帰り道
「校外学習で行動する班を話し合って決めろー」
ホームルーム、担任である近藤先生は教卓に手を置きクラスの皆へ指示を出した。
静かだった教室が騒がしくなった。
騒がしい中、前の席の霧宮と笹原さんがその後ろの俺と寺沢さんの方へ向く。
「よろしくね!」
笹原さんが明るくそう言う。
昨日、テストが終了した俺たちは、放課後に笹原さんに誘われて4人でスイーツを食べに行ったのだ。
その帰り、5月下旬に行われる校外学習の班行動のグループを、俺、寺沢さん、霧宮、笹原さんの4人で組む約束をした。
中学の頃の校外学習、俺は休んだ。
孤独を極めていた俺は、クラスで上野に行っている中、家で1人孤独にゲームをやったり、高校の勉強をしたりしていた。
学校外である家だからこれはこれで校外学習かもしれない。
しかし今回はそんな悲しい校外学習ではない。
浅草……いろんな場所を見たり、美味しいものを皆で食べたり。
ついに校外学習の明るい思い出ができるんだ……
「何ニヤニヤしてるんだ?」
「ちょっ、いや、な、なんでもないよ!」
妄想による笑みが漏れていたのか、霧宮はそれを見逃さなかった。
霧宮に苦笑しながら見られていた。
ふと右を向くと、寺沢さんが俺をじっと見てた。
「….…?」
感情が読めない表情。
何か気になるような目で俺を見ていた。
すると寺沢さんはニコッと笑い、口を開いた。
「楽しみだね!」
「あ、うん…!」
寺沢さんの心が読めない。
今、何を考えていたんだろうか…….
「グループは決まったかー。じゃあ行動スケジュールなどは各自で決めとくように。あくまで学習だから、ゲームセンターとかは禁止な。」
この後、近藤先生はホームルームを終わらせた。
放課後、俺は1人で家に帰ろうとしていた。
昇降口で、下駄箱から自分の靴を取り出し、室内用の靴を入れ、俺は歩きだした。
そういえば、1人でこの道を歩くのも久しぶりだな…テスト勉強期間は寺沢さんと一緒に帰ってたっけ…この先にいつも勉強していた図書館の方へ向かう道と、自宅の方に向かう道が分かれてるんだよな…テスト勉強期間が終わった今、寺沢さんと一緒に帰る必要もなくなる……
テスト勉強期間….
「…たのしかったな…」
俺はボソッと呟いた。
「え?何が楽しかったのー?」
気づくと真横に、テスト勉強期間中に俺と2人で一緒に歩いていた女子がいた。寺沢さんである。
「うわびっくりした!!寺沢さん!?」
「あははは。帰り道で西村くんのこと見かけたから声かけちゃった。」
びっくりした。
色々考えながら歩いていたため足音がほとんど聞こえず、声をかけられるまで気づかなかった。
「一緒に帰ろー」
「あ、うん。」
寺沢さんと歩く帰り道、テスト勉強期間のときと同じ。
「こ、校外学習、楽しみだよね!」
「そうだね!食べ歩きとか楽しみ!」
ごまかしの一言を俺は言う。
それに共感してくれる寺沢さん。
2人で校外学習について色々話しながら、俺たちは帰り道を共に歩いていた。
「少し調べたんだけど、浅草にこんなお店あったんだよね。」
「えー!すごく美味しそう!」
やっぱり、寺沢さんは優しい。
俺の言葉をしっかり受け入れてくれて、優しく返事をしてくれる。
そんな寺沢さんと一緒に帰ることができていたテスト勉強期間は、本当に楽しかった。
もしも願いが叶うなら、俺はこれからも寺沢さんと一緒に帰りたい。
でも『「一緒に帰りたい」』だなんて俺には言えない。
寺沢さんは優しいから、もし嫌でも断れなかったり、断るのに言葉を選んで困ってしまうかもしれない。
寺沢さんを困らせるようなことはもうしたくない。
だからこそ、寺沢さんに俺の願いは言えない。
筆者も浅草で食べ歩きがしたいので今度行こうかな…




