不意打ち
次の日の土曜日、8時30分。
普段の学校の日であったら確実に遅刻している時間。
静かな部屋で突如として流れるうるさいアラームの音、俺は目が覚めた。
今日はクラスメイトと勉強会をする。
思えば学校の外でクラスメイトと会うのは数年ぶりである。
中学ではほとんど1人だったから…
「ちょっと楽しみかも」
俺はボソッと独り言を呟いた。
9時50分、俺は10時の待ち合わせ時間に合わせて、待ち合わせ場所である駅前に行った。
駅前はやはり混んでいる。
「西村くん!」
人混みの中から現れた姿は、笑顔で俺に手を振ってこちらに向かって来ている。
それは寺沢さんだった。
クラスメイトの私服…
当然、学校外でクラスメイトと会うことがなかった俺は私服姿のクラスメイトだなんて数年間見ていなかった。
黒色のミニスカートに、白色のトップスを身につけたその姿は、とても美しく眩しかった。
「…かわいい…」
「えっ」
無意識に出てしまったその一言、寺沢さんは驚いていた。
「あ!いや!その!」
いや、俺普通にキモくないか?
急に可愛いだなんて言い出すの…
俺は必死にごまかそうとしたけど、言葉が出てこなかった。
「ごめんいきなりキモかったよね」
「いや!そんなことない! 嬉しい……」
寺沢さんは俺の発言を強く否定した。
でも、寺沢さんの顔は頬が少し赤くなっていた。それでも今の俺の方がきっと赤いと思う。
お互いの顔を見れず、目を逸らし沈黙が続く中、遠くから聞こえてくる声。
「西村〜!」
先に合流した霧宮と笹原さんが2人で歩いてこちらに向かってきている。
集合場所に向かう道中でたまたま会ったらしい。
「おはよー!」
「おはよう。」
「おはよ。」
「お、おはよう」
挨拶をする笹原さん、霧宮、寺沢さん、そして俺。
「じゃあ行くか!」
勉強会は、霧宮の家でやることになった。
図書館も候補には出たけど、盛り上がって声が大きくなりそうな気がするから、誰かの家でやることになった。
そこで色々な都合が合ったのが、霧宮の家だった。 夜まで家族はいないらしい。
いや、ちょっと言い方があれだけど、別にいかがわしいことをするわけではない。
駅から少し離れ、人通りも少なくなってきた霧宮の家への道を、色々な話しながら歩いていた。
思えば俺って、クラスメイトと学校外で会うのも数年ぶりだけど、クラスメイトの家に行くだなんてもっと久しぶりだ。楽しみだな……
「家何もないからスーパーでお菓子とかジュース買ってから行こうぜ。」
霧宮は道中のスーパーを指差しそう提案した。
◆
西村くんと霧宮くんの2人は、飲み物を選びに行った。私と沙希は、お菓子を選んでいた。
「ねー水里ー」
「どうかした?」
「私と優斗が来る直前、西村くんと2人して照れているような気がしたけど何かあったの?」
「っ!!」
見られてたんだ…
「き、気のせいじゃないかな?」
「ふーーん…」
私は苦しいごまかしをした。
沙希はそれを聞いてもニヤニヤしていた。
恥ずかしくて言えない……不意打ちの西村くんの一言で、本当に照れていただなんて…
買い物を終えて、霧宮くんの家へと向かった。
本来の目的は勉強だけど、楽しみだったりする。
いかがわしいことはしないです笑