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第二話 魔王様、変身ですか?

ブクマと感想貰ったので、速攻で更新する奴ぅ――――ッ!!


人間領地に溶け込もうとする魔王様回。

次回辺りに魔王様無双回が来ると思います

 魔王城を出た俺は即座に人間側の領地へと転移していた。


 一から生活を始めると決めたからには荷物など何も持たないのが当然だ。

 さらにこういう場合は旅立つ前に方々へと挨拶するのが普通だと思うが、俺には挨拶するほど親しい友人などいない。


 仕事での関係者については、きちんと挨拶を済ませるのが礼儀だが……グレゴリウスが上手くやってくれるようだし、特に問題も無さそうだ。

 それにこれ以上、こちらが気を遣うのも彼の好意に水を差す気がするし。何もしない方が良さそうだ。



 転移した途端、視界に映るのは生い茂った緑色の草木。どうやら山の中であるらしい。

 山か……。魔族領の山と言えば、周囲を通りかかった者に襲い掛かる木々やら魔物の好きこのむ生き血の匂いで誘い込んで、獲物を食らう花やらがそこかしこに生えている。

 ここらのように静かな草木というのは変に思えるが、これでこそ人間領に来た感じがするというものだ。



 ちなみに人間の領地のことはたまーに『千里眼』スキルで見通していたから、ある程度は知っている。

 あれは魔王としての職務というよりは、仕事の合間を縫ったわずかな時間で癒されるための目的で覗いていたという方が正しいのだが。


 魔物に無残に食い殺される人間とか見るの超癒される。腸から食い破られる人間とか、鮮血が飛び散るのが色鮮やかで大好きだ。



 ひとまず近くを散策しようと、歩き出す。

 すると、歩いた端から草木が真っ黒に枯れていってしまった。


「あ、やばい……魔力、抑えないと」

 俺は自分の魔力の放出を出来る限り、抑えた。


 これも千里眼スキルで見ているだけでは分からなかったことだ。

 人間領土に生えている草木は魔族による魔力を浴びると途端に枯れてしまうのか……。

 少しばかり軟弱に思えるが、これは魔力に対する抵抗を持つ必要がなかったからだろう。土地はその環境に左右される。文句を言っても仕方がないと言うものだ。



 しばらく歩くと、湖があった。人間やら魔物やらの血で汚れていない水というのも珍しい、と少しばかり覗いてみる。


 すると、そこに映っていたのは普段の俺の姿であった。

 三メートルばかりからなる体躯は、筋骨隆々。背中からは魔族の象徴とも言うべき羽が生えている。顔は仮面で覆っている、これは呪いを防ぐためのものだ。名前や顔を知られると呪いをかけやすくなる。俺を含め、上級クラスの魔族はそんな呪いなどスキルや魔法、魔法抵抗力でどうとでもなるが、俺は万が一に備えて普段から仮面を着けていた。


 頭からは二本の角が生えている。魔族の中でも立派だと言える角だ。この良し悪しによって魔族ではモテるか否かが問われる。俺は、まあそれなりにモテる方だ。


 ……まあ、それを生かす機会は全て仕事に奪われたので、皆無だったのだが。

 い、いやナーバスになってはいけない。俺を縛る仕事というのはもう無いのだから。



「しかし、このままではマズイな」

 このまま人間にでも出くわせば騒ぎになってしまうことは明白である。

 俺を一瞬でも見た人間は、今まで全て灰すら残してこなかったが、ここは人間領。見た人間すべてを殺してしまえば、憎き勇者などに目を付けられてしまう。強力な加護やスキルを多く持つ「勇者」の集団に襲われれば、俺とて一溜まりもない。かもしれない。


 ここは敵の領地なのだ。プライベートで来ているとは言え、ここは一つ魔法で姿を変えておくべきだろう。



 ここでどんな姿に変わるべきか思案する。人間の領地は確か……人間以外に知的な会話での意思疎通をすることは不可能だったはず。ということは人間の姿になるべきなのは間違いない。


 人間の姿になる……か。グレゴリウスが聞けば、それだけで怒ってしまうだろう。

 いや、しかし、郷にいては郷に従え。ここは人間の姿になるのが、ここでの暮らしを楽しむコツと言うものだ。



 さて、ではどんな姿に変わるべきだろうか。

 ここで俺はまたも迷ってしまった。


 魔族である俺に人間の美的センスというものは分からないからだ。

 今まで向かい合ったことのある人間は……まあ、勇者やら優秀な人間が多かったはず。ここはそいつらの顔を真似るのが一番だろうか。


 いや、確かあいつら雌の仲間も連れていたはず。しかも、雌四に男二の組み合わせとかいう所謂「ハーレム」的な組み合わせも多かった。


 俺たち魔族を何度となく葬ったというだけでも糞忌々しいのに、それに加えてハーレムとか…………許せぬ。というか許さなかったのだが。

 今やあいつらは魔族領にて、栄養源ともなる魔力を生み出すためだけに存在する家畜となっている。雌の方はオークやらの異種に子供を孕ませることのできる種族に預けた。強いだけあってさぞや優秀な苗床になってくれている。


 殺すだけなら二流の魔王。これを生かしてこそ一流の魔王なのだ。



 ……違う。あいつらの末路などどうでもいい。今は姿形だ。

 勇者はハーレムを作れるほどモテる。つまりあいつらは存外モテる美形の顔立ちなのではなかろうか。


 いや、『勇者』というステータスに雌が群がっているだけの可能性もある。雌が群がっているというだけで美形だと判断するのはいささか早計過ぎるのでは。


 とは言え、あいつらに似せた顔立ちをするのは止めておいた方が良いだろう。

 俺ももう齢にして百三十を過ぎたおっさん。人間に換算すれば三十も半ばだ。


 もう雌にがっつく歳でもないし、それに今更モテてもなぁ……。この歳で相手にリードされてはそれこそ名折れだ。そもそも人間相手に群がられても空しいだけ。


 それに美形になって目立てば、それだけで俺は暮らしづらくなってしまう。



 ここは無難な顔立ちするのは良いだろう。同じ理由で美少女という類に変身するのも駄目だ。と言うより美少女の方がマズい。雄は何だかんだまず容姿に惹かれるからな。


 無難な顔立ち……やはり人間で言うところの三十も半ばのおっさん顔になるのが一番だろう。結婚適齢期も過ぎた奴らならば、そう注目されるような顔にはならんはずだ。


 そう思って俺は昔、千里眼スキルで覗いたことのある朧げな記憶から、おっさんらしき姿かたちをチョイスして、少しばかり崩した上で変身スキルを使用した。


 サーチスキルや解呪呪文などを使っても絶対に見破られないほどの高度なスキル。

 ……そういや病気で仕事を休んだ部下に空けられない仕事があった場合、この変身スキルを使って代わりに俺が出向いたこともあったなぁ。ま、あまり褒められた話ではないが。



 湖に映ったのは紛れもない壮年男性の姿形であった。適度に皺が刻まれた顔には、生きてきた年季を感じさせる。身体つきは適度に運動してそうだが、年相応のだらしなさを演出。服装は旅人らしく、少しばかりくたびれたローブやらを選んだ。



「よし! これで俺も人間に溶け込めるだろう」

 俺はそう独り言ちて、頷いた。




 ただし、この頃、魔王は気付いていなかった。

 人間には壮年男性の持つ独特の色気というのがあることを――――



 そして、人間の女性は意外と年上好きということを――――

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