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そして気がつく。

「……うえっ!? なっ!? 人間!?」

 約二ヶ月ぶりの人類との遭遇である。

あたふたと身だしなみを整えるが、上着のボタンがうまくかからない。美香子は胸元のボタン、上から三番目のボタンを最初にかける癖があるのだが、そこでいきなりつまずいいている。なんせ服装を気にするなんて久しぶりのことである。ボタンホールが固くなっているもようだ。

「……うぅう」

 男が小さなうめき声を上げた。こいつは意識を取り戻す気満々である。

「ちょ、待ってなさい!」

 焦れば焦るほど穴はボタンを拒絶する。

ひとまずそこは置いといて他のボタンがかかるか試してみればいいのだが、そんな簡単なことも思い浮かばないほど美香子はパニクっていた。

「~~っあ!」

 勢いあまってボタンが爆ぜ飛ぶ。

飛んだボタンは男のこめかみを痛打しそのままどこかへ消えてしまった。と言うよりそこで見失った。男の目が開いたからだ。

 美香子は極度の緊張にのどを鳴らす。

男は天を仰いだまま目を細めて呟く。

「……暑いな」

 きっと意識がもうろうとしているのだろう。自分がどういう状況にあるのかも分かっていないはずだ。

「……大丈夫、ですか?」

 美香子が上着の前を掻き合わせながら控えめに声をかけるが、男は惚けたような表情で視線を宙にさまよわせるだけだ。しばらくは話などできそうにない。

それにしてもこの男はいったいどこから現れたのだろう?

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