんは納得してくれそうだけど、イシュタル王女が逆にいちゃもんをつけてきそうで、それもまた、いやそっちの方が面倒なことになりそうか。

 ……退屈。以前であればこれが当たり前で何とも思わなかった。今となってはこういった時間がほしいと普段から願っていたのだが、いざ出来てしまうと何をするべきなのか悩んでしまう。

 寝ようかな? でも、それって年頃の女の子としてはどうなのだろう。そもそもこんなところで悩んでしまう時点で、私の女子力は底が知れているのだけど。そんなことを考えていると、隣からむっちゃんが覗き込んできた。

「どしたの?」

 問いかける。というのも表情からは全くわからない。こういう時は何らかの問いかけを。

「あ、もしかしたらどこか行ってみたいの?」

 むっちゃんの体が前に傾ぐ。どうやら正解のよう。むっちゃんが色んな物に興味を持つのは前から理解していた。事件解決から三日、流石に屋敷内は完全に探索しきってしまったみたいで、退屈していたのかもしれない。

 となると次は外かな。私もそこまで詳しい訳じゃないけど。

 とはいえ、私はこの子の主、いや保護者みたいなもの。この子が色んな物を見て、ちゃんとした見識を得るために、私は努力しなければならない。

「うん。そうだね。明日は街の中でも散歩してみようか。授業が終わったら呼ぶからね」

 明日の予定も決まったことだし、今日はもうこのコーヒーを飲んで休もう。

 若干長考が過ぎたようで、湯気が完全に抜け切り、まぁそれでもこの時期にはちょうどいい温度になったコーヒーを口の中に流し込む。

「にっがぁぁぁぁぁー!!!!!」

 一瞬で戻した。コーヒーは確かに苦い。砂糖を入れても若干苦い。が、これはそれ以上に苦い。どうやったらこんなものが出来るのか疑問に思うほど苦い。

「ま、まずはコーヒーの淹れ方からかな……」

 結局この苦いコーヒー――後に理解することとなる、砂糖と間違えて重曹の入ったコーヒー――のおかげで手紙を今夜中に仕上げることができました。


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