16. 5 【幕間】ゼンリョクジャー第18話『涙はスパイス! 友情フルコース』より
戦いを終えたゼンリョクジャー達は、キッチンカー型機械獣『フライドランカー』の残骸を背に帰還した。
ホームベースにもなる味方ロボ『ゼノン』の食堂は、いつものように温かい灯りに包まれている。
「まったくよぉ! 食い物を粗末にする奴は許せねぇよ。ニンジンを見習え! 皮にも栄養たっぷりだ!」
文句を言いながらゼンリョクイエローがテーブルに皿を並べていく。
季節の野菜をピュレにして泡状にしたソースが揺れる《花咲く春野菜のエスプーマ仕立て》。上にはエディブルフラワーが可憐にあしらわれ、柑橘とハーブがふわりと香る。
食べ盛りのメンバーに、今日もメインは2種だ。
《牛フィレ肉のロースト 炎とトリュフが香るジャポネソース》《魔金目鯛の低温コンフィ 花椒と柚子の調べ》は大皿に美しく盛られ、好きなものを好きなだけ食べられるように仕上げられていた。
食後には薔薇の花弁のようにすくいとられたフルーツのシャーベットが冷えている。
そのどれもがイエローーー黄島タクマの大きな手から生まれたものだ。
無骨なグレーのつなぎにワークブーツを合わせた軍人のような佇まい。顔はゴリラに似ていて、少しおっちょこちょい。今日の戦いでも、思わずドジを踏んでしまった。
それでも料理の腕は天才級で、仲間達は心から舌鼓を打ち、夢中でフォークを進めた。
「やっぱタクマの飯はすげぇな!」
レッドーー火神カケルが豪快に笑い、口いっぱいに肉を頬張った。
「そうですね。でも今日の戦いは、少しおドジでいらっしゃいましたわ」
お嬢様育ちで医学生のピンク、春風モモカが目を細めてチクリと呟く。胸元のふくらみの大きなパールグレーのセーラー服がトレードマークだ。
「うっ……そ、それは」
ピンクの指摘に黄島タクマーーイエローは耳まで真っ赤になり、言葉を詰まらせる。
フライドランカーの高温油噴射攻撃を受け止めようとして全身ツヤッツヤのテラッテラの油まみれになり、慌ててゼンリョクスーツを脱ぎ捨てた挙句に全裸で床の油で滑って頭を強打して豪快に転倒。今日もピンクの治療の世話になっていたのだ。
ちなみにピンクはここ数回の出番で、イエローの怪我を治すことしかしていない。毎回脱ぐお色気担当が筋骨隆々のイエローであるという創作者玄蕃白の特殊性癖に巻き込まれている被害者である。
だが、次の瞬間。
「でもよ、今日のお前は間違いなく強くなってたな!」
炎を宿したような紅い瞳でカケルが真っ直ぐに言い切った。
「ど、どこらへんが……?」
確かな言葉を欲しがって熱い視線を向けてくるイエローの前で、記憶を探るように目線を左上に泳がせたレッドは、やがて考えを放棄したように満開の笑顔で笑った。
「成長してるよ、タクマ。俺が保証する!」
その言葉は、タクマの胸を撃ち抜いた。
何より欲しかったものーー仲間として、ヒーローとして、レッドに認められること。
幼い頃からずっと背中を追いかけてきた憧れの存在が、自分を見てくれている。
喉の奥が熱くなる。視界がにじむ。
「……っ!」
慌てて顔を背け、イエローは拳で目をゴシゴシと拭った。ピンクがそれを見てナプキンを優雅に差し出す。
(やっと……オレも、レッドの、みんなの隣に立てるんだな!)
ブルーとブラックはそれを黙って見守っていた。
小さく笑みを交わせば、胸の奥に温かいものを覚える。
笑い声と料理の香りに包まれながら、5人の絆はさらに強く結ばれていった。
〜♪予告SE
熱血ボイスのナレーション:
「仲間と食卓を囲むゼンリョクジャー! けれど平和は長くは続かない! 次に現れたのは、巨大なお祭り屋台が暴れだす“機械獣ヤタイダー”だッ!」
映像カット:
夜空に提灯が灯り、暴れる屋台型の怪物。浴衣姿の人々が逃げ惑う。
レッドが叫び、ブルーとピンクが背中をあずけ合い、ブラックが弓を引き、イエローが拳を握る
熱血ボイスのナレーション:
「力を合わせろ、ゼンリョクジャー! 戦いの後の笑顔を守るためにーー」
全員:
「全力出さずに、何がヒーローだッ!!」
(続)




