表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/21

15

 美香子は首をひねる。

 もちろん海藻の山から出てきたことは分かっている。引っ張り出したのは美香子本人なのだから。しかしその山を築きあげたのも、他でもない美香子なのだ。全身ずぶ濡れであるところを見ると、海難事故の末この島に漂着した、と考えるのが妥当なのだろうが、人間が砂浜に打ち上げられていたらいくらなんでも気づくし、あんな重いもの海藻と一緒に運んだ記憶もない。ましてや海藻が成人男性を生むわけもない。

「もしかして……」

 美香子の脳裏に、あの少年天使の人形みたいな顔が浮かぶ。

「そうだ、あいつが連れてきたんだわ。こんなことできるのはあいつ以外考えられない。きっとこれはイベントね、ゲームで言えば。このイベントをクリアできれば島から出れるとか」

 どうしてほしいのかはまだ分からないが、これで単調だった島での生活にも多少の彩りがつくだろう。

「……あ」

 気がつけば、男は上半身を起こしうつろな目で、寄せては返す波を眺めている。

 もう大丈夫だろうか?

「……日本の──」

 ──方ですよね? そう聞こうとした瞬間、美香子の言葉を遮るように男が声をあげる。

「ここは……ここはどこだ?」

「ね? 落ち着いて聞いて? ここは無人島で……あ、あたしがいるんだから無人島じゃおかしいのか。えっと、じゃなんだろ。……そうだ! ここは天使の住まう島よ!」

 やけに聞こえのいい場所になった。

 しかし男は、照れて頭を掻く美香子には一切目もくれず、自分の頭を抱えて考え込んでいる。

「確か俺は飛行機に乗っていて……なんか飛行機が揺れだして……墜落……?」

 男は呆然と辺りを見渡す。

「ちょっと、おにいさん?」

その途中明らかに一瞬目が合ったと思ったのだが、男は美香子に気づいていないようだ。

 下半身に絡み付いていた海藻を乱暴に振り払って男は立ち上がる。

「誰か! 誰かいないのか」

 表情に全く余裕がない。彼は本気だ。無視をしているのではなく、美香子の姿が本当に見えていないのだ。

 ついには大声で喚きながら林の方へと走り出す。居もしない島の住民を探しに。

「……そうか天使の姿は普通の人には見えないんだ」

 イグアナ相手では確認のしようがなかった。

「不安だろうな。あたしの時なんかよりずっと……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