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〈クロマグロ中トロ一貫 290円〉
再び三皿を注文した少女の元にまず届いたのは、ちょうどこの回転寿司チェーンで期間限定フェアをやっていた中トロでした。
少女は回転寿司に来ても、これまでマグロは赤身か赤身のヅケ、びんちょうしか食べたことがありませんでした。なんでも好きなものを食べなさいと母親に言われても、赤身やびんちょうなどの倍以上の値段がする中トロは、遠慮してとても頼めなかったのです。それがこの日はたった一貫で290円のクロマグロの中トロ。彼女にとって、これは大変な冒険でした。
少女ははやる気持ちを抑えながら、配膳レーンから中トロの載った皿を手元に置いて、
――薄っ!
心の中で叫びました。
――ネタ薄くない? タブレットのメニューに載ってる写真のやつと違くない? え、これ正しい厚さなの? これ一貫で290円? マック食えんじゃん! あれか、やったか辰寿司。経費削減か。利益至上主義か。これ290……私がアルバイトで二十分働いてようやくもらえるお金じゃん。はい吹っ飛びました。私の二十分吹っ飛びました。
しかし他にどうしようもなく、仕方なく中トロにワサビと醤油をつけました。
――しょうがない、とりあえず食べよう。……えっ、うまっ! なにこれうまっ! 今まで食べてきたマグロと違う! 甘い! 脂がとろける! 利益至上主義なんてディスってごめんなさい、これが計算されたネタとシャリのバランスだったんですね!
少女は感動すらしながら290円の中トロをじっくり味わい、飲み込みました。
〈クロマグロ大トロ一貫 380円〉
――とうとうやっちゃいました私。いっちゃいました大トロ。家族で来たら絶対頼めない一貫380円。いいんだろうか? こんな贅沢していいんだろうか? いやいいんだ、私がんばったもん、仕事がんばったもん。レジ打ちが遅くて怒られ、オーダーを間違えて怒られ、なんとなくぼーっとしていると怒られ、でも一ヵ月我慢して働いたもん。これくらいいいよね。
――ネタが薄いのは中トロと一緒。問題ない。中トロよりも色が薄いな。それだけ脂が乗っているってことか。さてさて、ワサビを載せて醤油をネタにたらし……ええええっ? 醤油を弾いた! いま醤油を弾きおったぞ、こやつ! もう一滴……やっぱり弾く! これはあれか、脂が醤油を弾いているのか! 恐ろしい。もはや恐怖すら感じる代物でございますな、お代官様。はてさてどんな味がするのかのう、越後屋。ふふふ。(少女はようやく大トロをほおばりました)――優勝っ!
〈コーンマヨ 120円〉
第二弾の最後を飾るのはコーンマヨです。中トロ、大トロと価格的にかなり調子に乗ってしまったので、ここで自分を落ち着かせる必要がありました。いつも弟や母と食べなれている、軍艦に乗っているコーンを見ると、少女は心が穏やかになるのを感じました。
味は……いつもの通り。素朴なコーンの甘味とマヨネーズのコク。120円。精神的にもお財布にも優しい価格です。少女は満足して二貫のコーンマヨを食べました。




