葵タンに攻撃しようとすると男性器が激しく勃起する呪い
葵と飛鳥は自己紹介も兼ねてお互いのことを話していた。
「私はバレー部に入ってるんだ。葵タンは何か部活をしてるの?」
「僕は卓球部に入ってます……。あはは、卓球なんて、ダサイですよね」
「そんなことないよ。うふふ、葵タン卓球好きなんだ。可愛いなぁ」
飛鳥は葵の頭をごしごし撫でた。葵にとっては彼女というか、お姉さんができたような感じだった。
「葵タン。その手の傷も卓球でできたの?」
葵は慌てて手の痣を隠した。イジメでできた傷なんて知られたら嫌われてしまうかもしれない。葵は慌てて言った。
「う、うん。部活で作ったんです」
「そうなの? よく見せてみて」
飛鳥は葵の手をとった。手の甲に大きな痣ができている。
「卓球って、結構激しいスポーツなんだね」
飛鳥は葵の腕を引っ張った。たまらず葵は声を上げた。
「いたたた……」
葵の制服の下はイジメによって傷つけられた傷跡だらけだ。飛鳥は葵の様子を見て何かを察した。
「葵タン、制服の腕をまくってみて」
「え、それはちょっと……」
「早く、ほらほら」
葵は慌てて飛鳥の手を止めた。イジメられっ子であることがバレてしまう。だが飛鳥はあっさり葵の制止を振り払うと、腕の傷をじっと眺めた。
「葵タン……これ、部活じゃないでしょ……」
葵は気まずそうに顔を伏せた。腕には暴力や切り傷やタバコの押し当てた後が残っている。飛鳥はもう片方の腕もまくってみる。やはり傷だらけだ。葵は諦めて言った。
「あの、僕はイジメられっ子なんです。ごめんなさい。カレシなんて、ふさわしくないですよね……」
葵は泣きそうになりながら正直に言った。飛鳥は涙目の葵を愛おしそうに見つめた。
「ううん、そんなことないよ」
飛鳥は優しく葵を抱きしめた。
「辛かったでしょ。こんなに可愛い葵タンをイジメるなんて信じられない」
葵は飛鳥にしがみついた。そして震えるように泣き出した。これまで誰にも言えなかった秘密を話し、それでも慰めてくれる飛鳥の存在がたまらなくありがたかった。
飛鳥は泣きじゃくる葵をずっと抱きしめていた。飛鳥は葵の頭を撫でながら優しく葵に尋ねた。
「これは男にやられたの?」
葵は黙って泣きながら頷いた。
「許せない、葵タンに暴力を振るうなんて……」
飛鳥は葵から体を離し、葵の涙をハンカチで拭った。
「ねぇ、葵タン、お姉さんが呪いをかけてあげる」
「ふぇ?」
葵は驚いて飛鳥を見つめた。飛鳥は可憐に微笑んでいる。
「葵タンをイジメるなんて許せない。私が葵タンを守るために呪いをかけてあげる」
葵は震える声で尋ねた。
「の、呪い?」
「そう、呪い。葵タン、私とおでこをくっつけて」
葵は言われるままに飛鳥をおでこを合わせた。飛鳥の吐息を感じて、葵は果てしなくドキドキしていた。
「目を閉じて」
「は、はい……」
「絶対あけちゃダメよ」
「はい……」
これって、もしかしてチュウかな、キスされちゃうのかな。葵はじっと目を瞑った。やがて飛鳥が何やらぶつぶつ言葉を言い始めた。何を言っているのだろう? 葵はちらりと目を開けた。
「あけちゃダメって言ったでしょ」
「ひぃ、は、はい!」
物凄い形相で飛鳥が葵を睨み付けていた。葵は冷や汗が背中を流れるのを感じながら、ぎゅっと固く目を閉じた。やがて飛鳥の口からぶつぶつとした声が段々と大きくなってくる。
「………ひさしきぼきふこせだてしおしょうでゅとくでぃあおだいうえでこうであれちゅくおおでてつこ」
飛鳥のお経のような声が段々大きくなってくる。葵はガタガタ震えながらそのお経みたいな文句を聞いていた。
「ふんだらぼっち!」
