葵タンに攻撃しようとすると服が分子分解されて消える呪い
葵はいつものように学校に登校した。今日もイジメられる。だが自分には飛鳥がいる。飛鳥がモーニングコールしてくれる上に、小まめにメールもくれる。葵はそれだけで幸せだった。
学校に到着すると、ゆっくり教室に入った。また暴力を振るわれたら堪らない。早く葵空間に入るのが一番安全だ。
「おい、犬」
葵はビクッとしておそるおそる振り返った。葵を激しくイジメる女子の一人、板野さんだ。葵はすぐさま土下座して挨拶した。
「板野さん、おはようございます!」
板野は満足気に頷いて言った。
「あたしの友達にも全員挨拶して」
「はい!」
葵は土下座して挨拶した。いつもの光景だ。いつからこんな力関係になったのかよく覚えてない。葵が挨拶を終えそそくさと席に行こうと立ち上がった。それを見て板野が叫んだ。
「てめぇ! 犬の分際で立ち上がってんじゃねぇ!」
板野の蹴りが葵を襲おうとした瞬間、板野の衣服が全て分子分解されて消えた。葵は愕然としてその姿を見つめた。葵だけではない。クラスにいて板野を見ていた誰もが愕然とした。
「え? ええぇ? へぇ?」
板野は自分の姿を驚いて見つめた。裸だ。葵は初めて生おっぱいと色々なところを見た。板野は意外と胸が大きい。その胸がふるふる教室で揺れていた。しばらくの沈黙の後。板野は自分が教室で真っ裸だということを理解すると、真っ赤にして叫んだ。
「イヤァァァァァ!」
板野は走ってどこかに行ってしまった。板野の友達は半分板野を追いかけ、半分は葵に詰め寄った。
「おい、葵! てめぇ何したんだよ!」
「わ、わかりません! 僕は何もしてません!」
「何もしてないワケねーだろ! 板野ちゃんの服はどうした!?」
「知りません! わかりません!」
女子はイライラして葵に蹴りを加えようとした、その瞬間、その女子の衣服も分子分解されて消えた。葵はまた愕然としてそれを見つめた。ちょうど足を持ち上げたところだったので、男の子が一番見ちゃいけないところも見えてしまった。
「ええ! ウソ! いやだぁ!」
女子は堪らず裸のまま、その場に崩れ落ちた。大変だ。裸なんて恥ずかしくてしょうがないじゃないか。優しい葵は制服を脱いで着せてあげようとした。その葵を一人の女子が掴んで腕を振りかぶった。
「何見てんだよ! 消えろ! この犬!」
張り手が飛んでくる瞬間、その女子の衣服も分子分解されて消えた。男子達は突然女子が真っ裸になったので、急いでみんな見ようと教室の後ろに集まってきた。
「こら男子みんな! 消えろ!」
葵はその騒ぎの中をはいずり出て、急いで飛鳥にメールを送った。
[飛鳥さん、女子の制服が消えちゃいました! これが呪いですか!?]
葵が急いでメールを打つと飛鳥からすぐに返信がきた。
[そうよ。葵タンに攻撃するやつは衣服が分子分解する呪いかけてあるから。裸のクラスメイトを笑ってやりなさい。でも、女子の体は見ちゃダメよ。葵タンは私だけのものなんだから]
葵はガタガタ震えながらそのメールを見つめた。攻撃すると衣服が分子分解!? なんだそりゃ!? そんなバカな話が………。
葵はチラリと裸になった女子を見つめた。女子達が全員集まって裸の女子を隠しながらジャージを着せている。大変だ。僕に攻撃する人はマッパになっちゃう。こんな恥ずかしいことはない。大変だ。葵は頭を抱えた。
「おい、葵がきたぞ」
「よっしゃいつものいくか」
「今日こそアイツは殴ってやる」
葵は震えながら自分の席に近づく男たちを見つめた。葵を激しくイジメる男4人組だ。葵は思わず叫んだ。
「ダ、ダメです! 僕に攻撃しちゃダメです! とんでもないことになります!」
空手部の中根が「はぁ?」という顔をして、葵の首根っこを掴みあげた。
「てめぇ、葵の分際で何生意気言ってんだ。今日は蹴りだ。俺様のミルコも真っ青の左ハイキックで沈めてやる」
葵は涙目になりながら首を振った。
「やめよぉ、中根くんダメだよぉ。やめようよぉ……」
「うるせえ! 黙って立ってろ!」
中根は構えると左ハイキックを放とうとした、その瞬間、中根のチンポはミルコォと勃起して衣服は分子分解されて消えた。
「ムキッ!」
中根は真っ裸のままチンポをビンビンにさせ、床にうずくまって叫んだ。
「な、なんだこりゃぁ!」
葵も愕然としてその光景を見つめた。チンポも勃起した。なんとなくチンポの勃起の呪いは一日立てば消えるのかなぁ、と思っていたら、呪いの効果が重複している! チンポを勃起させて教室で真っ裸なんて最悪の黒歴史じゃないか!
