死神さんと黒猫
今回の作品は、死神さんと僕の続きです。
続編にしようと思って書きました。じゃあ何で短編にしたかというと、前回短編にしてしまいちょっと続編にするまで時間かけようかなって思ったからです。
一応、黒猫についての話ですので興味でも持ってもらえれば良いですw
今日も僕は学校帰りに公園のベンチで缶コーヒーを片手に彼女を待つ。
来るのか来ないのかもわからない相手を待っている。
どうしてだろう?
昨日まではいつも通りただ空を眺めてリラックスしていたのに……
「はぁ……。今日はもう来ないのかな」
そう何回も会えるわけがないのか……。
昨日の出来事、それはただの会話だった。
だけどそれはとても不思議で、とても信じがたくて、だけど少し興味が沸いた。
そんなことを思いながら缶コーヒーのプルタブを引いた。
カシャッっと言う音を立て、缶コーヒーのふたが開いた。
開いたコーヒーに口を付け中のコーヒーを半分まで一気に飲み干した。
落ち着いてきた。
今日も糸が見える。
いつものように白い糸だ。
視界を空へ向けようとすると黒い影が目を横切った。
昨日も同じように彼女が僕の目の前を横切った、一瞬彼女かと思ったけどあまりにも小さく黒かった。
「にゃあ~」
猫の鳴き声?
振り向くとそこには真っ黒な猫が居た。
猫……、僕は猫が苦手だ。
近寄るんじゃない。
そんなことを思っていると猫が少しずつ近づいてくる。
「うわぁ、来るな」
つい声を出してしまった。
恥かしい。
いつも猫が近づく度に拒絶反応してしまう、おまけに涙まで出てきてしまうのだ。
決してアレルギーというわけではないが、子供の頃からずっと同じなんだ。
泣き出した僕の目の前を猫が通り過ぎ、数メートル先で止まった。
「キミ……泣いてるのか?」
聞き覚えのある声。
声の方を向くとそこには昨日の彼女が立っていた。
みっともない姿を見せたくなく、涙を裾で拭いなんとかいつも通りの顔をして振り向いた。
「今日も来てくれたんだ」
「あぁ、少し興味があって」
「興味?」
「キミにだよ」
「僕?」
不思議だ、彼女が僕に興味を持つ。
僕はただ少し話をしただけだ、何か特別な事をしたのでもなく特別な存在というわけでもない。
そんな僕に何故興味が沸くのか、今の僕には理解できなかった。
僕はというと、彼女に興味があった。
死神という存在。
僕は彼女の死神という存在に惹かれたのかそれすらもわからない。
ただ、僕は彼女に惹かれたことだけはわかった。
だから今日も僕はここで彼女を待っていた。
「そう、キミだよ」
「僕は別に興味を沸くようなことなんて何もないと思うけど……」
「そんなことはない、現にボクはキミに興味がある」
「興味って、僕の何に興味があるっていうの?」
彼女は昨日と同じように俯いてしまった。
いったいどんなことに興味があったんだろう?
「にゃ~」
僕が考えていると、さっきの黒猫が声を出した。
「エミル…」
彼女から名前と思われる言葉が口から零れ出た。
その言葉と同じくして黒猫を彼女が持ち上げる。
「エミル?」
「そう、この子の名前」
「その黒猫の名前、エミルって言うんだ。もしかして飼い猫なの?」
「飼い猫ではない」
飼い猫じゃないのに名前があるのか。
もしかして捨て猫なのか?
「それじゃあ捨て猫なの?」
「それも違う、彼女達はボク達死神の弟子なんだ」
「弟子?」
弟子って、もしかして使い魔のようなものだったりするのか。
それに、死神の弟子とはどういうことなんだ?
死神という存在がますますわからなくなってきた。
「彼女達はボク達の前世なんだ」
「前世?」
「ボク達死神は、元々黒猫だったんだ」
「死神が黒猫?」
死神が黒猫ってどういうことなんだ?
それに死神が弟子という回答にもなっていないし、もっとわからなくなってきた。
頭の中で整理が付かない。
「キミ達は彼女達がどういう存在なのか知っているかい?」
「黒猫の存在?」
ただの猫じゃないのか?
