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僕の運が加速的に無くなっていってしまっています  作者: 現実↓逃避
こうして僕はバイトを始めました
3/6

予想外の再開?

「ではそこにお掛けなさい」

 麻桐家の母親が自分の座っている向かいのソファの方へ手を向けている。そこに座りなさいって事だよな。

「三日月幹也です。今日はよろしくお願いします」

 僕は座る前にそういった


「私は麻桐(あさぎり)響子(きょうこ)よ。さっきあなたの案内をしていた幇歌の母親よ。面接を始めたいとこだけど、こっちの聞きたいことのほとんどは、幇歌が聞いちゃったからほとんどやることないのよねえ。」

 響子さんはそう言いながら自分の右手を添えるように自分の頬に当てた。

「そうね、じゃあ、家庭教師を雇うことにした理由でも説明しようかしら」

「あ、はい。それは僕もちょっと気になってました。こういうところの家庭教師って、もっと育ちのいい人がやるイメージがあるので」


 僕が思ったことを口にしたら響子さんは笑いながら

「必要なのはただの家庭教師じゃないのよ」

 家庭教師って勉強を教える人のことだから普通の人じゃなきゃだめなんじゃ…


「そうですね、私には二人の娘がいるのですが、次女の方がよく無断で家を抜け出して、小学校の友達と遊びに行ってるんですよ」

 響子さんは若干複雑な表情で言葉もため息交じりだ。

「見聞を広げるという意味では外出は嬉しいのですが、先日とうとう、知らない人に迷惑をかけてしまったみたいでしてね、その時は優しい人だったみたいですけど次は、そうは行かないかもしれません」


 そういえば響子さんって二児の母にはまったく見えないね

「なので以後そんなことが起きないように、そういったことを教えてくれる人が必要なのです。なので幸薄そうな方を探して、その方なら危険なことも経験しているだろうと思い、条件を『あなたはトラウマになりそうなことを10回以上経験している』とさせていただいたのです」


 あの条件を見たときにまざまざと蘇る記憶とトラウマ。友人と学校から帰っていたら野良犬に(僕だけ)追いかけられ、その犬から逃れるために木に登ったら、木の枝が折れて結局犬に噛まれまくったり、高校のときのバレンタインとか…。


 考えるのをやめよう、これ以上考えてたらブルーになる。

「なので住み込みで家庭教師をしていただきたいのですがよろしいですか?」

 へえ、住み込みで家庭教師なんだあ、これなら家賃の心配ないから働く必要…うん?そうじゃん、元々の目的は家賃とか払うためじゃないか。


「えっとですね、その場合自分の部屋は」

「もちろん引き払ってもらいます」

「引き払うなら両親にも伝えなきゃいけないと僕は」

「こちらの方で連絡と説得をさせてもらいます」

 どうしよう、反論の言葉がもうないや。僕は人といると不幸になるから、一人暮らしをしていたというのに。


 僕がそんな風に悩んでいると、

「お母様、ここの答えが分からないので教えてもらえませんか?」

 若干舌足らずな声を出しながら一人の幼じ…女の子が扉を開けて入ってきた。ピンクのツインテールをしていてとてもかわいらしい。


「まだお客様と話してるから終わったら教えるね」

 そう響子さんが伝えると、女の子は不服そうな表情で少しむくれてしまっている。ん?この子とどこかであった気が…。

「ちょうどいいわ、この方がこれから凛にいろいろ教えてくれる家庭教師の三日月君よ」

 女の子はいままで母親しか見ていなかったのか、母親に促されて僕の方を初めて向いた。すると少し驚いたような表情をしている。そんな表情もかわいらしいが、初対面の僕にそんな表情をするのはなんでだろう。


「えっと、昨日のアイスのお兄ちゃん?」

 ん?アイスのお兄ちゃん?確かに昨日はアイスを食べようとはしてたけどなんでこの子が知ってるんだろう。

「昨日はごめんなさい。あと、ありがとうございます!」

 僕はこんな幼女…女の子に感謝されるようなことってしたっけ?いや、でもやっぱりどこかで…


「凛、この方と知り合いなの?」

「昨日迷惑かけちゃったお兄ちゃんだよ、私がぶつかってアイスを怖そうなおじさんにぶつけさせちゃった」

 女の子は泣きそうになっている。その泣きそうな顔を見て、ふと既視感がしたんだけどな。

 …ああ!昨日友達と一緒に歩いてた小学生ぐらいの女の子か。

「大丈夫だよ、昨日も言ったけど気にしてないから」

「昨日どのようなことが?凛からは、昨日は知らない人に迷惑をかけてしまったとしか聞いていなかったので。よろしければ詳しく教えてもらえませんか?」


「ちょっと待ってください、その笑顔怖いですよ、それに聞いたら凛ちゃんをどうするつもりなんですか?」

 凛ちゃんは自分の名前が上がると、僕のほうにすがるような目を向けてくる。こんな子供にこんな表情はさせたくない。

「そうですね、もう以後二度としないように厳しく叱りますね」

 凛ちゃんはビクッと肩を震わしてうつむいてしまった。


「僕にはちょっと言えませんね。それと、バイトの件なのですが、ここに住み込みになるんだったら断ろうかと考えています」

 確かに美人、美少女、美幼女と一つ屋根の下で暮らせるのは非常に魅力的ではあるが、やっぱり不幸になって嫌な目にあうのは嫌だ。

「そうですか、お礼もしたいですし今日ぐらいは泊まって行かれませんか?」

 そう言う響子さんの隣では凛ちゃんが期待の眼差しで見てくる。やめてくれよ、そんな目で僕を見たら期待に応えちゃいそうだよ。


「すいません、今日は長時間外出する予定もなく家でゆっくり料理する予定だったので、自宅に食材がたくさんあるんです」

 もちろん嘘だ。期待を裏切られたような目で泣きそうになっている凛ちゃんの姿が見えたが、自分が不幸になり続けるほうがもっと嫌だ。やっぱりいろいろ経験しているので、自分の保身が優先である。

「お兄ちゃんお泊りして行かないの?」

 決心が揺らいでしまいそうである。

「どうしてそこまで私たちの家に泊まるという行為を拒むのでしょうか?」


 やっぱりそこに突っ込んでくるか、そりゃやっぱり聞きたくなるよな。しょうがない、ここはほんとのことを言って、お礼の代わりに今後関わってこないようにいうか。


「別にこの家の居心地が悪いとかではありませんよ、むしろ清潔にされているくらいだし、できたら住みたいぐらいですよ」

 これは僕の嘘偽りのない、正真正銘の本音だ。

「ではどうして?」

「ここからは他言しないなら教えます」


「……」

 響子さんは考えるそぶりをすると、

「お母さんは大事な話をするから凛はこの部屋からいったん出なさい」

 そう凛ちゃんに促して凛ちゃんをこの部屋から出した。正直助かります。

 凛ちゃんが部屋の外に出て扉を閉めると、僕のほうに向きなおり、

「では、絶対他言しないので話してくださる?」

 僕に話すように促してきた。さて、どうやって伝えるか…。

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