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「さぁて、次は何しようかな?」
島は中心から山、ほんのちょっと林、そして砂浜の順に形成されている。人の足で一周一時間程度とけして広くないが、これを楽園にするとなると大変だ。
それはさぞかし忙しかろうと思いきや、美香子の生活は基本的に自由だった。
『一日中何をしていようと、最終目的さえ達成できれば構いません。ただし天使らしい行動を心がけて下さいね』
指示はそれだけだった。
学校の自習時間みたいなものだ。自分で課題を見つけて解決していかなければならない。
ほとんど行き当たりばったりで島の動植物を繁殖させてみたりしているが、これで島が豊かになるのか少し不安である。
しかしどれほど不安でも動かないことにはこの島から出ることはできない。自習みたいに居眠りしてれば終わりの時間がくるというものではないのだ。
腹が減らないというのがせめてもの救いだった。飢え死にの心配だけはしなくていいのである。お化けみたいだ、と思った。それは心配になった。
「浜の掃除でもしようかねぇ」
奉仕活動と言えばゴミ拾い。空き缶やら花火やらは一つも見当たらないが、干上がった海藻なら浜の色が変わるほどある。これを集めれば肥料ぐらいにはなるだろう。
久しぶりに建設的なことを思いついたと、美香子は早速作業を開始する。
作業の邪魔になる上着は腰に巻きつけた。上半身は下着姿ということになるが、気にする必要はない。どうせ誰も見ちゃいないのだ。
「くぅっさっ! なにこれ! ダシの分際でなんちゅうニオイを出すか! うぁ! 手にニオイついたぁ!」
文句をタレながらも作業は順調に進んだ。太陽が西に傾き始めた頃、砂浜に黒い海藻の山が一つ完成した。