「く、くそぉ! てめぇら見るな! 俺を見るな!」
中根は必死に股間を押さえ鞄で股間を押さえた。誰もがその間抜けな光景を見て爆笑していた。チンポをマックスまで勃起させたマッパの男子。こんなに面白いものはない。
「おい葵、お前何したんだよ……ックックック、ぎゃっはは!」
柔道部の尾形がおかしそうに葵の肩をバンバンと叩こうとした。その瞬間、尾形のチンポはクロコッと勃起して衣服は分子分解されて消えた。
「ムキッ!」
尾形は慌てて全裸でうずくまった。クラスメイトはまたゲラゲラ笑い出した。葵は笑いどころじゃなかった。必死でみんなに叫んだ。
「僕を叩かないで、こうなっちゃうから! お願い! 呪われちゃうんだ!」
野球部の近藤は可笑しそうに葵に尋ねた。
「ぎゃはは! お前に攻撃するとこうなっちゃうの?」
「そうだよ! 僕に近づいちゃダメだよ!」
近藤は笑いながら葵を壁に押しつけて、金属バットを振りかぶった。
「なにそれチョーうける。攻撃ってこういうことかぁ!?」
近藤の金属バットが葵を襲う。その瞬間、近藤のチンポはコップッと勃起した。そして衣服が分子分解されて消えた。
「ウキッ!」
近藤も真っ裸になってうずくまった。さすがに全裸3人の男が全裸でチンポをビンビンに勃起させている光景はもう笑いを通り越して驚愕の光景だった。イジメっこのリーダーでもある嶋野は驚いて3人を見つめた。
「お、お前らいったいこれはどういうことだ!」
葵は必死に嶋野に詰め寄った。
「嶋野さん! マルボロです! 僕に攻撃しちゃダメです! チンポが勃起して服が消えます!」
嶋野はマルボロを受け取り、ゴクリと生唾を飲み込んで葵を見つめた。クラスメイトも同様に怯えた視線を葵に送った。中根たちは服は着たいけど、そうしたらチンポの勃起がばれる。しゃがんでどうにもこうにも動けなかった。
「中根くん、僕の制服を使って!」
優しい葵は衣服を股間で隠しながら中根たちにジャージを着させた。
「葵、す、すまんな……」
「ごめんないさい、僕のせいで。近藤くんも鞄使って」
「あ、ああ……」
その日からクラスメイトたちは葵を攻撃するのを止めた。そして恐怖の視線を送るようになった。プリントが配られる際なども、葵の前の席の男子はビクビクしながら葵に手渡すようになった。
放課後になった。朝の件があり、誰も葵に話しかけようとしなかった。からかわれたり、叩かれたりすることもなくなった。完全なる恐怖のシカトだ。葵は少し安堵していた。
葵はいつものように教室と廊下とトイレを2箇所掃除して、部活のために体育館に向かった。
「葵! 遅いんだよ!」
「すみません! 今台出します! 攻撃しないでください!」
葵は必死に台を出して、攻撃されそうになったら逃げた。体育館で真っ裸になったら身を隠すものはない。男はラケットで股間の小さなラケットと2個のピンポン玉を隠せばいいが、卓球部は葵以外は全員女子だ。
「おい、葵」
部長の紺野が葵の元へやってきた。
「はい、部長! なんでしょうか!」
葵は紺野の機嫌を損ねないように直立不動で紺野を見つめた。
「なんかハキハキしててお前生意気だな」
葵はぞっとした。攻撃される。そして紺野部長は真っ裸になってしまう。紺野部長は身長は葵と変わらないがロリ巨乳で有名だ。体育館で部長が真っ裸になったら慰み者になってしまう。
「部長! お願いします! 僕を殴らないでください!」
優しい葵は必死に土下座して頭を下げた。だが、紺野は冷酷だった。そして、呪いも冷酷だった。
「殴るな、ってことは蹴ってもいいんだな? おらぁ!」
その瞬間、紺野部長の衣服は分子分解されて消えた。ぶるんぶるんと巨乳が揺れている。葵は涙目で部長を見つめた。
「え、えぇ? はぁ? な、なんで?」
体育館にいたバスケ部と、バレー部が指を差して紺野を見つめた。
