表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界おっさん、日本転生して「魂の仲間」を再結集 ――誰が俺の嫁かわからなくなったし、好き勝手に生きるわ!  作者: 猫目少将@「即死モブ転生」書籍化
07 絶望パーティー、福引大当たりで大波乱?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/63

07-1 地獄の福引>部室破壊>絵里先生暴走

「たたた、大変だあーっ」


 現代日本生存研究会のなんちゃって部室に、陽菜が駆け込んできた。よせばいいのに戸を思いっ切り引いたから、曲がったレールから外れて、どかーんとか倒れちゃったじゃないか。もちろんガラス部分は全面的に砕け散ったし。


「あぁーあっ……」


 陽菜を除く五人の溜息が、完璧にシンクロした。


「どうすんのさ、陽菜。あんた窓落とすだけで気が済まなくて、とうとう扉ぁ?」

「これから寒くなるってのにねえ……」


 絵里が頭をポリポリかく。


「隙間風どころじゃないね、これ」

「そそ、そんなことより、これっ」


 はあはあ言いながら差し出したのは、なんか熨斗袋のしぶくろだ。


「……なに、これ」

「なに、あたしと思音の結婚式のご祝儀、もう持ってきてくれたの?」

「絵里ったら、また妄想……」


 あかねが睨む。


「ふーん……」


 受け取ったルナが中身を開いた。


「旅行券ね、これ」

「うん。狸穴まみあな商店街、秋の大感謝セールの福引で、当たっちゃったあー」


 陽菜はうれしそうだ。


「あんた、昔っからヘンに運がいいもんねえ」

「そうそう。陽菜が召喚失敗したせいでパーティーが全滅する寸前になってから、見たこともない超強力な武器を喚び出して、敵を一発で蹴散らしたり」

「あれ、絶対わざとやってるって思うよなあ」

「そうですよね。私たちだけじゃなくて、敵まで『今さらかよっ』とか、ツッコミの表情のまま死んでたり」

「はうー、空ちゃんまでそんなあ」

「それより、この陽菜の旅行券、どうするかね」

「二十万円分だから、そこそこ豪勢に遊べそうじゃない」


 あかねの声は弾んでいる。


「はいー、陽菜の功績。えへへ」

「……って、そういえば陽菜あんたない胸張るよりさ、おやつはどこ置いたの。罰ゲームで買いに行かされたんでしょ」

「えへっ、それでもらった福引券だもん。おやつは……おやつは」

「……」


 頭の中で、五人は次の展開を予想した。もちろん全員一致だ。わざわざ聞かなくてもわかる。


「ああっ、当選がうれしくて、福引コーナーに置いてきちゃった」

「……だと思った」

「こりゃ、罰ゲームの罰ゲームが必要だな」

「あうーっ。それより……ドーナツが」


 涙目になってやがる。それでも天才武器召喚師かよ。ドーナツで泣くなっての。


「まあいいじゃない。二十万円なら元は取ったし」

「ルナの言う通り。――じゃあ、どこ行く?」


 しばらく考えた。


「海はこの間行ったばかりだし……」

「季節考えると、山じゃないの。富士山どう? 眺めもいいし、気持ちいいよ」


 あかねが提案した。


「なら須走ルートで砂走りね。トレーニングにも役立つし……」

「富士山なら登ったことないし。みんなもそうでしょ」

「決まり。須走ルート、三時間で登って、一時間で降りるわよ」


 ルナの提案に、全員が首を振った。


「そりゃ無謀だろ……」

「あんたはサムライニンジャのガーディアン。肉体派だからいいけどさあ……。先生、仕事の合い間に行くんだから。疲れも溜まってるじゃん」

「都合のいいときだけ、教師になるのねえ……」


 ルナがあかねを睨む。


「ならもういいわ。絵里はともかく、たしかに空に過激な行軍を強いるのも無理っぽいし」

「平気……。だめになったら、思音さんに背負ってもらうし」

「空……」

「だから、いちいち見合うなっての。いいじゃん。別に頂上目指さなくても。五合目から六合目くらいまで歩いて、そこでお弁当食べていい空気と高山植物でも楽しんでさ。あとは下山すれば。で、軍資金もあるし、山中湖のホテルで一泊して豪華な食事とか」


 あかねが顔を輝かす。


「うん。あかねの言う感じでいいだろ。なっルナ」

「……そうね。なんなら六合目で格闘の稽古したっていいか」


 あくまで練武にこだわるニンジャだかサムライだかである。融通の利かない奴だな。


「それに山中湖なら、一文字家の別荘があるわよ」

「別荘より豪華ホテルにしようよ。別荘だと料理とかしないとならないし……。旅館ならさあ……。上ーげ膳っ、据ーえ膳」

「そうそう。昔から『据え膳食わぬは男の恥』と言って……」

「絵里はもう、美里絵里先生でなく、美里エロ先生だな」

「絵里さん、それ、意味違う……」


 空が赤面する。


「違わないんだな、これが。だってその夜、あたしと思音は教師生徒の禁じられた一線をついに越えて――」


 ほっとくと限りなく妄想が続きそうなので、ルナが割り込んだ。


「それなら、そうしようか。車だけ出してもらうわ、父に。五合目までの足が必要だものね」

「ちょっとルナ、ちゃんと聞きなさいよ、あたしの計画」


 絵里の鼻息は荒い。


「……エロ教師の妄想かなにかかしら?」

「なに、やる気? あたしだって自分をドーピングして、あんたに逆ドーピングを施せば、けっこう戦えるんだからね」

「もうよせって。それより、引き戸直しちゃおうぜ、まだ陽が高いうちに」

「リーダーだ」

「さすがリーダー」

「リーダーは絵里先生の下僕ね」

「じゃあ下僕ですー」

「ご主人様は奴隷さん」

「だあーっ。なんだよそれ」


 そうして俺達は富士山に向かったんだが、……当然これが騒動の始まりでさあ。それもマジ騒動の。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