日常4
朝なんて大嫌いだ。
むしろ好きだなんて言うやつの気が知れない。
朝なんて。
朝なんて。
「…………どうしてお前は、そんな事を思うんだい?朝は清々しくて良いもんだよ。もしかして学校で虐められたかい?」
いつの日か、今は亡き祖母にそう尋ねられたことがあった。
御歳92歳の割に、年甲斐もなくいつも少女のように好奇心旺盛で、杖を必要とすることもなく元気一杯にそこいらを走り回っているような人だったと俺は記憶している。
いつも幼いながらに驚いていた。俺は少し病弱だったから、祖母の元気さは羨ましいものでもあったし、物事に執着することもあまり無く、いつもどこか一線を引いて人と関わってきた俺としては、何をそんなに愉しそうにする必要があるのか、と理解ができなかった。
いつも大きな瞳を輝かせて、手をブンブン振りまわしながら「レイド!レイド!」っと俺の名前を叫んでいた彼女は、どんなことがあっても絶対にめげず、そのポジティブ精神のせいか92歳に見られたことが基本的にないほど、生き生きと人生を過ごしていた。
「…………だっておばあちゃん、」
「…うん?」
「ひとは皆死ぬんだ」
「??だからどうしたって言うのさ?そんなの当たり前で」
「だからだよ」
「??」
「ひとは生まれた瞬間から死に向かって歩いてるのとおんなじなんだ!生まれたときから、親とかお医者は喜ぶけれど、産声をあげたその時から、僕達は死ぬために生かされているんだ!」
「ちょっ、レイド」
「でも皆朝がきたら喜ぶんだ!何でだよ!生きていられる時間が無くなっていくのを喜んでるのとおんなじなんだぞ!なんで」
「レイド!」
珍しく祖母が声を荒らげた。
それに遅ればせながら気づき、振り上げられた手を認識して、とっさに怖くなって頭を竦ませると。
……………………………ぽふっ。
「レイド。」
降ってきたのは平手ではなく、優しい、優しい声音と暖かな掌だった。