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ラオンVS靴野郎

暗雲蠢く闇姫の城にて。


玉座に腰掛ける闇姫、その横を浮遊するデビルマルマンの前に、球体型の生き物…マルマン二人が地に伏していた。

「…申し訳ございません!あの黄昏の狙撃手カールの前では、情報を吐くしかありませんでした!この軍の新型銃器…D300の設計情報を!」

「次からは気をつけろ。下がれ」

深々と頭を下げながら部屋から出る二人。


デビルマルマンは両手を合わせながら唸り声をあげた。

「うーーん、我々の元から直接D300の情報を奪うとは。そのカールとかいうやつ良い度胸ですね」

「解せぬな。何故わざわざ兵士から情報を盗んだ。兵士がこうして報告に来る事くらい分かるだろうに」

頬杖をつく闇姫に、デビルマルマンはまた唸る。

新たな敵勢力が登場した訳だが、明らかに自身の動きを悟られるであろう行動をわざわざ取るカールの真意がいまいち読めなかった。

単なる馬鹿か、それとも…カールの顔を実際見た訳でもなく、闇姫は答えが出ない。


とにかく、闇姫軍が開発してる新型銃器、D300が目的な事には変わりないだろう。

「兵を送れ。カールの真意を探る」

デビルマルマンは敬礼した。



同時刻、葵とラオンはある森を散歩していた。

戦いとは無縁の散歩だが、互いに相棒を持ち歩いてる。

葵はハンドガン、ラオンはナイフ。…二人共これを持っていないと気が済まないのだ。

「ねえラオン。そろそろ貸したお金返してくれない?」

ギョッ、と目を見開くラオン。顔は前を向きつつも、目は横の葵をしっかり見ている。

「おい、今はのどかな時間だぞ、そんな話題を持ち込むな!」

「そんな事言って、いつも誤魔化すじゃないの」

葵の表情がどんどん暗くなる。ラオンの視線もまた、徐々に葵から離れ、前を向いていく。

「そ、その、パチンコで全部使っちまって…ひっ!?」


ラオンが言い終わる前に、彼女の頭部に銃口が突きつけられる。

今葵がどんな顔をしているのか、想像すらしたくない…。



…が、そこへ天使が舞い降りた。

「あっ!あいつは!!」

ラオンが前を指差す。



そこには、切り株に座る一人の男がいた。

ラオンにとっては天使…だが、そこそこ年配な男が。

葵が銃を下ろし、彼に駆け寄る。

「カール!?何でこんな所に!」

「また会ったな姉ちゃん。あんたらに聞きたい事があってやって来た」

カールはこちらと目を合わさず、マグナムを磨き続ける。

あんたら…という事は、ラオンにも何か聞きたいようだ。


「あんたら、闇姫とは知り合いなのか?」

闇姫というワードに強く反応する二人。肩に力が入り、表情が強ばる。

その様を見たカールは笑い、マグナムを置く。もうこれだけで、知り合い以上の関係…敵同士である事を察したようだ。

「これから闇姫と戦うなら注意しな。やつらは今、ある連中といがみあってる」

「ある連中だと?」

ラオンのナイフを持つ手に自然に力が入る。周囲の綺麗な空気も淀んできているようだ。

「闇の一派。それがやつらの名だ」

闇の一派…聞いた事のない名だ。しかしその名前から既に、闇姫との関係性を感じられる名前だった。

「やつらは闇の軍勢の一角。闇の世界の支配権を手中に握らんとする連中だ。世界を支配する為には手段を選ばない。闇姫軍もいつか闇の一派と衝突する事になるだろう」

カールはマグナムを取り、マジマジと見つめながら話を続けた。

「闇姫軍の計画にやつらは奇襲を仕掛けるだろう。あんたらも巻き込まれないよう気をつけな」

唐突に立ち上がり、マグナムを肩に掲げながら立ち去っていこうとするカール。

思わず呆然とその話を聞いていたが、ラオンが手を突き出して彼を止める。

「ま、待て。何でお前そんな事を知ってるんだ!?」

「あんたらには関係ねえ。大人しくしているのが一番ってこった」

納得いかない答えにラオンは彼を追おうとするが、葵がそれを止めた。

ますますカールは怪しい人物となってきた…が、今回恐らく事実であろう情報をくれたのは素直に喜ぶべきだ。

闇の一派。

これから闇姫軍の襲撃を受けた際には、闇の一派の襲撃にも気を引き締めなくてはならない。




…カールは、森の奥へと進んでいた。

徐々に木々が多くなり、日光を遮断していく。入口付近は太陽に照らされた美しい森も、奥まで進むと暗黒の森だ。


…そして、こんな場所で誰かが佇んでいた。

「上手く言ったかカール」


青い長髪を肩まで下げた女…ブルムだ。

カールはマグナムを軽く投げてはキャッチする片手遊びをしながら答えた。

「何とかな。だが俺はこう見えて問い詰めに弱いんだ。俺が何者か聞かれた時は、ちょっと焦っちまったぜ」

ブルムは近くの木に寄り掛かり、話をまとめる。

「葵達にとって闇姫軍は敵だ。その敵が闇の一派の襲撃に遭おうとしている。これは葵達にとっては、自分達が戦わずとも敵を殲滅できるチャンスだ。もう闇姫軍の計画に戦いを挑む事もあるまい」

