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『この無人島を人も住めるような豊かな島にしていただけますか?』
それが美香子に与えられた使命であった。
具体的に何をすればいいのか全く分からなかったが、とりあえず無理だと思った。
『無理でも構いません。あなたが困るだけです。目的が達成されない限りあなたはここから出られないのですから』
目の前が真っ暗になったのを覚えている。無期限の奉仕活動を言い渡されたようなものである。しかもそれを拒否する権利はないらしい。
『誰だって最初は嫌ですよ。かく言う僕も初めは泣いてばかりでした。もう二十年以上も前になるでしょうか。九歳の子供がいきなり世の中のために身を粉にして働けなんて言われたわけですから……。でも大丈夫、いつかは慣れますよ。時間はいくらでもありますからね』
見た目は少年だが少なくとも二十九歳は超えていると言うあの天使は、そんな的外れな言葉で落ち込む美香子を元気付けようとしたものだ。
「せめて話し相手がほしいわ」
しかし彼は天国へ戻ったきり一度も顔を見せていない。独り言が多くなるわけだ。
「元気な子供をたくさん産んでね」
二匹のイグアナにそう声をかけ、美香子は肩を落としたまま岩場をトボトボとあとにした。