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第2章-8 アイドルと盗難事件

「ふぁ……」

 昨日はディーナさんとゆっくり話し合う時間がなかったために、今朝の予定を一切聞くことができなかった。とはいってもあの焦燥様、あれでまともな予定を組めるとは思えなかった。おかげで今日は若干遅起きができた。

 昨日皆はどうしたんだろう? 何らかの情報を手に入れることが出来たのだろうか? 皆一度集まることはできたのだろうか?

 いつもよりも少し遅い時間の登校。とは言っても昔の私にしては十分すぎる朝礼10分前行動。先日のビラ配りも今日は主導者無しで行われておらず、校門付近は既に人通りがほとんどない。この静けさが何故か不気味に思える。

 とりあえず今日する行動は決まっている。まずはクリスさんに会って王宮に話を通してもらうようにしないと。すぐさまという訳にはいかないかもしれないが、その場合はディーナさんにも手を貸して貰おう。そうすればもっと早く話がつくかもしれない。

 2―Bに行く前に2―Aを覗いて、そこまで考えながら下駄箱を開けた時だった。そこに一通の手紙があった。

「はぁぁ……」

 思わず溜息が出た。昨日は軍曹に連れ去られていたせいか無かったものが、今日はあった。ファンレターだ。アイドル活動をやり始めた際は下駄箱にいじめかのように紙束がぶち込まれていた。最近は落ち着いてきたが、それでも毎日五から多くて十以上のファンレターが届いていた。

 そして今回も一通。こんな騒動の中でよくできますね、と言いたくなる。

 内履きを取るのに邪魔だったのでどけようとする。

「ん?」

 手に取ってわかった。かなりシンプル。茶色の封筒に入っていて尚且つ宛名もメッセージもない。美少女部の人ならば、『メリアス様』とか『愛してます、アイドル様!』とか『オッパイ!』とか書いてあるはずなんだけど。

 異質な封筒を前に思わず立ちどまる。そして導かれるかのように封筒を開いた。

 一通。明らかに少ない。そして折りたためられた便箋に透けて見える文字は普段貰うファンレターとは違い明らかに大きい。なんて書いてあるのか気になり、中を見ようとする。

「メリアス‼」

 背後から叫ばれて心臓が飛び出そうになった。

 何とか落ち着いて振り向こうとする隙も見せずに肩を鷲掴みにされ、今度は臓器が全部出そうになる。

「大丈夫だったのね!」

 そんな私の前に現れた顔はよく見知ったものであった。

「ク、クリスさん。びっくりしました」

「昨日いなくなったってカトリナから聞いて心配したのよ!」

 あ、そうか。あの時はディーナさんやカトリナさんだけじゃなくて他の皆もいたんだった。心配かけさせちゃったかな。

「ご、ごめんなさい。あ、そうだクリ」

「それと! ミクシェ見なかった? 昨日、あの後!」

 昨日の出来事を話そうとしたところをクリスさんに遮られた。ミクシェ?

「ミクシェさんがどうしたんですか?」

「いないの! 昨日一緒だったのに!」

「ど、どういうことですか! 落ち着いてください!」

 明らかに興奮しているクリスさんを宥めようと力を込めてくる左腕に右手を添えて落ち着かせようとする。そういえば、昨日の二人組ペアでクリスさんはミクシェと一緒だったような。それがいなくなったってことは何かあったのか。

 とりあえず落ち着かせることが先決と思った矢先、クリスさんの力が一気に引いて行った。その引き方は異様な物であり、手にこもっていた力はやがて震えに変わっていった。

「メ、メ、メリアス、そ、それって」

 クリスさんが私の左肩から離した右手で一点を指した。その先には私の下駄箱にあった便箋があった。

「これですか? 私の下駄箱にあったファンレターですけど」

 クリスさんを落ち着かせる際も落とさないように親指と人差し指で挟んでいたから間違えようもないが、念のためにそれを確認する。

 その冒頭には大きな文字でしっかりとこう書かれていた。


『ミクシェ・アヴァロンの命は預かった。

 ここに書いてあることに従わなければ命は無いと思え』


 時が止まった感覚に襲われた。


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