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「も、なんなのよ! 天使だかなんだか知らないけど! 死んだあたしにどんな用事があるっての!? あたしを辱めにきただけ!? それともあたしを天国に連れてってくれるのかしら!? そいつはどうもありがとう! さっさと連れてって、とっとと帰りなさいよ!」
なんのかんの言ったところで恥ずかしいことに変わりはない。正直相手の目を見るのも今は辛いのである。今すぐ消えてほしいと言うのが本音だ。
そんな乙女心に気づいているのか、いないのか、少年は突然真顔に戻って手をポンと一つ打つ。
「おっと、忘れていました。別に帰ってしまっても僕は構わないのですが、それではあなたをここに連れてきた意味がありません」
「な、なんなのよ。連れてきた意味って。ははん? さてはここ、すでに天国ね!?」
「まさか。こんなヘンピな所が天国だなんて、冗談じゃない」
ヘンピな所へ連れてこられてしまったようだ。
「天国じゃないの?」
「先ほども言いましたが、ここは絶海の孤島。しかも無人島です」
「無人島?」
「そしてあなたは今日から天使です」
少年は美香子に指をピッと向ける。その指先をまじまじと見つめ美香子はしばらく考える。
やがて答えが出た。
「あ。あたしあんたの言ってる意味が分からないわ」