プレゼンテーション②
翌週の情報の授業。
「よし、ひと通りまとまったみたいだね」
プレゼンテーションのデータの作成がほぼ終わり、 俺は達成感に満ちていた。
あとは発表だけである。
「笹原と寺沢さんがこのゲームを実況動画で見ててよかった。」
プレゼンテーションの発表の内容は、アイテムを使って1位を競うレースゲームについてである。
寺沢さんと笹原さんはプレイをしたことなかったらしいけど、動画投稿サイトに投稿された実況動画はたまに観ていたみたいで、何も知らない状態でやるよりもスムーズに作業が進んだ。
「でもあのゲーム、楽しかったね。」
一緒にやりたい、と予想外の提案をしてきた寺沢さんも、楽しかったようで俺は安心した。
「またいつか休みの日にみんなで集まろ!」
「うん!」
「だな!」
「うん。」
提案する笹原さんに、返事をする寺沢さん、霧宮、俺。
中学同様に高校生活でも、俺は敢えて孤独を選ぼうとしていた。
中学のときにトラウマになるような出来事があり、2度と同じことにはなりたくないという思いからである。
でも、隣の席の女子、寺沢さんに英語の教科書を見せてもらってから俺にとって、世界が変わったと思う。
そこから霧宮や笹原さんとも仲良くなり、この4人でイツメンが出来た。
そしてこの前の休みの日に集まった際、レインのグループも作ろうという話になり、グループが出来た。
少し前まで俺からは想像できないようなことである。
でも、1つだけ言えることがある。
中学のときより今の方が楽しいな…
◆
1人で寂しそうにしていた西村くんが、友達と一緒に笑うようになった。
英語の教科書を忘れて困っていた西村くんに、私は教科書を一緒に見ようと伝えた。
それから少しずつ、西村くんに私は声をかけ始めた。
西村くんは素っ気なかった。
ただ悪気があるわけではなく、何か事情があるんじゃないかなと思った。
素っ気ないながらも、返事の言葉選びや喋り方にどこか優しさを感じていたから。
西村くんはきっと優しい人なのだと思う。
ある日の朝、西村くんは私に友達になってほしいと言ってくれた。
私は嬉しかった。あんなに閉ざしていた西村くんと、仲良くなれた。
それから沙希と霧宮くんとも仲良くなった。4人の友達の輪ができた。
休みの日に集まって勉強をしたり、ゲームをした。
西村くんはここ最近、毎日すごく楽しそうにしていて、最初に話しかけて本当に良かったと思う。
最初の頃の寂しそうな顔はしなくなり、笑っている顔を見るようになった。
私も毎日が楽しい。これからも仲良くしてほしいな。
でも、どうしてこんなに彼を見ているのだろう。
わからない。ただ彼が笑顔でいてくれるのが嬉しい。
でも、それはなぜだろう。
自分のことが自分でもわからない。
この気持ちはなんだろう。
西村の過去については今後深掘りするかも…?