嫌な記憶③
俺はひたすら走った。
オレンジに染まる空、輝く夕日、照らされる住宅街、無我夢中だった。
家に着いてすぐ、母親の『おかえり』という声を無視して、俺は自分の部屋に行った。
そしてベッドに飛び込んだ。
「…なにやってるんだろ…」
ふと冷静になり、一連の行動を強く後悔した。
寺沢さんは全く悪くないのに、自分の嫌な過去を久々に詳しく思い出したことがきっかけとなり、寺沢さんを困らせるようなことをしてしまった。
過去の嫌な記憶、そして寺沢さんを困らせてしまった事実。
その2つが相まった後悔が、実在する人間となり、俺の腹を殴っているような感覚。
辛さと責任。
俺は俺を責めた。
過去の嫌な記憶を深く振り返ってしまったのはまだどうでもいい。
しかし、寺沢さんを傷つけてしまっていたら、どうしよう。
せっかく仲良くなれたのに、また高校でも仲良かった人に嫌われて、陰口を言われるのだろうか。
もう嫌だ…
俺は涙を少し流して、強く後悔をしていた。
──いや。
泣いている暇なんてない。
寺沢さんは俺の中学のことを気になって聞いてくれた。
話そう。
それで寺沢さんが逆に困ってしまうとしても、伝えるべきだと思った。
今日みたいなことにはなりたくない。
寺沢さんならきっと真剣に聞いてくれるはず。
伝える前には、今日のことをしっかり謝ろう。
家に帰ってから色々なことを考えていて、気づけば21時頃。
「よし」
強い決意のもと、俺はスマホを手に取った。
◆
西村くんからの…着信…
電話に出るのが少し怖い。
でも出よう。
そして嫌なことを聞いてしまったこと、謝ろう。
そうして私は電話を出た。
『もしもし。寺沢さん。』
「も、もしもし…」
心なしかいつもより真剣そうな声に感じて、少し驚いた。
5秒間の沈黙が続いたのち、両方とも口を開いた。
『ごめん!』
「ごめん…」
同時に出た、謝罪の言葉。
私は驚いていると、西村くんは私にこう尋ねた。
『ど、どうして寺沢さんが謝るの…?』
だって私が西村くんにとって嫌なことを聞いてしまったから…
「…嫌なこと聞いたよね…私…それを聞いたとき、西村くん、青ざめてた…だから…ごめんね…」
『そ、そんな!俺が勝手に考えてただけだよ…俺の方こそ、急に走って逃げたりして、寺沢さんを困らせたと思う。だから…ごめん…』
「困ってなんかないよ…」
お互いに謝罪の気持ちを伝え合った。
私は少し安心した。
西村くんに嫌われるんじゃないかって、怖かった。
そんなことを思っていたら、その後に西村くんはとある提案をしてきた。
『寺沢さん…俺の中学のことを話そうと思うんだけど、いいかな…』
「う、うん…」
次回、ついに西村の過去が明らかに。




