嫌な記憶④
「真翔、放課後遊ぼうぜ〜」
「おう!いつもの場所で待ち合わせな〜!」
中学1年の7月、俺には小学校からの付き合いになる高嶺 亮という親友がいた。
亮とは毎週のように遊んでいて、ときには一緒にゲームをしたり、ときには一緒にテスト勉強をしたり。
クラスのみんなとも仲良くて、本当に楽しかった日々。
ある日までは─────。
7月28日
「なぁ、真翔…お前にこんなこと…聞きたくもないし….嘘だと言ってほしいんだ…」
夏、暑い住宅街、一緒にゲームをする際に食べるお菓子を買いに行っているときのことだった。
親友の亮が深刻な表情で言葉を詰まらせながら、そんなことを言ってきた。
「…どうかした…?」
「あのさ…お前…こっそり佳奈ちゃんのストーカーをしてるって本当か…?」
「…なんで…?」
「…佳奈ちゃん…最近ストーカーに悩まされてるらしくて…2日前…たまたまそいつの姿を見かけたみたいなんだ…」
「うん…」
「影で暗くて確実ではないみたいなんだけど…その姿が…お前にそっくりだったらしいんだ…女子の中ではもう噂で広がっていて、俺も女子の友達から聞いたんだ…」
「俺じゃない…姿が似てただけじゃないのか…?」
「そいつが佳奈ちゃんに見つかって逃げた際に、そいつはあるものを落としていったんだ…」
「…あるもの…?」
「…真翔の…生徒手帳だ…」
「…っ!」
俺がクラスのマドンナ、島崎 佳奈ちゃんのストーカーなんてするわけない。
絶対に違う。
「…違う、俺じゃない…!」
「…生徒手帳はお前のだったんだぞ。」
「…」
説明ができない。
生徒手帳に触れる機会があまりなくて、探せばあるだろうけど、生徒手帳が今すぐ確実にある場所がわからない。
沈黙が続いた。
「…お前…最低だな…」
「い、いや待って、本当に違うんだ…!」
「もうお前とは関わらない…」
亮はそんな言葉を吐いて、去っていった。
俺は辛かった。
そんなことするわけないだろ…
親友じゃないのか…
どうして信じてくれないんだ…
俺は道に膝から崩れ落ちた。
ただ暑いだけの日差しは、俺へ追い討ちをかけているかのように感じた。
それ以降、亮とは連絡を取らなくなった。
夏休み明け、最初の登校日の朝、暗い気持ちで教室へと入った。
クラスの人たちは、俺を見るなりヒソヒソと話し出した。
するとある女子が俺に前に立ち、一言だけ言ってきた。
「あんた…最低だね。」
その女子は、佳奈ちゃんから預かっていた、俺に似た奴が落とした俺の生徒手帳を俺に返し、そう言ってきた。
亮に信じてもらえなかったことから、その時は否定をする気力もなかった。
なんとなくこうなる気がしていた。
そこから噂は学年中に広がり、俺は友達がいなくなった。
でも無実をわかってもらいたい。
そう考えるようになり、それから俺は必死に否定した。
でも無駄だった。
一度流された噂は消えない。必死に否定しても。
俺は諦めた。
1番仲の良かった親友に信じてもらえず、目が合うと嫌な顔をされるようになったというのが俺にとって1番心に刺さった。
そこから俺は、1人になった。
「もう…いい…」
「これでまたみんなと友達になれたとしても、もう同じ目には遭いたくない。」
「だったら、1人で良い」
周りの全てを閉ざし、俺は1人の学校生活を過ごした。
そんな思い出したくもない、中学のときの、嫌な過去だった。




