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 きっと父さん母さんも、今頃泣いていることだろう。あたりまえだ。娘が死んで泣かない親はそういない。

 妹の由佳里はどうだろう。あの子はしっかりしてるから、案外母さんを慰めたりなんかしてるかもしれない。それに二人一緒だった部屋が丸々一人で使えるって、喜んでたりして……。

 あたしの机は誰が片付けるんだ?

 突然不安に駆られる。

 机の中には人に見られたくない秘密の品がいくつか入っているはずだ。

 たとえば、好きな先輩に送ろうと、想いのたけを綴ったラブレター。あれは途中で感情が冷めてしまったもので、未完成のまま机の引き出しに放り込んである。なぜ捨てなかったのだろう?

 そう言えば今年の初め、自らを奮い立たせるためのスローガンを、いくつか毛筆でしたためた記憶がある。確か『自分に負けるな』とか『自分に勝て』とか書いたはずだ。それに、これだけじゃありきたりだから、とかいう理由で『自分を負かせ』とも書いた。その時は「うん。これは一歩踏み込んだね」と自画自賛していたが、冷静に考えてみると何のことやらさっぱりだ。

いつでもすぐに見れるように、あの書も引き出しの中に貼ってある。

 ある意味ラブレターよりもよっぽど恥ずかしい。

 そんなことを心配している間にも、涙はひっきりなしに溢れてくるのだから、本人は漠然としか感じていないが相当悲しいに違いない。

 美香子は少し笑う。

 祖父が亡くなった時は、何か泣けてくるような祖父とのエピソードはないだろうか、と探ってやっと泣いていたような気がする。多分、祖父思いの孫娘を演じていたんだろう。自分のために泣いていたようなもんだ。

 そんな奴は死んで正解かな?

 もう一度笑う。妙に吹っ切れていた。

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