13
敵はまだまだたくさんいるがとりあえず一段落した感じだ。
そこでふと気がつく。
こんな所に溜めといたら満潮の時波にさらわれるかも知らん。
「うあぁ! なにやってんだよあたしは! せめてあっちの草生えてるところまで上げなきゃダメじゃんよ。もう! 二度手間だわ!」
カーッと激しく息を吐きながら海藻の山を蹴り崩してやり場のない怒りを処理する。
「たあぁ……あん?」
何か硬いものを蹴った。昆布やワカメとは明らかに違う感触が足の先から伝わってくる。
山を掘り返してみると中から白っぽい棒のようなものが顔を出す。
「……アンだこれ?」
人間の腕によく似ているが、露出しているのはほんの一部で、引っ張り出さないことにはそれが何であるか判断することは難しい。握ってみると表面はひんやり冷たく湿っており、中心の方で何かがかすかに脈打っているのを感じる。
「うわなんだこれ。気持ちわる」
気持ちの悪いものを掴んでいると不思議とテンションが上がってきた。
美香子は海藻に絡まったそれを嬉々として引っ張る。重い。何か知らんが大物だ。まるで人一人を引きずっているような……。
「て、これ人間じゃん!」
腰から下はまだ海藻に埋もれているが、もう分かる。海藻の山から漏れてるそれはどう見てもクリーム色の半袖ポロシャツを着たアジア系の男だった。男は仰向けのまま気を失っているようだ。
「なんか腕っぽいなぁとは思ったけどそぅりゃそうだ! だって腕だもんこれ!」
上がりきったテンションの勢いで掴んでいたその腕を砂上に叩き付ける。
「あぁぁ」
酸欠のためふらふらとその場に腰を下ろすと、いっきにテンションが下がった。