飛鳥が大きな声で叫んだ。ビクッと葵の体も反応する。
「はい、終わったわよ」
飛鳥は葵のおでこにキスをすると、葵から離れた。まだ葵は目を閉じたままだ。
「うふふ、もう目を開けていいのよ。もうイジメられないよ」
葵はおずおずと目を開けた。飛鳥の顔を泣きそうになりながら見つめた。飛鳥はその睫毛の長い大きな瞳を見て、うっとりとした顔つきで言った。
「はぁ、葵タン、本当に可愛いなぁ、女の子みたい」
「は、はぁ……」
「きゃぁ、怯えてる葵タンも可愛い!」
葵は全身を見回した。呪いと言っていたが、何か起きたのだろうか。自分に何が起きたのかよくわからない。
「ねぇねぇ、葵タン、プリクラ撮りに行こ!」
「は、はい」
飛鳥は葵の手を引っ張って駅の出口を目指した。葵は結局呪いとは何なのか、その意味を聞くことはできなかった。
翌日、学校に葵は普通に登校した。また過酷なイジメが待っているが、飛鳥という素晴らしい彼女ができた。葵はそれだけでなんだか頑張れそうな気がした。
葵はなるべく人目につかないように教室に入った。
「きたきたぁ!」
葵の腹に蹴りがぶち込まれた。非力な葵は教室の壁まで吹き飛んだ。
「ちょっと葵、あたしに挨拶なしで教室に入ろうとしてんの? おい、聞いてんの?」
葵はおそるおそる蹴りを入れた女子を見上げた。葵を暴力でイジメる女子の一人、板野さんだ。茶髪のショートカットな男勝りの板野は葵をガンガンと蹴りつけた。
「ほら! 挨拶しろよ! 犬!」
葵はおずおずと土下座して板野に言った。
「い、板野さん、おはようございます」
板野は満足そうに葵を見下した。
「そうそう、あたしの友達にも挨拶しなさい」
葵は同じように頭を下げて挨拶をした。いつもの光景だ。いつもの葵のイジメられている光景だ。当然誰も助けに来ないし、楽しそうに葵のイジメられっぷりを見ている。
「よし、行け。犬。四つんばいで行け」
葵は急いで自分の席に向かった。葵の席は教室の窓際の一番隅だ。葵空間、となずけられたスペースにはガムテープが床に貼られている。葵はそのガムテープの外に出るな、というボーダーラインだ。葵は急いで自分の席に座った。
「おい、パシリがきやがった」
「葵じゃねぇか、いつものいくか」
「アイツを殴らないと一日が始まらないよな」
葵は震えながら自分の席に近づく男たちを見つめた。葵を激しくイジメる男4人組だ。先頭の嶋野、空手部の中根、柔道部の尾形、野球部の近藤だ。嶋野にパシられ、中根に殴られ、尾形に投げられ、近藤にケツバットをくらうのが朝の恒例行事だ。
葵は震えながら携帯に貼った飛鳥とのプリクラを見つめた。大丈夫だ。どんなにイジメられても飛鳥がいる。自分には飛鳥がいる。葵が携帯を持って震えていると、嶋野が近づいて言った。
「おい、葵、マルボロ買ってこい」
「は、はい。もう買ってきました!」
葵はできるパシリだ。パシリ選手権に出れば優勝を狙えるだろう。嶋野の好きな銘柄は揃えてあった。嶋野は満足そうに頷いた。
「できるパシリだ。今日は機嫌がいい。昼のパシリはなしにしてやる」
「はい、嶋野さんありがとうございます!」
嶋野はあまり葵に暴力は振るわない。パシリとして活用するだけだ。だが他の3人は違う。葵に暴力をぶつけないと一日が始まらないと思っている。葵は覚悟して残る3人を怯えた目で見つめた。まず空手部の中根が葵の首根っこを持った。
「葵、いつも朝の挨拶いくぞ。じゃあ、まずボディに正拳を一発……」
その瞬間、中根のチンポがバキュンと勃起した。
「ムキッ!」
中根は股間を押さえてうずくまった。中根はいきなりチンポが限界を越えるほど勃起してしまい、思わず股間を押さえたまま床に倒れた。尾形はぎゃははと笑って中根を見つめた。
