二話 忍の一日。 千景side
今日は、私はつかの間の暇です。主様はお部屋でごゆるりと過ごされているご様子。ならば、私は修行をしなければ。そう思い、長持を開け、竹かごの蓋を開ければ懐かしい忍装束です。―――現世でこれを身に付けるとコスプレになるというああ悲しき現実。忍でいたいのに、守屋殿から秋葉原系と言われたときのショッキングさ!
そもそも、私は忍ですと申しても、一般人には伝わらないでしょうね。ああ、職業欄はいつも無職…。時代の変化には驚かされるばかりです。
「んー…ちょっと露出が激しいな」
いざ、着用するとこんなものだったのかと驚いた。
インナーに薄手の黒いタンクトップを来ているが、若干胸の谷間が見えるわ、脚はかなり出すわで現世に非対応なデザインだ。これは作り直す必要があるな。素材がかなり貴重なのですが、現代に対応するためのエコ思考でいかねば!
んー…体のラインがもろに出ている。昔自分が着ていたとはいえ、ちょっとなぁ~。
最後に、髪を総髪風に結い上げ、紫色の口布をつければ、完成だ。
「おお、昔と変わらぬ姿だ。ああ、懐かしや」
数々の活躍が思い出される。まだ、主様が若様だった時の戦では、敵将を三人も討ち取ったっけ。その時の通名が、『熊殺しの千』 ……なんて、女の子らしくない名前でしょうか。
さあてと。部屋から出ようと障子を開けると、
「あ」
「うをっ!!」
なんと宿敵がいるではありませんか。しかも、私服ですよ!
「なぜ貴様がここにおるのだ」
すぐさま手裏剣――一言申しておきますが、プラスチック製です。これを見た主様に大笑いされました。エセ手裏剣ならト○○スにいけと言われました。――を手にする。しかし、なぜか宿敵が固まっていた。しかも、ある部分を見てフリーズしている。視線を追えば自分の体に行き着く。ああ、フリーズしている理由がわかった。派手な装束が原因か。なんだ、意外な一面を発見したな。主様なら、しれっとしているのに。
「お、おまッなんちゅー格好を」
「勘違いするな。これは忍の装束だ。軽量かつ動きやすいのに火に強く刃でも切り裂くことはできない超高機能な最先端装束だ」
サッと中庭へと飛び移り距離を取る。いざというときは、討ち取る所存。そう意気込んで、ぎゅうと(プラスチック)手裏剣の柄を握りしめました。