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大江戸オブ・ザ・デッド〜魔法全盛の江戸で、弓しか取り柄がない私ですが兄を探してます〜  作者: 森戸ハッカ
第一章:水の段『水は道なり。行くべき先を拒まぬ』

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1. プロローグ〈1〉/玄蕃白

『タイタンの幼女』という小説でハーモニウムという架空の生き物が


“Here I am”


と呟く。


 この一言は神の象徴なのです、と牧師は言った。では神はそこにいて何をしてくださるのかというとーー


“I know”


 常にそばにいてあなたのつらさを知っている。それが宗教です、と。



◆◆◆



 玄蕃(げんば)(ましろ)は区切りのいいところまで書き終えてペンを置くと、伸びをしながら大学時代のそんな記憶を思い出していた。授業を担当していた牧師の顔は丸眼鏡しか覚えていないが、記憶に残る言葉がいくつもある。


 オレンジ色の髪、灰色の瞳。端正な顔立ちだが、どこか野生味を秘めた奥行きを感じさせる顔が記憶を探るように遠い目になった。瞳の奥に宿る鋭さがただの優等生では終わらせない存在感を放っている。


 玄蕃が大きく息を吸い込むと、ベルガモットとアンバーの深いアロマの香りがした。


 個人的に愉しんでいたものだが、馴染みのメゾンから商品化したいという依頼が来ていたのを思い出す。返信を忘れないよう、ノートの表紙に付箋でメモを残しておく。


 デスクから立ち上がり、天井まで届くガラスの目の前に広がる江戸の夜景を眺めた。


 高層階の静寂の中、遥か下では無数のヘッドライトが流れ、ビル群の灯りが宝石のように瞬いていた。


 シャンパンゴールドの光を放つ江戸タワーが聳え立ち、遠くには摩天楼のシルエットが闇に溶け込んでいる。スミダ川が銀色の帯となり、橋のライトが水面に映り込んで波紋を描く。


 身体強化を目にかければ、眼下のヨシワラの街並みも見えてくる。


 江戸の雅と東京のギラギラした夜の煌めきの奇跡的な調和。石畳の道には漆黒の雨が反射し、赤と青の提灯が揺れる下を魔力式電飾をつけた着物姿の若者達が戯れていた。


 木造の長屋の軒先には流れるような筆致の看板がかかり、その上ではホログラムの芸者が舞い踊る。


 巨大な五重塔のシルエットの表面には無数のネオン文字が流れ、商家の屋根には金色の鯱とイルミネーションが共存している。


 そこに広がるのは、日本人だけが違和感を持てる日本を模した世界。


「ーー今日も“江戸パンク”だねぇ」


 魔力仕掛けのコマーシャル大凧が目の下を通り過ぎていく。電子音と三味線の混ざり合ったジングルが微かに耳に入り、玄蕃は微笑んだ。今日も世界が美しい。


 ーー続きを書こう。


 この愛すべき世界を守った者達と、神を殺し、新しい神を得た子供達の物語を。

 

 

 

 

 

 

 


改めまして、森戸ハッカです。


本作は『転生DKの帰還』に続く

バベル王国シリーズ第二部となります。


舞台はゾンビだらけの江戸、

主人公は「普通の娘」。


闇属性だったり、男装してたり、

なぜか人類最強に溺愛されたりしますが、

たぶん、普通です。


前作未読でも問題ありません。

気になったところから、

どうぞ気楽にお読みください。


それでは、

大江戸オブ・ザ・デッド、開幕です!


☆もし少しでも「いいな」「続きを読みたい」と感じていただけましたら、ブックマーク・評価・リアクションをいただけると、作者が全力で喜び、次の物語を書き始めます。

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