表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/190

第2章ー4 アイドルと盗難事件

 悲しい事件でした。とてつもなく悲しい事件でした。

 早朝の校門にて繰り広げられた疑惑、真実、羞恥……。

 それは昨日の事件を引きずる、いやこれ自体も仕掛けられた一つなのかもしれないくらい、被害者に大きな傷を負わせた。――私だけなんですけどね。

 続く連鎖。それは不吉な予感を漂わせる。事件はまだ序の口なのではないか。

 その答えはすぐに出た。

「一生の不覚やぁぁぁ‼」

 事件の大きさを物語る大声に思わず耳を塞ぐ。

 今いる場所は多目的室が並ぶ棟の一室。許可を取っていない正真正銘の無断使用なんだけど、誰も使う予定がない以上、そんなことはお構いなしと言ったところでしょう。

 ここに今いるのは五人。それも見知った顔ばかり。

「で、集まった理由ってのはディーナがお金盗まれたからってだけ?」

「だけやないわ! うちにとっては大問題や!」

「それは単にディーナさんの不注意が生んだトラブル何ですから、私たちを巻き込む必要性は無いと思われますよ」

「んなこというなや! 仲間やろい!」

 と言う感じで盗難事件は王宮関係の警備員すら雇った挙句に再度起こってしまった。そして再び身内に被害者が出てしまった。それもかなり厄介な人に。

「あれは今後のアイドル活動展開していくための軍資金やったんやぞ! 今後の利益を見込んで大目に叩いた金が一瞬やで!」

「あ~ぁ。ならアイドル業は廃業ね。よかったわねメリアス」

「ばんざーい」

「言うとる場合かぁぁぁ‼」

 言っていいと思います。それはもううれしいですからね。ただ、私の場合ディーナさんに尻尾を掴まれているので、最悪別の労働を押し付けられる可能性は極めて高かったり。

「大胆な行動に出たものだな」

 荒れる一人、呆れる三人とは別に物静かなまま会話に入ってこなかった一人がようやく会話らしい会話をした。

 両手を組み、椅子にもたれ掛るように座っているエルフは言葉を続ける。

「一般生徒よりもディーナの財布が重いと言うのは大概の人ならわかる。と同時に相手にすると厄介であることもわかるはずだ。王宮には及ばずとも資産を多く有しているゴールドパーク家だ。探偵や傭兵、情報屋を金で買えば、これ以上の再犯は難しくならないのか?」

 冷静に答える姿は闘技大会前日の頃の姿を思い出させた。アーチェさんはクリスさんに似て状況判断に優れている。とある事象に関わると熱が入りすぎる所が似ているディーナさん、カトリナさんとはまた別の人材である。

「そうよね。それにもしディーナを狙ってもばれない自信があるのなら、この学園にはイシュタル王女がいるわけだし、そっちを狙ってもいいと思うわ。と言うよりもそれだけ自信があるのなら最初から学園じゃなくて商業ギルドや商業ギルドの専門校狙った方が効率はいいわよね?」

「だな」

 クリスさんの推測にアーチェさんが短い言葉で同意した。けど、盗人相手に効率云々を考えるのは如何ほどに。

「んなこと言うとる場合無いんや! とりあえず探すで!」

「探すって……どうやってですか?」

「んなもん手あたり次第や!」

 えぇ……。それは流石に無策では。

「そもそも透明な犯人をどうやって見つける? 透視を見破る手段を僕たちは持っていないぞ?」

「メリアスはんなら見えるはずや! かたっぱじから連れて行けば何とかなるで!」

「ちょ、ちょっと待ってください! 確かに霊視はできます。けど、高位魔術で行われた透明化は見破れませんよ!」

「可能性が0やない以上やるんや! 0か100のやり方はやらんが、30でも成果があるんならうちはやるで!」

 ディーナさんの顔面が迫る。うわー……目が血走ってる。こりゃマジだ。何とか助け船を出してもらおうとクリスさんかアーチェさんに視線を送ろうとする。


「そうですよ! 可能性があるのならやりましょう!」


 ガラガラガーン!

 引き戸の扉が勢いよく開け放たれ、衝突音が部屋を縦横無尽に走った。

 扉は静かに開けましょう。そんなルールを木っ端微塵にした人物は、

「うへぇ……」

 そこにいたのは被害者その一。ミクシェだった。目の下に大きなくまができていたが、目に宿る炎は本物、いや本気だ。

 そしてつかつかと目の下のクマとは対照的にまるで疲れを感じさせない足取りで部屋の中に入ってくると、左の脇に抱えていた紙の束を机に叩きつけた。

「それに可能性は少しでも高ければいいのです。昨日一日かけて集めた被害者全員の動きと犯人が動いたであろう痕跡を繋げた資料がここにはあります。そして今日の被害者たちの動きがこちら。これを解析し、行動パターンを読みとければ、犯人がどこで動くかは――ふふっ。ふふふふふふふふふふふふふふ」

 だめだよう。私の親友がもうだめだよう。完全に目と思想がだめだよう。

「でかしたで! これのコピーを早速うちの探偵連中に解析してもらうで! そうすれば犯人逮捕も今週中、いや明日にでも、いやもう今日や! 今日で牢獄送りや! ふっふふ。ふはははははははははははははは」

 今日ここに最悪のコンビが出来上がってしまった。

「もぅどぅにでもなぁれぇ~」

「メリアス⁉ しっかりしてよ!」

「とは言うが、クリス。これをどうにかできるか?」

「……あたし自信ないな」

 今日一日の主導権は完全にあの二人に委ねられたようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