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異世界おっさん、日本転生して「魂の仲間」を再結集 ――誰が俺の嫁かわからなくなったし、好き勝手に生きるわ!  作者: 猫目少将@「即死モブ転生」書籍化
第二部  01 彼方よりの使者、絵里の「お仕置き部屋」に降臨

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01-1 楽で儲かって女付きの仕事

本話より「第二部」突入です。

「あれだな。邪神騒動も一段落したことだし、そろそろ俺達の本来の目標を考えようじゃないか」


 十月、日曜の午後、陽菜の実家ケーキカフェ「オーバーロード」で、俺は提案した。


「でも、こんなとこでいいのかな。人に聞かれるし、部室とかのがいいんじゃあ……」


 あかねが呟いた。


「平気平気。だってガラガラ――てか、人いないじゃん」


 絵里が周囲を指差した。……たしかに、俺ら六人以外に、客の姿はない。てか、店の床は水浸しで、ドア周囲は焼け焦げて穴が空き、ブルーシートで覆われてるし。客がいるはずがないというか。


「昨日、例によって陽菜が店を半焼させたしねえ……」


 澄まし顔でキャラメルフラペチーノのカップをかき混ぜているのは、ルナだ。


「あうー。ルナちゃんまで、そんなあ……」

「ほらほら、涙目にならないの、陽菜。いつものことでしょ」


 全員、ルナ制作の対人用女子戦闘用アーマー「くのいち」姿。つまり、フリルが豪勢に施されまくったミニスカに、ブラウスを締めつけるエプロンドレス。まあ女子の魅力全開になる奴。陽菜だけは、専用装備「木ノ葉隠れ」だけどな。ピンクとオフホワイトのミニスカドレスにダークブラウンのニーソックス。それにソックスと同色の長いエプロンドレスを重ね着した奴。


 要は全員、ウエイトレス制服ともいうが。「幼なじみキャラ」ぽく親しみを感じさせるあかねのきれいな胸と絵里の爆乳に挟まれて、普通の男なら昇天しそうな位置に、俺は座っている。他にもスタイル最高で育ちの良さが漂うルナと、超絶巨乳の「胸の破壊神」空、ロリ属性全開の陽菜もいるしな。


 まあ俺は今高校生とはいうものの、転生前年齢足せば六十歳のおっさんだから、小娘の色香なんかには惑わされないけどさ。


 ちなみに俺は新作の執事姿だ。ルナの奴、どんなカフェにしたいんだ、ここを。


 昨日半焼したのはもちろん、「恐怖の大王」陽菜のためだ。全員でウエイトレスとして働いているうちに、陽菜の謎スイッチが入って、厨房からなぜか持ち出してきたココナツオイルをぶちまけた。――だけなら良かったんだが、火が着いたら大変と思ったらしく焦って消火器を召喚しようとして、あろうことか火炎放射器を召喚し、なぜか引き金まで引いてしまったからだ。


 ちなみに陽菜のお父さんは今、焦げ臭い二階の寝室で寝込んでいる。罪滅ぼしも兼ねて俺達現代日本生存研究会が店を切り盛りしているわけだが、昨日の今日で客が来るわけないじゃん。


「そんなことより、ご主人様が提案した案件、検討しませんか」


「俺の武器」ソオルこと空は、いつもどおり真面目だ。てか俺の提案、まともに聞いてたの、空だけだな。


「本来の目標って……、やっぱアレ?」

「そうそう。俺達は前世で苦労して邪神を倒した。ここ異世界ニホンに転生したからは、まったりスローライフを楽しみたいわけよ。もういいだろ、世界のために人生を犠牲にするのは」

「前世でそのあたりは、もう人生百回分くらい、神様に貸し作ったよね」


 あかねは、ビターなコーヒーの香りを嗅いでいる。


「うん、いい香り。……月二回くらい半壊することを除けば、ここはいいよね。飲み物もケーキもおいしいし……」

「あうー。また」

「ほらほらいいから、プリン食べなよ、陽菜。あんたがアドバイスして、プリンだいぶおいしくなったじゃん」


 あかねに慰められて、陽菜はプリンを口に含んだ。とたんに幸せそうにタレ目がなおのこと垂れた。


「おいしいー」

「まず、可能性を考えましょう」


 ラチが明かないと悟ったのか、空が仕切り始めた。


「スローライフをするには、なんらかの収入が必要です」

「そりゃそうだよね。口を開いて上向いてりゃ、誰かが銘酒『タマ三郎』流し込んでくれるってんなら別だけど」


 ガハハと笑う。絵里お前、のどちんこ見えてるぞ。


「絵里に賛成だ。……なんかないのかよ、楽で儲かって女付きの仕事」


 全員に睨まれた。


「……いや冗談」

「美少女なら、とびきりのがここに五人もいるじゃん」


 あかねが特にキツい目つきだな。


「悪かったよ。話を戻そうぜ。……俺達は斥候スカウトパーティー。本来放浪者キャラなんだから、サラリーマン的な働き方は厳しそうだよな」

「フリーランス、ないしそれに準じた仕事が向いています」

「まああれだよね。一番ラクなのは、一文字家に養ってもらうことじゃん」


 絵里があっさり口にする。


「大金持ちだし」

「いやそれ、難しいだろ」

「なんでさ、思音」

「ルナだけなら可能だろうさ。なにせ名門・一文字家の一粒種だし。でも俺達はどうよ。ルナお嬢様の友達でございって話で、んじゃあ全員分、月百万円支給してくれとか申し入れても、どつかれて終わりだろ」

