25. 5 【幕間】ゼンリョクジャー第26話『ダラケルド光線!? 奪われたやる気!』より
街は不自然に静まり返っていた。
空気はどこか甘く、重たい。まるで世界そのものが昼寝を始めたかのようだ。
その中心に立つのは、巨大な黒き将軍――ダラケルド帝国のバーロウ将軍。
「バハハハハ! 怠惰こそ、世界を救う唯一の真理! 我がダラケルド光線で、お前たちのやる気を根こそぎ奪ってくれるわぁ!」
叫びとともに、紫色の閃光が走った。
ビルの壁面をえぐり、地を這うように伸びる光が、ゼンリョクジャーを飲み込む。
眩しさの中、次々と悲鳴が上がる。
「だ、だめだ……!」
イエローが崩れた。全身から力が抜け、口調まで緩んでいく。
「なんかもう……がんばらなくても、よくない? 今日の飯はコンビニで……いや、喰わなくてもよくない……?」
ピンクが膝をつく。まつげの影が揺れ、瞳の光が薄れていく。
「頭がぼんやりしてきましたわ……治療……? 寝てれば治ります……」
ブルーの声も震えていた。
「脳波に異常……活動意欲が……低下している!」
膝をつき、頭を抱えた。
「解決法がわからない……1+1しかわからない……ッ!」
理論派の彼が焦るとき、それはつまり最悪の状況を意味している。
そして、光線は――レッドを直撃した。
「レッドォーーー!!」
ブラックの叫びが響く。
過去のトラウマで喋れなくなったと説明していたゼンリョクブラックーー黒野しずく。
男だと言ってチームに加入したはずのブラックは、甘やかな少女の声をしていた。
だが、今そのことを問う余裕は皆になかった。
バーロウ将軍がレッドに向かって放ったダラケルド光線の爆煙の中、時間が止まったように感じた。
あの男の太陽のような笑顔が、もう二度と見られないのでは――誰もがそう思った瞬間。
「……ふう」
煙の中から、いつもの声が響いた。
「腹、減ったな。さっさとブッ飛ばそうぜ!」
敵も味方も、全員が言葉を失った。
「な、なにぃ!? 我が光線が効かぬだと!? 貴様、いったい何者だ!」
バーロウ将軍の咆哮が空気を震わせた。
「俺か?」
レッドは肩を回し、白い歯を見せて笑う。
「ただの全力バカだよ!」
炎が拳に宿る。
「ゼンリョク――クラッシュ・バーンッ!!」
轟音。爆炎。
次の瞬間、バーロウ将軍の巨体は空へと吹き飛び、「怠けることも才能なんだぜー!」と吠えながら夜空の一点に溶けた。
あたりに静けさが戻ってきた。ダラケルド光線の効果から解放されたメンバーの顔も穏やかになっていく。
だが、その静寂の中でブラックがゆっくりと口を開いた。
「……ダラケルド光線」
その声は、まるでずっと胸の奥で封じていた秘密を吐き出すようだった。
「正式名称は、ヤミウイルス拡散兵器、というの」
仲間たちの視線が一斉に彼女へと向かう。
「私の本名はシズク・ダラケルド……そのウイルスに滅ぼされた国、ダラケルド王家の生き残りよ」
風が止まる。
ピンクが息を呑み、イエローが顔を上げる。ブルーはブラックの声が推しの声優“ここあタン♡”であることを知り、震えていた。
「ウイルスは、病みを拡げて、人のやる気を食べる。希望を、夢を、未来を――。でもね、ヤミエネルギーを持つ人間には、効かないの」
「ヤミ……?」ブルーが問い返す。
ブラックはゆっくりと、レッドの方を見た。
「そう。闇でも病みでもない、“止み”。折れない心、止まらない魂。カケル、あなたの中にはそのヤミエネルギーが流れているの」
レッドはぽかんとした顔で自分の拳を見つめた。
「炎使いの俺が……ヤミエネルギー?」
「ええ。あなたこそが――この世界を救う鍵なの」
沈黙が訪れた。
レッドはその沈黙を破るように、拳を握りしめ、太陽のように笑った。
「鍵だろうが伝説だろうが関係ねぇ! 俺は仲間を守るために、全力を出すだけだ!!」
その言葉に、誰もが少しだけ笑った。
戦いの後の空気が、ほんの少しだけ暖かくなった。
――そして、ブラックの瞳の奥で、封じられた王家の紋章が淡く光る。
まるで、それが新たな運命の扉の鍵穴を照らすように。
~♪予告SE
熱血ボイスのナレーション:
「ダラケルド光線を跳ね返したゼンリョクレッド! だが、新たな試練が迫る! 次なる敵は、ヤミウイルスを操る闇の姫ネムリスだ!!」
映像カット:
夜の湖畔に広がる黒い霧。
空を裂くように降り立つ漆黒の少女――その瞳は紅く輝き、空気が震える。その華奢な身体は人をダメにする着る毛布に包まれていた。
「やる気? 全力? そんなものは全て幻よ」
レッドが立ち向かうも、布団の誘惑に負けて動けない。ブルーが震える手で計測装置を握り、ピンクがその背を支える。全裸になったイエローが叫び、ブラックが涙をこらえて弓を引く。
熱血ボイスのナレーション:
「闇に抗え、ゼンリョクジャー! 止まらぬ心が、未来を照らす!!」
全員:
「全力出さずに、何がヒーローだッ!!」
(続)




