プロローグ*出会い
桜の花びらが舞う 春 学校
キーンコーン カーンコーン
――ガラッ
「席に着いてー!!今日は読書じゃなくて例の転校生を紹介するから。」
あ、そっか。
そういや転校生が来るなんて言ってたな。
しかも、僕の席は一番窓側の後ろ。隣があいている。
でも朝 学校に来たら机が増えていた。
オカルトマニアな僕は、また変な展開を予想していたけど
もしかしたら例の転校生は僕の隣に来るんじゃないだろうか。
「入っていいよ。」
という先生の声に、例の転校生は「はい。」……と、
虫が鳴くかのようなか細い声で応えた。
――ガラッ
入ってきた転校生は綺麗な長い黒髪の子だった。
細い体つきで、色が白い。
少し押しても倒れそうなほど病弱に見える。
「桜宮 弥生です。宜しくお願いします。」
彼女はそれだけいうと恥ずかしそうにうつむいた。
「じゃあ桜宮さんは横山の隣ね。」
「え?」
「あぁ、来たばっかりだし分かんないか。横山はね、
そこの一番後ろでアホ面してる奴。分かった?」
先生は僕の事を失礼な言い方で説明した。
クラスのみんなは僕を見てクスクス笑ってる。
恥ずかしい。
親友の賢治なんて、大口開けて笑ってる。
むしろあっちのがアホ面だろう。
「はい。分かりました。有り難う御座います。」
転校生の桜宮さんは丁寧にお礼をいい、こっちに向かって来た。
机に座ると、こっちに向き直り
「あの、横山さんですよね?お名前は?」
「あ…、横山 剛です。」
「剛さんですか。宜しくお願いします。」
「あ…あの、話しづらいんでタメでいいでいいっスか?」
「あ、かまわないですよ。」
……。
その後ずっと2人の間で沈黙が続いた。
どうしよう。空気が重い……。
まったく授業の内容を聞き取っていられない。
気になった僕は、横をチラッと見た。
窓が開いていて、そこから風と一緒に少量の桜が入ってくる。
それがなんともいえぬ程に綺麗だ。
横にいた桜宮さんは窓の外の桜の樹をながめていた。
長い髪が風によってなびいた。
―――そして、桜宮さんはこちらの視線に気づいた。
僕は照れ隠しに視線をそらす。
それを察したように桜宮さんは微笑んだ。
こういう人を和風美人って言うんだな……。
着物とか似合いそうだし。
とりあえず僕も桜宮さんに視線を戻して苦笑いをした。