日常3
ピピピピ、ピピピピピピ……………。
「ん……………」
頭の中に不意に乱入して来た、酷く耳障りな機械音に俺は小さく呻いた。
なんだ。
なんの音だ?
間の抜けた音を止めるべく、俺はバタバタと手を届く範囲の全てに振り回す。
ぷきゅっ、っという柔らかな音と、つるりとした感触を聴覚と触覚で同時に捉え、俺はようやく正体に行き当たり、そのまま間髪入れずにバンッと手のひらを叩きつけた。
ぷきゅうっ!…かたん。
当たりどころが悪かったらしく、その物体は手からフッと姿を消し、これまた間の抜けた音を出しながら、………音から察するに、どうやら床に落ちたらしい。
あの音は、と若干焦るが、どうやら床に落ちた際にスイッチに上手く当たったらしく。
あの耳障りな機械音はぱたっと止んでいた。
ちなみにその正体は、お察しの通り、ただの目覚まし時計である。
流石に落としたままじゃ不味いか、と、モゾモゾとベッドの中で体を軽くほぐし、重い身体を緩慢な動作で起こした。
本来なら朝日が降り注いでそうな雰囲気だが、申し訳ないことにそんなことはなく、昨日眠った時のままで室内は相変わらず暗い。
申し訳程度にカーテンの隙間から朝日が普段なら降り注いでいるのだけれど、今日はあいにくの曇天で、1ミリも陽の光なんて窺えない。
それなのに昨日の天気鏡では、今日は昼から晴天になるらしい
天気鏡というのは、水を入れることで任意の天気を占える、いわゆる、水鏡、という奴である。
「………最悪だ」
……まぁ、いつものことだけれど。
曇っていて構わない。むしろ雨でも降っていたら大歓迎だ。
晴れなんか大嫌いだ。