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新たな力と母の登場


ジークフリートは翌朝、父親アンドレアスに促されて、重厚な教会の大広間に足を踏み入れた。周囲には他の貴族の家族たちも集まっている。神殿の神聖な雰囲気が、ジークには少し違和感を与えた。だが、ここで自分の未来を決定づけるスキルが授けられると思うと、心が引き締まる。


「ジークフリート、緊張するな。お前の力なら問題ない」


父親の冷静な声が、ジークを励ます。だが、ジークはそれを聞き流しながら心の中で計算していた。


(「時空間魔法」……確かに、これで俺の力は最強だ。暴走しなければ、誰にも負けることはない)


やがて、神殿の神官が歩み寄ってきた。


「ジークフリート様、準備が整いました。お入りください」


ジークは神官の後ろに従い、儀式のために壇上へと進んだ。周囲の貴族たちが息を呑んで見守る中、ジークは台座の上に立った。


「それでは、スキル鑑定を始めます。ジークフリート様、心を落ち着けてください」


神官の言葉に従い、ジークは深呼吸をして目を閉じた。


次の瞬間、周囲の空気が一変した。目の前に現れたのは、神秘的な光の球。球の中に、次々と浮かび上がるスキルの名前。


「……時空間魔法、最上級」


その瞬間、ジークの体内に異常なほどのエネルギーが流れ込んだ。まるで世界そのものを操れるような感覚――いや、それ以上だ。


「すごい……」


思わず漏れた言葉に、周囲の貴族たちの目が一斉に集まった。


「これは……」


「時空間魔法……最上級!?」


神官が驚き、周囲の貴族たちもその力に圧倒された。しかし、ジークの表情は冷静だ。これが本当に自分の力だという実感が、じわじわと湧き上がってきた。


「これで俺の未来は確定した。だが、まだまだこれで終わるわけではない」


その時、ふと後ろの方で足音が聞こえた。振り向くと、豪華なドレスを身に纏った女性が現れた。顔には薄い笑みを浮かべ、優雅に歩み寄ってくるその女性――ジークの母親、マリーナ・ノーベルクラウスだ。


「ジーク、お疲れ様。ちゃんとスキルを得られたようね」


その言葉は、まるで他人事のように軽やかに聞こえた。マリーナは、ジークの顔をちらりと見てから、そのまま父親の方に目を向ける。


「ゼノン、今日はどうしても私のショッピングがあるから、早く終わらせてくれる?」


ゼノンは無言で頷き、マリーナは満足げに微笑んだ。


「ジーク、あなたも私の後にすぐに来てちょうだい。お金を持っていない貴族なんて価値がないんだから」


その言葉にジークは少しだけ眉をひそめたが、すぐに冷静さを取り戻す。


(やっぱり、この母親もそうか……。貴族以外の者は人間と思っていないのか)


マリーナの態度に不快感を覚えたが、ジークは深く考えずに答えた。


「わかりました、母上。すぐに行きます」


その返答に、マリーナは満足げに頷くと、再びゼノンに視線を向けた。


「さて、今日はどこの商店に行こうかしら。お金はしっかり持ってきてね。高級品でなければ意味がないわ」


「わかっている」


ゼノンは相変わらず無表情で答えたが、その目の中には、マリーナに対する強い信頼のようなものが見え隠れしていた。


ジークはそんな二人を見て、心の中で一つ決意を固めた。


(俺はこの家を支配し、権力を手に入れる。そして、母親や父親のような連中に振り回されることはない)


スキルを手に入れたことで、ジークの心に新たな野望が芽生えた。それは、この世界で自分が思い通りに生きるための第一歩だった。


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