忍の一日。
しかし、顔を真っ赤にして私をじろじろと見ているではないですか。セクハラですよ!
「貴様ァ!!」
プラスチック手裏剣を投げ放つ。刃(何度も申し上げますが、プラスチックです。銃刀法違反になりますから)は弧を描き宿敵のでこっぱちにクリティカルヒット!
「え、嘘でしょ…」
こんなに宿敵は弱かっただろうか。かこーん!といい音を響かせてノックダウンし、そのまま後ろに倒れてしまいました。その姿に、あっけに取られましたよ。
「ああ…手を煩わせやがって」
指をパチンとならせば、二人の下忍が姿を現した。
「この者を適当に運んでおけ。―――ああ、そうだ」
部屋に戻り、書をしたためた。「初な奴❤」と。うむ、よい出来じゃ。思わず口角が二イィと吊り上った。うきゃきゃきゃッ、しめしめ。
宿敵の元に戻り、それを体に張り付けた。
「いけ」
「御意」
下忍は宿敵を抱えると、兎飛の術で高く飛び上がり、屋根を越えていった。
「さて、修練開始です」
分身の術で己の分身を召喚し、修練を始めた。それはそれは過酷なものでした。己の体を虐め抜き、さらに複数の術を用いて耐久力を養うなど、くたくたになるまで一日中やりつづけた。
いつしか、空が暁に染まり、日が傾き始めた夕刻。ポタリと汗が滴り落ち、拭うことすら無駄に思えるほどの量だった。口布を取り、上衣を脱ぐ。そして、インナーを脱ごうと手にかけて半分まで持ち上げたときでした。ふと絹のような滑らかな声が耳に届いた。
「セクシーだね、千景」
「ぬ、主様!!」
思わぬ所で伏兵…ならぬ、主の登場です。慌てて服を戻し、すぐさま片膝をつく。ああ、なんと言うことでしょう。全く気が付きませんでした。
「修練か、精が出るね」
「すぐに去ります。このような姿で御前になど…」
「私にはいい眺めだけどなぁ」
ポツリと呟いた。そして、草履に足を通されると私の眼前にお立ちになる。
ぬぬ主様!! 今、聞き捨てならぬ御言葉を!!
恐る恐る顔を拝顔すると、目を細めて微笑むお顔があまりにも艶やかだった。―――心臓に悪い。無駄に色気を出さないで頂きたい。
「少しは私の相手でもしてもらおうかなぁ」
「お、恐れ多くて…」
正直、何をされるかたまったもんじゃない。前世だって、遊びと称して色仕掛けをされたこともあり…気が気じゃなかった。期待が先行して、勝手に思い込んで自爆…あああああああああ!!! 恥ですッ!! 一生の不覚です!!
「千景」
「はい…って、きゃあッ!」
パッと顔を上げれば、主様のきれいなお顔が眼前にあった。そして、そっと手を取られ、するりと腰に腕が回る。
ぎゃあああああああああああああああ!!
む、無理ィィィィィィィ!! これ以上の接近は危険ーーーー!!