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第6話 決断するシキジョウ


燦々と照りつける朝日に肌をさらしながら、俺はトボトボと通学路を歩く。一週間前の登校時の高揚した気持ちはどこへ行ったのか。


新クラスがスタートして一週間、登校の際は憂鬱のどん底に沈みながら足を持っていかれないよう進み、下校の際は朝の憂鬱が嘘のように軽快なステップを踏み自宅へ向かう。


理由は明白だが、ここ一週間、俺はこの対処法が分からずにいた。


いつまでも学校に着かなければいいのになんて思いながら登校するが、目的地に向け足を勧めていれば嫌でも近づいていくもので、並び立つ住宅の屋根の上からは校舎が顔をのぞかせている。


どんどんと深くなる憂鬱に浸りながら、俺はぼんやりとしていると、


「おっす真鍋!!!」


「ふぇあぁ!???...お前か、」


突然の後方からの攻撃に、今まで出したことのない情けない声が出てしまう。振り返るとやはり、唯一の、俺の友達である田中壮太が立っていた。


「いつも突然現れやがって...、」


「よそ見して歩いてっからだよ。どうしたんだよ、校舎の方をボーっと眺めて...ん、あぁ、あれか。」


田中は俺の視線の先を見ると、何かを察したように頷いた。しかし俺からするとただボーっとしていただけなため、田中が何に納得したのか分からない。


「?なんだよ、あれって...?」


「あれだろあれ、女子バスケットボール部の全国大会出場決定のニュース。いやぁ、同じ学校の生徒として誇らしいよな!」


俺は再び屋根の上からちらりと見える校舎の方を見ると、住宅街の中からでもしっかり見えるよう、『祝女子バスケットボール部 全国大会出場』、と書かれた垂れ幕が風になびいていた。


「前からあったかあれ?」


「いや、掲げられたのは最近だな。うちの女バスは強いからなぁ。そんでもって聞いた話なんだけどよ、今年入ってきた新入生の中にゃ、何やらとんでもなく上手い子がいるらしくてな?上級生もレギュラーの座を奪われんようにと必死らしいぜ。すげぇよな。うちの女バスは...。」


どうやら壮太は、新太がこの垂れ幕を見ていたのだと勘違いしたようだ。


「...ちげぇよ...、そんなめでたいニュースに感銘を受けているように見えたのか?俺の背中は...」


「...いや、どっちかっていうと俺には、隣になると絶対に惚れてしまうというジンクスを持つ子の隣になってしまい、死体になることが確定してこの先どうしよう...って境遇に身を置いているような奴の背中に見えたな。」


「全部分かってんならちょっとくらいいたわってくれてもいいんじゃねえの!?」


俺は心の底からの叫びを放つが、田中は相変わらずひょうひょうとした様子のため、俺の言葉はコイツには全く届いていないらしい。


しかしコイツの言う通り、クラス替えから一週間がたった現在、俺は一つの大きな悩みに苛まれていた。



そう、姫井吉乃である。


ここ一週間、俺は姫井吉乃の持つジンクスに頭を悩ませていたのだった。それは、隣の席の男子を惚れさせてしまうという恐ろしいジンクスだった。


俺は別に、送っていて楽しい、後から思い出して楽しい、二度楽しいような淡い青春時代を紡いでやりたいなんて欠片も思っていない。どこにでも転がっているような、月並みな高校生活が送れればそれで充分なのだ。


性欲や情欲に負けて身の丈に合っていない青春を掴もうとし躍起になった挙句、盛大にコケて一生消えない傷を負ってしまうなんてことは御免なのだ。


そんな醜態をさらし、姫井吉乃のジンクス被害者一覧に名を連ねようものならば、俺は2年生どころか卒業まで悪名がとどろき、友達は本当に一人もできずに終わってしまうだろう。


そんなものは身の丈以下だ。


だが田中の話通り、席替えのたびに隣の席の男子が全員姫井吉乃を好きになっているのなら、その噂をかねてから知っていて、自分は絶対にそんな惨めな思いはしないと心に決めていた者もいるだろう。


しかし抵抗も虚しく、ジンクスの餌食になってしまったのだろう。抵抗する意思ごと理不尽に青春を捻じ曲げられる。酷い話だ。


「まぁ、さっと告ってさっとフラれなさんな。夢中になっちまう前にフラれておけば、後を引くこともねぇんじゃねえのか?」


「他人事だと思って適当なこと言いやがって...。」


「だって他人事だし。」


田中は俺に他人事だからと雑なアドバイスをするが、中学の頃から姫井吉乃を見ている田中がこう言っているということは、本当に抗いようはないのかもしれない。


「クソ野郎め。ていうか、中学から同じなら、散っていった奴らの中に一人くらい友達とかいないのか?」


「...数人はいたよ、もちろん漏れなく全員フラれてるわけだけど。ほら、フルときあんな感じだろ?人によるけど、めちゃくちゃ後を引いて女性恐怖症になってるような奴だっていたな。」


「そうか。式場はどこにするかな...。」


「おいおい、ずいぶんポジティブだな、この状況で成功する未来だけじゃなく結婚式の場所まで考え出しちまうとはなあ。」


「葬式場だよ...、玉砕後にクラスメイト達からいじめられて身投げするところまで見えてんだよ俺は、」


「...おいおい、冗談でも笑えねぇよ真鍋、」




次回、友達作り絶好のチャンス降臨!?

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