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02-3 女性用対人戦闘アーマーのトンデモ能力

「こんにちはー」


 穏やかな土曜日。クラシックな重い木のドアをカラコロと開けると、ショーケースの後ろから、陽菜の親父さんが顔を出した。


「おお。美里先生に、皆さんか。――いつも陽菜をありがとう。今日も助かるよ」


 これ以上ないといった笑顔。そりゃそうだろ。無料奉仕の美少女ウエイトレス隊が来たわけだし。仕事レベルにしたって、陽菜の「超絶・暴れウエイトレス」とは段違いだしな。


 ここは「オーバーロード」。学校の近所にある、陽菜の家、つまり未由路みゆじ家家業のケーキ屋だ。


「おっ、今日もいろいろあるじゃんか……」


 絵里が、几帳面に並べられた宝石のようなケーキを、端からじっくり検分するように眺めた。瞳を輝かせて。それでも先生かよ。


「うわー、このタルトタタンうまそう」

「あっあたし、こっちのパイナップルのシブーストにする」


 たちまちあかねも参戦する。いや食べに来たわけじゃないんだが……。


「お茶請けの菓子と言えば、フルーツケーキで決まりだけどね」


 手を前に揃えて意志強く顔を上げ、澄ましてるのはルナだ。とはいえ横目でショーケースをちらちら見てはいるがな。


「陽菜は、やっぱり苺のショートがいいなあ……。ここんちのプリンは今ひとつだし」


 いつの間にか奥の厨房から出てきたらしい陽菜が、なんだか客のそばに立って品定めしてるし。


 ……ていうか自分ちの商品を大声でイマイチ扱いしちゃだめだろ。一般のお客さんもいるのに。親父さん、顔、真っ青じゃないか。


「ほら、思音も選びなよ」

「俺はザッハトルテ……って、遊びに来たんじゃないぞ」

「……わかってるし。今日はいよいよ新制服の試着だからね。そうじゃん、ルナ」

「そうそうあかね、今日は大事。試作アーマーが十分な機能を発揮するかどうか、実戦にテスト投入する日。夢おろそかにできない戦闘なんだから、気を引き締めてしっかりデータを取らないと。それで……はいこれ」


 抱えていた都市迷彩の大きな軍用タクティカルダッフルを、ルナは床にどさりと置いた。


「中に試作品が入ってる。それぞれの体型に合わせて裁断した特注品なんだから、間違えないように身に着けて」


 女どもがきゃあきゃあ言いながら、制服を奪っていく。陽菜の「木ノ葉隠れ」と、他全員の「くのいち」と。あれ、底になんだか黒いのが残ったけど。


「ほら」


 ルナが俺の顔を見る。


「……」


 全員ニヤニヤ笑っている。


「思音の」

「……」

「ほら」

「えーとちょっと待て。今日はウエイトレスの制服テストだろ」

「女性用対人戦闘アーマー」

「……どっちでもいいけど。底の奴はなんだよこれ」

「男性用対人戦闘アーマー」


 やっぱり……。


「それはあれか、ウエイターってことでいいのか、ルナ」

「ほら、早く着ちゃいなよ、思音」


 ルナが答えるよりも早く、あかねが俺の背中をどんと押した。


 てか、この判断が結局、とんでもない惨劇を呼ぶんだけどさ。それは――。

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