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日常8

祖母は笑っていたのだ。唇の端を歪めた歪な笑い。


目は狂気に満ちていて、見たこともないその姿に背筋が凍った。

喉が掠れ、もう叫ぶことも叶わない。


ここで、俺は死ぬのか。


肉親に殺されるなんて、なんて、皮肉なことだろう。


全てを諦め、目を閉じかけた時、ふっ、と祖母の表情が変化した。


狂気に歪んだ顔は、瞬く間にもとの柔和な柔らかい顔立ちにその姿を転じる。


「お、おばあちゃん………?」


震えながらもその変化に戸惑い、掠れて声が出なかったはずの喉がなんとか音を絞り出す。


どういうことだ。

なんで、あんな、あんな顔を。


さっきの顔と比べて、今の顔はまるで、


まるで、


「そっくりだろう?あんたの母親ーーー私の最愛の娘に」


俺の思考回路を読んだかのように、絶妙なタイミングで祖母が俺が今まさに言わんとしていた言葉を舌にのせた。


いつもみたいに、軽快なウィンクを言葉尻に乗せて。


「………………?どういうーーー」


「いいかいレイド、人を信用するな」


フッとその笑いを消し、いつになく真剣な顔で祖母は俺に語りかける。

その合間合間に、俺が戻してしまった胃の中身や、汚れた口元を丁寧に拭い、掃除をしてくれる。


「私はさっきお前を蹴りたくて蹴ったわけではないよ」


そういって祖母は、さぞ申し訳なさそうに俺の頭を撫でる。


「なら、どうして、」


「痛かっただろう」


「え?」


「蹴られて、お前は激痛を感じただろう?」


祖母は一体何を言っているのだ。


当たり前じゃないか。人間の身体なんて、どころかしこも柔らかくて脆くて、とても痛い。


ーー痛いんだ。

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