仲間の獲得
ジークフリートは翌日、早朝から城下町へと足を運んだ。目指すは、街の外れにある奴隷商人の店。街の通りを抜け、ひっそりとした路地に入ると、古びた建物が立っている。
(ここだ……)
店に入ると、カラクリのような音が響き、すぐに店主と思しき男が顔を出した。鋭い目つきをした商人は、目の前のジークフリートをじっと見つめる。
「おや、貴族様……何かお求めでしょうか?」
ジークフリートは冷静に答えた。
「獣人の奴隷を二人、探している。」
「獣人ですか……少々、珍しい品物ではございますが。どのような方をお探しですか?」
商人がジークフリートの目を見ながら尋ねる。ジークフリートは少し考え、少しだけ顔をしかめた。
「戦闘に使える者だ。力がある者を探している。」
商人はすぐに頷き、背後の棚に目をやった。
「なるほど。少々お待ちくださいませ。」
商人が手招きすると、奥から二人の獣人女性が連れてこられた。ひとりは黒い毛皮を持つ獅子のような獣人、もう一人は狼のような模様を持つ獣人で、どちらも目つきが鋭く、戦闘を前提とした体格をしている。
ジークフリートは二人をじっくりと観察した。どちらも身長は高く、強靭な筋肉を持っており、戦士として十分な実力を備えている。
(これで十分だな。ゲームでも暗殺者として暗躍していたが、今は仲間として力を貸してもらわねばならない。)
彼は深呼吸をしてから、商人に向き直った。
「これらの二人を買う。値段を言え。」
商人は驚いた様子を見せるが、すぐに冷静さを取り戻し、冷ややかな笑みを浮かべた。
「さすがに高貴なお方には、お安いものではありませんな。二人で銀貨千枚。お支払いは?」
ジークフリートは財布を取り出し、商人に銀貨千枚を渡した。商人はその額を確認し、納得したように頷いた。
「良い取引でございます。これで、お二方をお渡しいたします。」
ジークフリートは二人の獣人女性を一瞥した。
「君たちの名前は?」
黒毛の獣人が低い声で答える。
「私はリオーネ。」
狼のような獣人は少し戸惑いながらも答える。
「私は、リューシェ……です。」
「リオーネ、リューシェ、よろしく頼む。」
ジークフリートは軽く頭を下げた後、二人を伴って商店を後にした。
その後、屋敷に戻り、セバスチャンのもとに向かう。
「セバスチャン。」
「ジークフリート様、どうなさいましたか?」
「この二人を頼む。戦闘能力を高める訓練をしてやってくれ。」
セバスチャンはその指示に一瞬驚いたが、すぐに表情を引き締めて答える。
「かしこまりました、ジークフリート様。すぐに準備をいたします。」
ジークフリートはその場で軽く頷き、二人の獣人に目を向けた。
「君たちには、ここでしばらく訓練を受けてもらう。力を貸してくれ。」
リオーネとリューシェは、それぞれ軽く頷いた。リオーネは言葉少なに、リューシェは少し緊張した面持ちでジークフリートを見上げた。
「分かりました。」
「承知しました。」
ジークフリートは少し満足げに頷くと、その後ろ姿を見送った。
(セバスチャンに任せれば、間違いなく彼女たちは強くなるだろう。)
その後、ジークフリートは自身の部屋に戻ると、机に向かって計画を練り始めた。
(父親を倒すために、今後どう動くか。)
他の貴族たちとの連携を視野に入れつつ、ジークフリートは慎重に次の一手を考える。
(まずは父親の周囲の権力構造を把握し、弱点を突く方法を考えなければ。)
彼の頭の中では、計画が着々と組み上がりつつあった。