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第2章-1 アイドルの下準備

 やるべきことはいくつもあった。まずはそれを知る為に助言を求めた。

 ディーナに頼れないとなるとまず一番初めにアイドルコンサートに関連性があるのはタナカ。ただ、思考がディーナ寄りなのでどんな物になるのか計り知れた物ではない。なので基本的に必要な物だけを聞いてみた。

「僕たちは何が何でもアイドル様のコンサートには駆けつけます! それが例え山であれ海であれ、以前のような辺境であっても! ですが僕たち以外の人たちを文化祭では多種多彩な出店物という敵がアイドル様の輝きを邪魔します。

 時にそれは人々を熱狂の渦に巻き込む競技、時にそれは人々を思惑と共感へと誘う演劇。そして一番の相手は自らの進む方向性を見失わせる鼻腔を擽る料理たち! 僕らにとっては何とも思わない、寧ろ何であんなものにと思う。けど、僕たち以外の人を集客するにはそれらに何としても勝つ必要性がある。

 それならば今まで以上にアイドル様を輝かせる必要性があります! もし、もしよろしければこのMr.プロデューサー何でもお手伝いいたします! 会場の設営は勿論衣装の方も男子受けする素晴らしい物を用意してあげましょう! そして宣伝活動には特大の投写水晶(フィルム)を用意して、更には最新の投写水晶盤(ホログラム)も使ってアイドル様の魅力をたくさんの人に知らせましょう! 

 アイドル様が望むのであれば他クラスや他部の催し物を偵察してきましょう。いざとなれば誤情報や相手にとって不利になる――」

「失礼しましたー!」

 話が長くなりそうだった上に途中から事件に発展しそうな悪寒がしたので話をぶった切った。

 タナカが追ってくる気配は無い。話に熱が入ったせいで私が逃げたことに気付かなかったのだろうか?

「さて」

 取りあえず休憩できそうなベンチに腰を下ろして考える。

 必要な物一。会場の設営、つまりは飾りつけ。

 これについては、恐らく今できることは少ない。

 演劇部が良く使っている大ホールは合唱部の人が五十人単位でも余裕がある壇上。体育館ほどではないけど、大ホールを彩る飾りを一人で付けるのは時間がかかる。それに今付けても私の出番までに他のクラスや部が使うのであれば邪魔になってしまう。となればこれは最後にやるべきことになる。なので次。

 必要な物二。衣装。当日着るものだ。

 これもまた困った。基本的にディーナの私物――完全に私仕様の物――を今まで使っていたため、それを使えないとなると栄える姿見を魅せられないし、そもそも服が無い。

 いや、確かに女の子しようって教室でミクシェに言ってたし、ついこの間クリスとも互いに女の子らしくなれるよう努力すると決めていたけど。

 まぁ正直言っちゃうとやれていない。

 最近買った服と言えばこの前着た水着――服と言っていいのだろうか?――だけであり、それ以外は全て去年、と言うかヘイワ街に来て買った物ばかりだ。

 普段着でも確かに行けそうだし、何なら戦闘着でも個性と言う点をつけばネクロマンサーアイドルとして受けるかもしれない。

 ……はっ! 私今アイドルとネクロマンサーをくっつけてしまった! 今までそこだけは守ろうとしていたのに!

「絶対にそれだけは駄目! 確かに私らしさだけど、それをやってしまったら故郷の皆に申し分が立たなくなっちゃう! これ以上ネクロマンサーと言う名を汚さないのなら素直にアイドルらしさを追い求めた方が」

「それなら衣装は派手にした方がいいんじゃないですか? かといって夏場仕様みたいに露出を多くするのは駄目。女子生徒には下手すると反感受けちゃいますからね。私もあんな服着てみたいって思われる服を着なくちゃいけませんよ」

「そうですよね、万人受けする物とか……ん?」

 はてさて、自問自答を繰り返している私だが、果たしてこのような明確な答えを出せるほど私は衣服に知識、ましてや興味などあっただろうか?