「そう、彼女達はボク達の候補なんだ」
「死神の候補?」
「キミ達は黒猫が普通の猫だと思っているのかい」
「黒猫は普通の猫じゃないの?」
確かに黒猫は不幸の象徴と呼ばれていた時があった。
僕もその被害者ではあるが、今は思い出したくない。
黒猫が不幸の象徴以外は何も知らない。
「黒猫とは、ボク達が死ぬ前の姿」
「それって、黒猫が死ぬと死神になるってこと?」
「そう……だけど、ボク達になれるとは限らない」
「どういうこと?」
「ボク達は厳選された存在なんだ。死神が黒猫を選び、死神候補にする」
「じゃあ、死神に選ばれた黒猫が将来死神になるということ」
「そうではない、そこでは厳選されただけ。実際に死神になるかは黒猫達次第なんだ」
黒猫とは死神になる可能性があるということ、但し厳選された一部の黒猫のみということがわかった。
ただ、黒猫には他にも秘密がありそうだ、それが何なのか僕は想像できない。
「黒猫達次第って?」
「考えてもみたまえ、全ての黒猫が死神となった場合ボク達がこんなに少ないわけがない」
「少ないの? 僕は君以外見たことないけど」
「あぁ、ボク達は試験に合格しなければなれないんだ」
「試験?」
死神の試験か、確かに興味ある。
どういう試験なのか、何を試されるのか、まったくわからない。
「試験は各自違うものを受ける、それは黒猫を弟子にした時の契約から始まっている」
「契約?」
「あぁ、ボク達は弟子になる際に契約をする。その際にどのような契約をするかは彼女達次第」
そう言って、彼女は黒猫の頭を軽く撫でた。
黒猫もにゃーと泣いて気持ち良さそうにしていた。
「キミはどんな試験を受けたの?」
「ボクのかい?」
「そう、キミはどんな試験だったの?」
「忘れてしまったよ」
「忘れる? そんなに昔のことなの?」
「キミたちと違ってボク達は時間軸がないんだ、だから記憶に囚われない」
「時間軸?」
時間軸ってなんだろう?
「キミは猫達が何故気ままなのか知っているかい」
「いや、知らないけど」
「猫は同じ時代の同じ場所に留まることはしない、過去・未来そして現在を心が行き来するんだ」
なにいってるんだろう?
過去や未来に行けるとか、タイムスリップのことを言っているのか。
「ボク達は自由に過去に行き、自由に未来へ行ける」
「それはつまり、気持ちがそのままで過去・未来・現在を行き来するから気ままなように見えるの?」
「それがボク達なんだ、だから何時どこで何があったかなんていちいち覚えてるわけがない」
そういうことか。
例えばさっきまで暑かったのに急に冬に行ってしまうとか。
そういう時、季節感覚や時間軸なんて誰だって覚えてるわけが無い。
そういう気持ちなんだろう。
「いつかキミに話す時が来るかもしれない」
あれ、今いつかって……
もしかして覚えてるのかも知れない。だけど僕はそれ以上追及することはしなかった。
追求してしまうと彼女は二度と僕の前には現れない気がしたからだ。
「じゃあ、その時が来ることを楽しみにしてるよ」
「さて、今日もボクは行くよ」
「あ、待って。僕は穂華って言うんだ、君の名前も教えて欲しいんだけど」
そう言うと又彼女は俯いてしまった。
顔をすぐに上げ、決心したかのようにこちらを向くと彼女の口が開いた。
「名前など無い」
「名前が無い……そんなわけない。」
「じゃあ、キミの好きなように呼んで欲しい。それでいい」
僕の好きなようにって言われても、それに名前が無いって。
元々黒猫だったんだから名前はその時のものがあるだろうし、どうして隠す必要があるのか僕にはわからない。
ただ言えるのは、彼女は本当の名前を知られたくないということだけだ。
なら、僕が思いつく名前……
「クロ……、クロってのはどう?元々黒猫だったのならいいと思うけど」
「キミがそう呼びたいならそう呼んでくれて構わない」
「じゃあ、今度からクロって呼ぶね」
そう言った後、彼女に一本の白い糸が近づき腕に絡みついた。
その糸は灰色になり、次第に黒くなっていった。
黒い糸は死の直前の色、ここ最近では滅多に見ないけど。
つまり、この近くで誰かが死ぬということだ。
「さて、仕事の時間だ。今日も楽しかったありがとう穂華」
「こちらこそ楽しかったよクロ。また、会えるかな」
「キミが望むなら、ではまた」
そう言って彼女は目の前からすっと消えた。
どうしてだろう、僕はまだ彼女の名前と死神という存在ということしかわからない。
だけど僕は徐々に彼女に惹かれていくのを心の片隅で感じた。また会えることを願って。
黒猫って可愛いですよね。
でもどっかの宗教かなんかで黒猫は不幸の象徴とか言われたりしてたので、ガッカリだよ。
ってことで、今回も興味持ってもらって感想もいただければ幸いです。