「そうね。……ウチの父母は甘くはないわね」


 ルナがあっさり告げる。


「友達を養う理由を説明しろって言われるのは見えてる。……説得は難しいと思うわ」

「そりゃ、一文字財閥を切り盛りしてるやり手だもんね」


 あかねは首を傾げてみせた。


「ここ『オーバーロード』を拠点にするのも、いいよね」

「まあな。ルナ制作の美少女制服で集客抜群なのは、過去見ても明らかだしな。周辺に工科大学があるしさ。飢えた男どもが大挙して押し寄せてくるからな」

「ご近所の、ケーキ好き常連さんもいるし」

「思音目当ての、ムキムキおっさんもいるし」


 絵里の奴、また爆笑してやがる。おっさんに迫られた「あの事件」思い出すからやめろっての。そういやあんときも店半壊したんだっけか……。


「あとは陽菜を縛り上げときゃいいでしょ。店に手を出さないように、二階に監禁して」


 絵里が物騒な提案をする。


「そうね。陽菜さえいなければ、月二頻度の店破壊もなくなるし」


 意外にも、ルナが非情な判断w


「そんなあ……。あかねちゃん、なんか言って」

「涙目にならないの、陽菜。マタタビあげるからさ。二階でごろにゃんしてればいいじゃん」

「マタタビ……」


 陽菜がうっとりした目になる。転生の副作用(?)で、陽菜はマタタビを与えるとごろにゃんしてしまうのだ。


「冗談は置いておきましょう」

「あら今日の空、本気ね。あかねより仕切るなんて」


 ルナが感心している。


「オーバーロードを拠点にして日銭を稼ぐのは、いいアイデアです。半壊問題さえ解決できれば」

「要は陽菜には別のことをしてもらえばいいんだよ。適材適所だ」

「思音……うれしいかも」


 陽菜に袖を掴まれた。


「キュッポンする?」

「陽菜はひとり娘だし、カフェを継ぐのは自然だろ。カフェ以外の業務を、陽菜用に作るとかさ」

「それね」


 ルナの瞳が輝いた。


「ここをカフェ兼事務所にしましょう」

「事務所?」

「ええ。現代日本生存研究株式会社。父にお願いして、法人登録してもらうわ」

「会社設立とか、難しいんじゃないのかよ」

「簡単です、意外に」


 空の眼鏡が輝いた。


「今だと、ネットで手続き――というか書類作ってくれるサービスがあります。たしか三万円くらい」

「たった三万? そんなんで株式会社作れるのかよ」

「ええ。あとは法務局への登記費用がいくらか。……いずれにしろ全部で十万円かそこらです」

「代表取締役は思音ね。一応このパーティーのリーダーだし。元はおっさんだから、世事にも強いでしょ」

「まあいいけどさ」

「それより、作ってなにすんのよ」


 絵里が口を挟んだ。飲み終わったグラスを手に、勝手知ったる様子で厨房の業務用冷蔵庫からボトルを出して、アイスコーヒーを注ぎ足しながら。


「起業だろうがフリーだろうが、なにやるのかが重要じゃん」

「まず、全員の得意なことを考えるべきかもね。どうせ働くなら、苦労ないほうがいい。つまり得意技を生かすのがポイントかな」

「俺達が他人より優れてる点は……。まあ異能力だな」

「チートのスーパーパワーってことか。……でもそれ、バレると大騒ぎだよねー」

「そんなので有名になるのは嫌ですよね。そもそも静かに平凡に、スローライフを送りたいのが望みですし」

「あたしがオリガミ人形劇でもやる? ヒトガタに演技させて」

「ネットで拡散されると面倒だよ、あかねちゃん。タネがわからないって、注目を集めそうというか」

「陽菜の言うとおりか……」

「じゃあ宿題にしようか」


 ルナが引き取った。


「ここ『オーバーロード』を拠点にするのは名案。なにやるのかは別として。だって私が両親に話を持っていきやすいもの。友達と会社を創りますって言えば、割と喜んで資金を提供してくれると思うわ」

「そりゃ、財閥オーナー、つまりは経営者だもんね。娘が経営者の道を進めば、嫌がるわけないか。親を説得する意味でも、ルナはナンバーツーの副社長あたりにしといたほうがいいよね」

「失敗してもいいと思うだろうしな。いずれは一文字財閥を継がせるつもりだろうし。そのための修行・勉強の一種だと判断するだろ」

「たとえ失敗して一億円穴空けたとしても、一文字の資産からすればホコリみたいなもんだもんね」


 オーバーロードを拠点に、なにをすべきか。それを宿題に、俺達は話を切り上げた。そんでまあ例によってケーキ食い放題からカラオケ歌い放題へと進んだわけさ。なぜかしらんがカラオケで両側と言わず前後と言わず、胸に揉まれまくる展開になったんだけど、まあその話はいいか。そんなんで興奮するほど子供じゃないしさ、精神的には。肉体的には……まあ体は高校生だからさ。そのへんは察してくれ。


 それでまあ、翌日の放課後、俺達は部室に集まった。現代日本生存研究会の本来の目的、つまりスローライフ実現のために、なにをすべきか検討するために。……それが、とんでもない騒動の始まりであったわけだけどさ。

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