「ならばその悩み、私が解決します。勿論等価交換で!」

「へっ? ふわぁぁぁ⁉」

 自問自答してたはずの声が頭ではなく左耳から聞こえてきたと同時に目の前に鋭利な何かが近づいてきた。

 予期せぬ出来事に働いた防衛本能によって後退するも、ベンチと言う僅かな幅で後退することが命取りとなり、私は後ろに転ぶようにしてベンチから滑り落ちた。

「って、そこまで大げさになる?」

 背中の痛みに耐える中聞いたのは自身の声ほどではないが、聞き覚えのある声。

 夏場が過ぎたとはいえ夕刻前では未だに隠れ切れていない陽光に照らされたのは見覚えのあるボールペンと見覚えのある顔。

「ミクシェさん⁉ いつから⁉」

「メリアスさんが何必要か悩んでいた時からです」

 嘘! あれ全部口に出てたの⁉

「勿論出てましたとも」

「今のも出てたんだぁ‼」

 もう私には心の声と言う高等テクニックは使えないのだろうか⁉

「そりゃもう周りの人が、根暗娘がやばいことぼやいているって先生方に苦情を出しかねないほどに呟いてましたからね」

「……」

「と言うのは冗談ですからあからさまな口の閉じ方をしないで喋ってください」

 心の声が聞こえるのであればその力で何とかしなさい。

「で、何でメリアスさんが衣装のことを悩んでいたんですか? ディーナさんが今回の文化祭に協力的じゃないことはわかるんですけど」

「協力的じゃない訳ではないんですけどね。と言うかそこまでわかってるのなら、実は結構わかってるんじゃないんですか?」

 さっきの仕返しとばかりに報道部の実力を試させる。

「うーん。断片的な情報だとディーナさんがメリアスさんに一からコンサートを開く準備を頼んでいて、タナカに情報を求めていることから恐らくディーナさんは何らかの口封じをされていて助言が出来なくなっていると。けど、それは誰かの悪意によるものじゃなくてディーナさん自らの意思で行っているみたいだから、それもイベントの範囲内。つまり今回はメリアスさんが自力で作るアイドルコンサート。でも、それだけだと迫力身が無い気がするから、考えられるのは闘技大会前後イシュタル王女と対決しあったみたいにもう一人誰か別の対戦相手がいてその人と――」

「ごめんなさい、ほとんど当たっています。もう引き出しがありません。等価交換できる値の物がありません」

 やだ、この子超怖い。

「じゃあ核心部分だけで許してあげる。対戦相手はイシュタル王女?」

「良かった……。相手はトレイシーさんです」

「え? ……あぁ、去年のオーディション優勝者ですね」

 答えを聞かされたミクシェは何ともしっくりこない返事をする。

「あの人今年に入ってから、それもメリアスさんがアイドルやり始める前から何の話題にもならなかったけど、本当に対決になる? 採算合うの?」

 ディーナのことを知っている人なら始めに気にするであろう採算部分。ミクシェもそれに漏れず問いかけてきた。

「ディーナさんはトレイシーさんのことを噛ませ犬だって言ってました」

「うわ~……貧乏な上に噛ませ犬って、扱い酷すぎるような……」

 噛ませ犬の意味を知っていた上にトレイシーさんの事情を私よりも知っているミクシェは憐れむ。

「噛ませ犬にされるのは酷いけど、私も罰ゲームは受けたくないんですよ」

「それでも可哀そうだって。メリアスさんが甘んじて受けて脱いでくださいよ」

「甘んじて⁉ と言うか何で脱ぐ罰ゲーム決定何ですか⁉」

 私最近そっち系多くないですか! そんなことしたら父上がこの街滅ぼしかねませんよ⁉

「私勝ったとしても罰ゲームは何もしませんから。例えディーナさんがわぁわぁ喚いても構いませんし、そうなったらクリスさんにでも頼みます」

「アレクサンダーさんに最近べったりですね……。そりゃ頼りになりますからね」

 打開策を唱えるも、クリスを頼る私に対してミクシェは冷たく言い放つ。最近頼りにされないから嫉妬してるのか。

「とは言ってもそこは最後ですから! 美少女部の人たちがいれば勝負は決まっているかもしれませんが、一応形にするためにはまず目先の目標を達成する必要性があるんです。クリスさんはその点に関しては、私より少し上級者位だと思うので」

 重要な情報源であり、何より親友であるミクシェの機嫌を損ねないようにミクシェにしかできないことをあげる。クリスと私の女子力比較表によればファッションセンスは若干クリスの方に分がある。この前の水着だって自分一人で選んでたみたいだし。

 けど、今回みたいに女子に共感できる服を選べるかどうかはわからない。クリス自身が女性に人気があるのはそのカリスマ性が要因であるため、外見にこだわる必要性は無いに等しい。

「ふぅ~ん。まぁいいか。それで対決って歌で?」

「人気投票らしいです。それも美少女部のみじゃなくて一般生徒からも投票を受け付けるらしいんですけど……」

「アイドル対決何て美少女部くらいしか来ないでしょ。例えそれ以外から来たとしてもこのままじゃ女子生徒は見込めない」

 でしょうね。だからこのままいくと美少女部票のみで私の勝ちは決まる。

「可哀そうならせめていい勝負になるようにしましょう。今メリアスさんが絶対に行ったことも行くことも無いイベントがドレス工房でやってるから、そこに行きましょう。今回はトレイシーさんと対決するって情報だけで我慢してあげるから」

「それはどうもです」

 ミクシェのお情けも頂けた。

「じゃあ明日休みだから午前10時ドレス工房前に集合ね」

「はーい」

「早いって言わなくなったねメリアスさん」

「……悪影響が出てますね」

 これは由々しき事態です。ネクロマンサーとして。


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