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「くそー! いい気になんじゃねーぞー!」

 山の頂から海の向こうにむかって、自分にしか聞こえない大声を張り上げる。

 勢いよく鼻水をすすった。星が普段以上に多く見えるのは涙のせいか。

 一応失恋ってやつだ。

 恋人だか婚約者だかはたまた奥さんだか知らないが、準一郎にそういう相手がいることはもう随分前から分かっていた。それでもいつかは諦めてくれるのではないかと期待して待っていたのだが。

 彼が相当にしつこい奴であることはこの一年間で学習済みだ。最初火を熾そうとした時も木片同士をこすり合わせる作業を朝から晩まで休まず続けたるような奴だ。他の方法を考えろよ、と口をすっぱくして言ったもんだ。聞こえちゃいなかっただろうが。

「日本に帰ったら、どうせ兄弟で骨肉の争いでもすんでしょうが」

 金持ちと言えば遺産相続とか跡取りとかで問題が発生すると相場が決まっている。

「そんなドロドロした都会のことなんか忘れて、自然のままに生きたっていいんじゃないの? 天使の庇護のもとぬくぬく暮らしたってさ。その方があんたのためじゃん」

 美香子は腰が砕けたように座り込む。

「……違う。あたしのためか」

 一人じゃ寂しいから誰かそばにいてほしいだけだ。たとえその人の一生を台無しにしてでも。

「相手のことなんか考えてないんだ。あたしは」

 これでは天使失格だ。

 美香子はその日、泣きながら一晩を明かした。

 次の日から美香子はしばらく準一郎のそばには行かないことに決めた。どうすることが一番いいのか答えは出ている。あとはその決心が揺らがないようがんばるだけだ。

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