1話 『くらい』
ーーくらい 。
さむい、くらい、⋯⋯こわいよ 。
ここはどこなの? ⋯⋯まっくらだよ 。
なにも見えないの。
歩いても、歩いても出れないの。
おかーさんはどこにいるの?
おかーさんも〝まいご〟なの?
だれもいないの。
ボク、⋯⋯ボクしかいないの。
さっきまで笑ってたじゃん。
「楽しいね」って、おかいものしてたじゃん。
なんでいなくなっちゃったの?
アタマいたいの。
ズキン、ズキンいたいの。
お熱かな。
お母さん、アタマなでなでってしてよ。
ちゃんとおくすり飲めるから。
あのね、あしもいたいの。
転んじゃったかな?
でもまっくらだから、
〝ち〟は見えないの。
でも、⋯⋯いたいの。
でもほめて?
すごいねって、アタマなでなでして笑って?
「男の子だもんね」って、「泣くのは女の子なんだぞ」って。
ボク男の子だもん。女の子じゃないもん。
イタくても泣かないよ。
お母さんが泣いてたら、ボクが〝いいこいいこ〟したげるから。
⋯⋯ね? だから、
ーー出てきてよ。
⋯⋯さみしい。
⋯⋯こわいの。
「⋯⋯おかーさん」
ーーなんで、いないの?
なんでlさむい(・・・)の?
おかーさん⋯⋯眠いの?
ならおふとん入んないとカゼ引いちゃうよ?
おとーさんにまたカゼ引くぞって怒られちゃうよ?
『お父さん怖いから言うこと聞かないとね』
帰ろ? 今日はおとーさん帰ってくる日だよ?
ずっと〝とうく〟にいたから。
さみしいね、って。
おとーさん怖いからボクやだけど、おかーさんはうれしいでしょ?
明日はみんなで〝プレゼントこうかん〟するんだよ?
ボクちゃんとみんながエガオになるもの作ったんだよ?
だからおねがい。
おねがい。
お願い。
ーー頼むから。
帰ってきてよ。