表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
洛中楽Guys ー若き絵師たちの肝魂ー  作者: 林海
第三章 如何にしても意は通すものぞ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/118

第21話 拙速合戦


「貝吹山城に炊煙、(おびただ)しっ」

 畠山の陣では、物見の報告に朝の暗いうちから大騒ぎになっていた。明け方の細い月の光が、煙を発見させていたのだ。

 敵陣の炊煙が多いということは、兵の移動が前提になる。つまり、攻めてくるか退却するかということだ。

 おそらくは、決戦の意思を固めたのであろう。少なくとも、退却すると決めてかかることだけは許されぬ。


 大将、畠山高政(たかまさ)の判断は早かった。

「地の利を奪われている今、後手に回ったら勝ち目は皆無となる。

 先に動く。出撃準備。整い次第、出るっ。

 朝めしは、走りながら(ほしいい)でもかじれ」

「応っ」

 安見宗房、遊佐信教、湯川直光ら、配下の武将が応え、一気に士気が高まった。

 やはり、いくさは守るより攻める方が有利である。士気にあっても、攻撃は防御に勝る。

 彼我の間には春木川が流れている。川向うに陣を移動できるかが、最初の勝敗の分かれ目であった。とはいえ、この士気であれば、渡河は成功させられよう。


 彼らも七ヶ月もの間、遊んでいたわけではない。渡河の容易な河岸もすでに見つけている。

 そして、出撃の準備はいつでもできている。

 それでも、奇襲を受けてわたわたと対応するのと、飯を済ませ、馬にも草を食わせてから出るのでは、その後の展開が大きく違ってくる。(ほしいい)などわびしく齧って出陣するのと、温かい飯と汁を食って出陣するのでも士気が大きく異なるし、乱戦の中、戦い続けられる時間も大きく違ってくるものだ。

 だが、それらのすべてを飛び越えて、畠山高政は出撃を命じる。敵に炊煙が上がっている以上、こちらが遅れて飯など炊いていたら間に合わぬ。勝てば、あとから飯はいくらでも食えるのだ。


 三好軍が動く前にこちらが機先を制すことができれば、相手の動きは一時的にでも止まる。物見がこちらの動きを見て報告し、大将が判断したのちに新たな命令が下り、それが各部隊に伝えられる。その動きのための時間が必要になるからだ。

 先手を取り続けられれば、その間を常に有利に使える。大将、畠山高政が急いだのにはそのような理由もあった。



 畠山軍が一気に渡河を終え、魚鱗の陣を組んだとき、初めて貝吹山城から矢が飛んできた。

 機先を取ることに成功したのだ。

 畠山軍は一気に肉薄し貝吹山城を落とそうとするが、三好軍もしてやられてばかりではない。

 当然のように土塁に依った激しい反撃に転じ、乱戦は一刻半(3時間)にも及んだ。


 だが、昼前には(ようや)く均衡が崩れ、畠山軍は崩れだした。無理な朝駆けをもってしても、結局は三好軍の貝吹山城という地の利を克服できなかったのだ。

 畠山軍は敗走に転じ、三好軍は本陣付きの備えまで動かして追撃に入った。

 すでに本陣は戦勝を祝う雰囲気になっており、本陣詰めの諸将も兜を脱いでいた。


 だが……。

 追撃の結果として、三好軍本陣は馬廻り衆を残して空白となっていたのだ。

 そこに、一発の銃声が轟き……。

 三好軍大将、三好実休は、狙撃の銃弾に頭を撃ち抜かれていた。


第22話 絵師たちの唇歯輔車(しんしほしゃ)

に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