夜道
今回は笹原視点です。
私はただ走った。
すっかり夜となり暗くなった静かな住宅街を、私は少量の涙を流しながら走った。
言いたいことは伝えた。
きっと西村くんは水里のことが好きなのだと思う。
いや、そんなのいつもの西村くんを見ていてわかっていたはずなのに。
この気持ちは、抑えられなかった。伝えて後悔する覚悟もした。
でも、この気持ちを抑えたまま4人でまた仲良くするなんて……。
私はいつから西村くんのことが好きだったのだろう。
思えば彼との初めて話したのって4月下旬のことだったかな。あれから1ヶ月しか経ってない。
正直、入学してすぐの西村くんは静かで、誰とも話していなくて、ずっと1人で……。
正直、私はそんな彼に興味がなかった。
だけど初めて話してから、そんな自分が馬鹿馬鹿しくなった。
グループワーク、4人組グループを作る指示が出た時。
入学後すぐに仲良くなった水里と私はとりあえず2人組を作った。
『西村くんとかどうかな。』
水里の提案で西村くんをグループに誘う事になった。
『西村くんと初めて話すかも!よろしく!』
『う、うん、よろしく。』
それが西村くんと私の、初めての会話。
それから、私は西村くんと話すことが少しずつ増えていった。
西村くんは静かで暗いように見えて、すごく優しい人だった。
彼の得意分野では私を助けてくれて、日頃から気配りもできて…
そんな彼を見ていたら、この気持ちは“好き”となっていた。
苦しかった。彼を見ていた分、心なしか彼が私と話すときより、水里と話すときの方が楽しそうにしている気がした。
水里もきっと西村くんに対して好意的に思う素振りを多く見かけた。
この1ヶ月間、そんな状況を見ていても私が西村くんのことが好きということは変わらなかった。
そしてだんだん、あの2人が気持ちを伝え合う前にいつかこの気持ちを彼に伝えて、私に対して意識させれば良いと考えるようになった。
そして私は今日、私たちを助けてくれた西村くんを見て決意した。この気持ちをしっかり伝えると。
伝えて後悔なんてしていない。
そんなことを考えていた私は、いつの間にか立ち止まっていて、涙の量の多くなっていた。
すると後ろから、聞いたことのある声がした。
「はい。これ。涙拭けよ。」
幼馴染の優斗だった。
ポケットティッシュをくれて、私は涙を拭いた。
「優斗…なんでここに…」
「西村が珍しく真剣な顔して走っていったからな。気になってついてきたんだよ。」
「…全部見てたの…?」
「あぁ…」
私は一気に顔を真っ赤にして、恥ずかしくなった。
でもその直後、優斗は思いがけないことを言ってきた。
「俺は沙希のこと、好きだ。」
「…!」
唐突だった。
「え…」
「俺たち、小学校から一緒だったよな…俺はずっと好きだった。」
「…そうなんだ…」
「だからその…俺と付き合ってくれないかな…」
優斗は真剣な顔をしていた。だから私は答えた。
「はぁ?バカなの?無理に決まってるじゃん。ここで優斗と付き合ったら、西村くんに告白したばかりの私は誰でもいいみたいになるじゃん!」
「で、ですよねー。」
なんかこのタイミングでこんなふざけたことを言われたらもう西村くんに振られたこともどうでもよくなった。
「でもありがとね…元気出たよ…」
「そっか…でも元気付けたい気持ちもあったけど、それ以上にこれは俺の気持ちだから。」
「うん…いつか私が西村くんのことを忘れられて、優斗のことを好きになったら、そのときは私から伝えさせてね。」
優斗は頷き、暗いからと私を家まで送ってくれた。