「何やってんだお前? おい、葵、巴投げ選手権だ。今日は廊下までお前を飛ばしてやる」
柔道部の尾形がそういって葵の制服を掴んだ。その瞬間、尾形のチンポがギャビンと勃起した。
「ムキッ!」
尾形も股間を押さえてうずくまった。近藤は床に転がる2人を見て動揺して葵に尋ねた。
「お、おい葵。お前何しやがった!」
葵は必死に首を振った。
「ぼ、僕は何もしてません!」
近藤は床に倒れながら激しいチンポの勃起に耐える2人を指差した。
「じゃあ、コイツらは何だ! 何でこうなってんだ!」
「わ、わかりません!」
近藤は舌打ちして金属バットを振りかぶった。
「何だかわかんねぇが生意気だ、くらいやがれ!」
その瞬間、近藤のチンポがパキーンと勃起した。
「ムキャ!」
近藤は金属バッドから手を離して、股間を押さえながら床に崩れ落ちた。葵はわなわなとその光景を見つめた。何が起きているのか、葵にも中根たちにもさっぱりわからなかった。ただ中根たちのチンポが激しく勃起している。そしてチンポの勃起を女子に見られることは死を意味する。中根たちは必死でチンポの勃起を押さえた。
葵はどうしたら良いかわからずオロオロと中根たちに駆け寄った。
「し、中根くん、だ、大丈夫?」
「うるせぇ! 近づくな! てめぇは葵空間から出てくんな!」
葵が倒れる3人を心配していると、始業ベルが鳴った。3人は必死にチンポの勃起を隠しながら席に戻っていった。葵が呆然としていると、葵のケータイがメールを受信した。飛鳥からのメールだ。
[呪いの効果はどう? イジメられてない?]
葵は愕然としてメールを見つめた。呪い? これが呪い? 確かにイジメられなかった。葵は担任が来る前に急いでメールを返信した。
[男子から殴られませんでした。みんな床に倒れちゃいました]
葵が返事を返すとすぐに飛鳥からメールが返ってきた。
[よかった。葵タンに暴力を振るうヤツはチンポが勃起する呪いをかけてあるから。イジメっ子のチンポでも蹴ってやりなさい]
葵は愕然としてメールを見つめた。チンポが勃起する!? なんだそりゃ!? そして飛鳥がメールにチンポと平然と書いてあることにも軽く興奮した。葵は呆然と複雑な心境でいつまでも携帯画面を見ていた。
飛鳥の言う通り、その日から葵を殴ろうとする男子は皆チンポがピーンと勃起し、みんな股間を押さえてうずくまった。からかって蹴ろうとしたり、バカにして叩こうとする度にチンポが激しく勃起するのだ。
葵はガクガク震えながらチンポを勃起させる男子を見つめた。大変だ。僕に暴力を振るうと、相手のチンポが勃起しちゃう。チンポの勃起はバレたくないはずだ。チンポの勃起がバレたら可哀相だ。優しい葵はそう考え、必死にその日は男子との接触を避けた。
下校時間になった。葵はいつも通りクラスが担当する掃除を一人で行った。教室を掃除して廊下を掃除すると、3階と2階の男子トイレも掃除して急いで部活のために体育館へ向かった。
「葵、遅い! 早く台を出しなさい!」
体育館に着くと、卓球部の部長である紺野部長が厳しい声で葵を叱った。葵の所属する卓球部は女子4人、男子は葵だけだ。台の設置も球などの準備も全部葵の仕事だ。
「おいグズ! 何ノロノロしてんの! 早く台出しなさいよ!」
部員が遠慮のない蹴りを葵の股間にぶちこむ。良かった。卓球部は女子4人だ。自分を蹴っても勃起するチンポはない。優しい葵は安堵しながら急いで台を準備した。
「おい、葵」
紺野部長が葵の安堵している顔を睨みつけた。紺野部長は葵と身長もそんなに変わらないのに、物凄い威圧感を放つ。