「うひょお! 紺野が脱いでる!」
「マジで! やべぇ!」
葵は慌ててジャージを脱いで紺野にかけた。紺野はなぜ自分が裸になっているのかまだ理解していない。上半身にジャージを着せると、葵はトランクス姿になりながら下のジャージも差し出した。
「紺野部長! これも履いてください!」
ようやく紺野の思考が冷静さを取り戻した。
「キャアアアアアアアア!」
紺野は慌ててしゃがみこんだ。葵は焦った。そのしゃがみ方だと葵に女の子の見ちゃいけない部分が見えちゃう。葵は視線を逸らしながらジャージを渡した。
「部長! 早く履いてください!」
「ふぇ? あぁ、ああ。うん……」
紺野は急いでジャージを履くと、葵に詰め寄った。
「おい葵! お前何したんだよ!」
紺野は今にも殴りかかりそうだ。葵は困った。紺野が着ているのは自分のジャージだ。また分子分解されたらもう着せる衣服がない。だが、紺野は冷酷だった。もちろん、呪いも冷酷だった。
「この、変態!」
紺野がビンタしようとした瞬間、ジャージが分子分解されて消えた。葵はたまらず泣き出した。
「ダメですよぉぉ! ああ! また消えちゃった!」
紺野は自分がまた真っ裸になったことを理解すると悲鳴を上げてその場から逃げ出した。
「イヤァァァァァァ!」
葵はため息をつきながら逃げていく紺野の後ろ姿を見ていた。
部活が終わった。紺野部長は戻ってこなかった。女子が3人になりひとり葵の対戦ができたが、イジメられっ子の葵は卓球してもらえなかった。葵はしょんぼりしながら壁を相手に一人で球を打っていた。
体育館の掃除を終えると急いで飛鳥と待ち合わせ場所である駅に向かった。葵は必死にダッシュで飛鳥に会うために走った。
「飛鳥さーーん!」
「葵タン!」
飛鳥は葵の姿を見つけるとすぐにぎゅっと抱きしめた。
「飛鳥さん、お待たせしちゃって、すみません……」
「ううん、いいんだよ葵タン。葵タンの卓球部は遅くまで練習してるんだね」
葵は照れ臭そうに言った。
「いや、練習は普通なんですけど、掃除が大変で」
飛鳥の目がキラーンと光った。
「掃除? それってどういうこと」
葵は余計なことを言ったと思った。また掃除を押し付けられていることがバレたら嫌われちゃう。葵は必死に誤魔化した。
「いや、あの、僕、掃除当番だったんです。それで……」
飛鳥は強い目線で葵を見ると、頭を撫でながら葵に尋ねた。
「葵タン、もしかして掃除を全部押し付けられるの?」
「そんなことないです……」
「葵タン、私の目をちゃんと見て。葵タンは私には正直になって欲しいの」
葵は飛鳥に頭を撫でられながら泣き出した。
「……ごめんなさい。実はクラスの掃除も、部活の掃除も僕が一人でやってるんです……それで遅くなっちゃって……」
飛鳥の拳に怒りがこもった。
「こんなに可愛い葵タンに掃除を押し付けてるの? 許せない。葵タン、ベンチに座って」
飛鳥は葵の腕をとってベンチに座らせた。葵はたまらず言った。
「飛鳥さん、また呪いですか? 呪いはクラスメイトが可哀相です!」
飛鳥目をうるうるさせて葵を見つめた。
「なんて葵タンは優しいの! わかった。軽い呪いにしてあげる」
飛鳥は葵とベンチに座ると、おでこをくっつけた。
「葵タン、目を瞑って」
「は、はい……」
葵が目を瞑ると、飛鳥がまたお経のような文句を唱え始めた。
「………ひさしきぼきぐいこさちゅこださてれつうえでこうであれちゅくおおでてつこいがらしこいけ」
飛鳥がそこまで言うと、また大きい声で叫んだ。
「ふんだらぼっち!」
葵はビクっと体を震わせる。飛鳥は葵のおでこにキスをして葵から離れた。
「はい、おしまい」
葵は怯えながら尋ねた。
「今度はどんな呪いなんですか……?」
「うふふ、それは明日までのお楽しみ」
飛鳥は嬉しそうに笑った。葵は果てしなく不安だった。