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第7話 予期せぬフクヘイ


朝の友人との至福(?)なひと時は無情にも過ぎ去り、俺は教室前に到着していた。出入り口付近でモタモタしていてもしょうがないため、入室する。


一歩目を踏み入れ、教室を見渡すと姫井吉乃は既に着席していた。


いつも通りつまらなそうな顔で、本のページをめくっている。


(...相変わらず絵になるな。...っ!?平常心...。)


俺の警戒はいつの間にか解かれ、つい見惚れてしまっていた。姫井吉乃の暴力のような美しさにはこれだけ警戒していても徒労にしてしまうほどの効力を持っているらしい。


俺は両頬をはたき、気を引き締め席に向かう。


「おはよう。」


早速会話の口火を切ったのは、吉乃だった。


席を横切る俺に気づいた彼女は、本に目を向けながら軽い挨拶をしてきた。


「!?...あぁ、おはよう。......。」


気を引き締めていたはずなのだが、挨拶1つでひどく動揺してしまう。が、挨拶は終了したため席に着く。


(朝からこんなんで先が思いやられるぞ俺。っていうか一人の女子を前にこうまで平常心をぐちゃぐちゃにされてちゃ、順当に屍ルートを辿ってるんじゃ...。)


「......。」


「......。」


しばらく沈黙が続く。俺はなんとなく世間話くらいするものだと考えて勝手に焦っていたが、挨拶より後の会話が全く無いところから。これ以上彼女は会話をするつもりはないのだろう。


(ふぅ...。ひとまず朝のミッションはオールグリ...)


「ねぇ。」


「!?な、なんだよ、」


撤回だ。まだミッションは終わっていなかった。


気が動転し、返事が敬語になったうえに、声が裏返ってしまう。そんな俺の様子に呆れたのか、彼女の方を見ると、こちらにジト目を向けられていた。


何か気に障ったのだろうか。俺は自分の教室に入ってからの行動を思い返し原因を探る。本当に新しいクラスになってから俺の感情はとても忙しい。


「アンタってさぁ、毎度のことそんな感じだけど、なんなの?」


「えぇ...、なんなのって言われましても...、?」


チンピラのような質問に新太は動揺する。なんとなく気に入らなかった的なあれだろうか?


「この一週間、私、妙にアンタにキョドられてる気がするんだけど。誰にでもそうなわけ?...でもたまに休み時間に来る他クラスの人とはまともに喋れてるよね?私に対して何か気に食わないことでもあるわけ?」


新しいクラスになってから一週間、姫井吉乃とは隣の席ということもあってか、度々会話(?)を交わす仲になっていた。基本的には彼女からきまぐれに声をかけられるのだが。


(ていうか、田中の奴、全く認知されてなくないか?)


彼女の口ぶりから、田中は同じ中学と言っていたが、まるで他人である。普通顔くらい覚えられてそうだが。


しかし、どうやらこの一週間の彼女に対する対応が全体的に不味かったようだ。ジンクスにハマらないように警戒していたのだが、それがあまりに過剰で彼女の気分を害していたのだろう。


「...気に入らないとかそういうのじゃなくてさ。俺の性分的な、重度な人見知りなのかも...。」


「かもって...、そのキョドリ具合で未だにハッキリ自覚できてないって結構ヤバいんじゃない?」


「そ、そうかもな...、ははっ。」


相変らずの棘のある物言いに、ぐさりと刺さりながらも俺は渇いた笑いをしながらがそう言うと、彼女はそれ以上の言及はしてこなかった。少し苦しかったかもしれないが、一応はこの説明で納得してくれたようだ。


だが一週間も経過し、ボチボチ会話も行っているのに未だこのようにキョドっていては、気分を害されても文句は言えない。


引き続き警戒するとしても、少し言動を少し見直さなければならない。


会話が一段落し、俺は荷物を整理する。が、それ以上のやることがない。


先程話しかけてきた彼女は目線を本に戻しているため、これ以上会話を続けるつもりはないのだろう。


ここで友達の一人もいればそいつのもとに暇つぶしにでもと話しかけに行って時間を潰せるのだが、あいにくとこの一週間、俺は姫井吉乃に怯えていて、特に何も起こすことなく一週間を過ごしてしまったのだ。


俺が姫井吉乃に気を取られている間に、ぼやけていたクラスの輪の輪郭はハッキリと形を持ち始め、俺が付け入る隙間は限りなく0に等しかった。


要するに、俺は本格的にぼっちの道を歩き始めてしまっているのだった。


変なジンクスに巻き込まれるだけじゃなく、孤独な学生生活を送る羽目になるなんて、何か特大のバチが当たっているのだろうか。


そんな風にぼんやりと考えていると、後方から人の気配を感じる。


この唐突な感じ、覚えがある。


(...田中の奴か、現れ方に味占めやがって!!)


深刻に悩んでいる俺の都合を一切考えずに、性懲りもなくちょっかいをかけに来る田中にカチンときた俺は、文句の一つでも言ってやろうと眉間にしわを寄せ、勢いよく振り返り目力を強め怒鳴るように文句を言う。


「...お前っ、またこの悲しすぎる現状を茶化しに来やが...った...の、ですか...?」

 

が、そこには全く予想だにしなかった人物が立っていた。


「...あー、話しかけちゃいけない感じ...だった...?」


「...委員長...?」


空気が凍った。もしかしたら俺の平凡ですらなかった学園生活は終わったのかもしれない。思わぬ伏兵によって。


「そう!才色兼備と2年4組を司る美少女系優等生ちゃんこと、上条香織よ!!ジャジャーン!!!」


「っ......、」


俺は言葉を失った。


まさかあの上条香織に話しかけられるとは思わなかったからだ。



次回、またまた姫井吉乃が動く―――――!?

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