「お前、なんで安心したような顔してんだ。おい」
紺野は葵の頬をぐりっとつねった。
「いたたた! いたいです部長! ごめんなさい!」
「なんか生意気なヤツだな。女みたいな顔のくせに……おらぁ!」
紺野の張り手がぺシーンと葵の右頬に炸裂した。
「いひゃい!」
非力な葵は紺野の張り手を受けて、呆気なく吹っ飛んだ。
「まぁいい。犬はほっといて練習始めるよ!」
「はーい!」
葵は倒されながらもほっとしていた。良かった。これが男子だったら体育館でチンポが勃起しちゃう。うちの卓球部が女子だけで良かった。葵はそう思いながら一人壁を相手に練習を始めた。女子4人は葵と卓球をしようなんて考えない。葵はいつものように一人で壁を相手に大好きな卓球を練習していた。
部活が終わると、部員の女子たちは後片付けもせずに帰っていった。いつもの光景だ。葵は急いで台やスコアボードなどを片付けると、体育館全部を掃除した。体育館はバスケ部なども利用しているが、掃除は葵の仕事だった。これもいつもの光景だった。
葵は急いで駅に向かった。今日もイジメられたり無視されたり女子に蹴られたりしたけど、男子には殴られなかった。それに彼女である飛鳥に会える。非力な葵は必死に走って駅を目指した。
「飛鳥さん!」
「葵タン!」
飛鳥は嬉しそうに葵に駆け寄った。
「葵タンは本当に可愛いなぁ。こんなに汗かいて。一生懸命走ってきたの?」
「はい! 飛鳥さんに早く会いたくて……はぁ、はぁ……」
飛鳥はうるうるとして瞳で葵を抱きしめた。
「葵タン! 可愛い! もうなんて健気なの!……あら?」
飛鳥は葵の右頬をじっと見つめた。紺野部長のビンタの後が残っている。葵は恥ずかしそうに俯いた。
「葵タン、この頬はどうしたの?」
葵は恥ずかしくて飛鳥の目を見れなかった。女子の先輩に張り倒されたなんて言えない。
「葵タン、ねぇ、葵タン聞いて」
飛鳥はしゃがんで葵の顔を覗きこんだ。
「私は葵タンのどんなことを聞いても嫌いにならないよ。だから、葵タンも私のことを信じて話して」
葵は涙目になりながら飛鳥を見つめた。葵の美少年の泣き顔を見て、飛鳥は胸を尻尾を踏まれた子犬の鳴き声のようにキャイーンと鳴らせていた。葵は飛鳥を信じてぽつりぽつりと語り始めた。
「ぼ、僕はホントにイジメられっ子で、これは女子の部長に叩かれた後なんです……ごめんなさい。ホントに情けないですよね……」
飛鳥はぎゅっと葵を抱きしめた。飛鳥の身長は高い。葵は飛鳥の胸に挟まれるように抱きしめられた。
「許せない………」
飛鳥の声が殺気を帯びた。
「葵タン、ベンチにきて」
葵は飛鳥と共にベンチに座った。
「葵タン、またおでこをくっつけて」
「は、はい……」
「目を閉じて」
「ま、また呪いですか……?」
飛鳥は怒りをこめた視線で葵を見つめた。
「そうよ。こんな可愛い葵タンの顔をぶつなんて信じられない」
葵はまた目を閉じた。飛鳥は葵の目を閉じたのを確認すると何かぶつぶつ呟き始めた。
「………ひさしきぼきぐいこさだてれるこきくこきくおだいうえでこうであれちゅくおおでてつこもんなかわい」
飛鳥のお経のような声が段々大きくなってくる。葵はまたガタガタ震えながらそのお経みたいな文句を聞いていた。
「ぼにょんでぼん!」
飛鳥が大きな声で叫んだ。その声にビクッと葵の体も反応する。
「はい、終わったわよ」
飛鳥が爽やかに笑った。葵は目を開けておずおずと尋ねた。
「あ、あの、今度はどんな呪いをかけたんですか……?」
飛鳥は可憐に微笑んで葵のおでこにキスをした。
「うふふ。それは明日までのお楽しみ」
葵は真っ赤になりながら飛鳥の顔を見つめていた。