第一章 姫星と凛斗
「はぁー····。ふぅー。」
下駄箱の前で緊張気味でため息を付いているのは溝口姫星。今年で中1になった女子生徒だった。なぜ姫星が大きなため息をついていたというと····。
目の前にあるボードを見ることができないからだった。『普通に見ればいいじゃん』と思うかもしれませんが緊張してどうしようと悩んでいて、そんなことも忘れていたのだった。その時、明るい声が姫星の耳を貫いた。
「おーい!姫星」
声のする方に目を向けたそこには鈴木凛斗がニコニコしながら姫星を見ていた。
「りん?」
姫星は凛斗のことをそう呼んだ。
「凛斗だよ。『りん』じゃねぇーし」
男っぽいしゃべり方に男っぽい髪型だが、正真正銘な女の子である。
(っていうか私より女子だよ?すっごい女子力高いし!私、料理あんまできないからなー····。)
「おいっ····。丸聞こえなんだけど····」
「えっ?」
(やばい、りんからやばいオーラが····)
バキボキと音を立てながら姫星に迫ってくる凛斗
「きっ気のせいだよ。それよりもクラスだよっ!」
話をそらそうとする姫星に呆れたのか「はぁー····。やれやれ」と凛斗は少し困った顔で笑った。
「俺達同じクラスになったんだった」
「えっ?ほっ本当!?」
「おうっ」
「やったぁー!」
と笑う姫星につられて凛斗もはにかんだ。
放課後になった頃、姫星と凛斗は部活の話をすることにした。
「姫星ー。 俺達同じ部活に入らないか?」
「うんっ!私は全然おっけーだよ!」
「そうと決まればどの部活にするか決めよーぜ」
「ういっ!」
姫星は運動音痴なので文化系押しで、凛斗は運動が得意なので運動系押しだったので全く決まらなかったが凛斗の一言で姫星の考えが変わった。
「運動しないと太るよ?」
「運動部入ります。」
姫星は即答で返した。
元からぽっちゃり系の姫星はこれ以上太るのはゴメンだと思ったからだ。
「じゃあどこの部活はいる?俺的にはソフト部かサッカー部かバレーかな?」
「あまりきつそうじゃないヤツがいいな····。」
姫星はそう呟いた。
運動が昔から苦手な姫星は、きつい部活だとついていけないと考えたのだろう。
「じゃあソフトかバレー?」
「バレー部ギャル多そう····。」
姫星はギャルと男子が大の嫌いである。
ギャルはキャッキャっと五月蠅いから男子は昔いじめられた経験があったから嫌いなのである。
「確かにギャルは嫌だな····。やっぱりソフトか」
「うん」
「じゃあ今度、釜霧先生にだしに行こうぜ」
「了解っ」
話がまとまったところで二人は帰ることにした。