友達
ゆったり書きます。
翌日の朝。
「今日も学校かぁ」
ぼんやりそんなことを考えながら、俺は学校へ向かっている。
「おはよ!西村くん!」
俺にそう声をかけてきたのは、クラスの隣の席の茶髪の女子、寺沢 水里さんだった。
朝から、寺沢さんは明るい。
「おはよう。」
「今日も学校だね!」
「そうだね。」
「今日も落ち着いてるね!」
「まぁね。」
そんな会話をして以降、会話は止まった。
どちらも口を開かず、寺沢さんと共に歩く通学路。
俺は最初からずっと下を向いて歩いてる。
そこまで仲良いわけじゃない。気まずい…!
そっけない返事しすぎたか?
寺沢さんも口は開かないけど、なんだか視線は感じる…
◆
西村くん、今日もあんまり話してくれない..
私は西村くんと仲良くなりたい。
私が彼に話しかけると、当たり前だけど彼は返事をしてくれる。
でも、彼が誰かと喋っているところも見たことない。
だけど、私が話しかけたときに返してくれるたった少しの彼の言葉、喋り方を聞いて、彼は本当は優しい人なのだと思う。
だから西村くんとは仲良くなりたい。
家が近いのかな?
たまたま通学路で会ったから、話しかけてみた。
彼はいつも通り静かで、あまり話したくなさそうな感じがしたから、話しかけにくくなり、会話は止まってしまった。気まずい…
ランニングをする人や、ペットの散歩をする人がいる住宅街を私と西村くんは、ただ無言で歩いている。
◆
いやどうしよう。やっぱりそっけない返事だったよね。
寺沢さんは良かれと思って話しかけてくれていたのに、もうそっけない返事をしていたことで寺沢さんを傷つけてしまっていたらどうしよう。
気まずい……何か話しかけたいけど、何も思いつかない……どうしようどうしよう…
沈黙が続いていたが、何か言わねばと俺は口を開いた。
「じゃあ私、先行くね!」
「朝ごはん何食べたの!?」
しかし寺沢さんが口を開いた瞬間、被せるように俺は口を開いた。
思えば、これが俺の方から寺沢さんに話しかけたのは、前に英語の教科書を見せてもらって、そのお礼を伝えたとき以来だった。
寺沢さんは口をぽかーんとして、唖然としていた。
ただすぐに返事をしてくれた。
「朝ごはんはね、トーストにバターを塗って食べたよ!それにしても西村くんから話しかけてくれるの珍しいね!嬉しい!」
寺沢さんは、すごく笑顔だった。
俺は正直、中学での一件以降、周りのクラスメイトはみんな俺に対し良くないイメージを持っていて、関わりたくない考えてると思っていた。
でも俺は気づいた。
寺沢さんはきっと違う。
これだけ話しかけてくれるのだから。
そして今のたった一言で、これだけ笑顔になってくれるのだから。
そしてこの笑顔は、自然な笑顔だと思う。
この人がもし友達になってくれたら、きっと学校生活は楽しくなる気がする。
少し迷いはあったけど、俺は寺沢さんに伝えた。
「お、俺と…友達になって…くれない…かな…」
少し恥ずかしかったけど、想いを伝えた。
すると寺沢さんは一瞬驚いた顔をしていたけど、すぐに笑顔になりこう言った。
「もちろん!よろしくね!西村くん!その、せっかく友達になれたんだし、レイン交換しようよ!」
「う、うん。」
俺は寺沢さんと、レインを交換した。友達が久しぶりにできた。
俺は中学から孤独を選んでいて、高校でも孤独でいようとしていた。
明らかにつまらないであろう孤独を。
でも寺沢さんと出会って、俺とっての高校生活が、予想もしていなかった方向に進む気がする。
「今日1限目から体育だよ。楽しみ!」
「そ、そうなんだ…俺は運動が苦手だからちょっと嫌かも…」
「えぇ? 体育が嫌なんて珍しい!」
「そんなことないでしょ!」
「そうかなー?」
俺は寺沢さんとそんな他愛もない話して、笑い合いながら学校へと向かった。
俺にとって、学校への道が少し明るくなったような気がした。
ちなみに筆者も高校時代、体育は苦手でした…笑