ブルムは髪を撫でて、余裕の口調で話す。

「闇の一派は無欲な団体。闇姫軍を滅ぼせば、邪魔が一つ消えたというだけで満足するだろう。そして残された闇姫軍の兵器は我々が回収し、売りつけるなりそのまま使うなり…その暁に、アンコウ鉱山の調査、Kプランがスタートするという訳だ」

カールは一言も返事をせず、代わりにポケットから煙草を取り出し、吸い出した。

白い煙を吹きながら、カールは上を見る。

「へえそうかい。次は何すれば良い?」

無気力な口調のカールに、ブルムは少し黙りこむ。

中々来ない返事にカールがこちらに視線を合わせ始めた辺りで、ブルムが問う。

「解せぬ。お前は元軍人だろう。なぜまた戦争に協力する?」

カールは煙草を宙に放り投げ…発砲した。

粉々になる煙草…。

「簡単な事。生きる為だ。生きる為には金がいる。金を得られるなら何でもやってやる。それ以上の理由がいるか?」

ブルムはまだ納得がいっていない顔をしているが…。


「…今は待て。お前の狙撃技術を活かす時は近い。だが今すぐではない」

「ほいほい、イエッサー」

いい加減な敬礼を見せると、またニヤリとした笑みを浮かべた。


…その笑みは、ただの笑みではない。何か裏がある笑みだった。




その頃、ラオンと葵は…。




「何だお前らは!?」

ある敵との戦闘中だった。

敵はやたら大きな靴を履いた人型のモンスターだ。

街に帰ろうとした二人の前にいきなり躍り出てきたのだ。

モンスターは足踏みし、草を踏みつけながら高い声で話す。

「オイラはブーーツ!闇姫様のご命令の下、この森の偵察に来た者だ!」

闇姫の名を聞き、ラオンは迷わずナイフを構え、ほくそ笑む。

「闇姫軍か。ブーツという名前なのか?ならその靴を引き裂いて、名前詐欺モンスターにしてやる!」

ラオンの勝利宣言だ。それを聞いたブーーツは怒り出す。

「ブーツじゃねえ!!ブーーツだ!!」

「知るかボケ!!」

ラオンはナイフを振り回し、ブーーツに迫る!

ブーーツは靴を構え、蹴りを繰り出してきた!

ラオンがかわし、攻撃は空振りに終わる。しかし、靴は地面にめり込み、その威力の高さを外見だけで物語る。攻撃は単調だが、威力はある。

葵はハンドガンを構え、ブーーツに発砲!腕を撃たれたブーーツは、痛みでバランスを崩し、派手に転ぶ。

靴が大きすぎて上手く動けないらしい。ラオンは大笑いし、葵も思わず笑う。

「何がブーツだ!靴が仇になってるじゃねえか」

「だからブーーツだボケ!!オイラを笑うとは許せん!靴ベラにしてやる!!」

ブーーツは素早く立ち上がり、靴に手を突っ込み、何かを押す。


…すると、靴から鋭い棘が射出される!意外な武器に、ラオンは笑うのをやめ、ナイフを構え直す。

ついでとばかりにブーーツは隠していたサングラスをかけ、いかにも悪そうな見た目に。本気を出したブーーツなりの威嚇だろう。

「くらえ!!トゲ踏みつけ!」

高く飛び跳ね、空中からラオンに狙いを定めるブーーツ。

棘が白い輝きを放ちながら向かってくる!ラオンは焦らず横に動き、攻撃の射程内から素早く外れる。

土砂を巻き上げながら地面に落ちるブーーツ。硬い地面に深い穴を空け、ポーズを取る。

「ふふふ、よくかわしたな。だが見ろこの威力を。当たればアンドロイドのお前だろうと串刺しだ!」

第二撃を決めようとするブーーツだが…。



「あれ、抜けない…」


まあ当然だ。

地面を抉るほどの棘を靴底なんかにつけてしまうのだから。

ブーーツは動けなくなり、困り果ててしまう。そんな彼に、ラオンは指を指してアドバイス。

「いや脱げよ」

「あ、そうか」

素直に靴を脱ぐブーーツ。地面に刺さったままの靴を背に、再びポーズをとる。

「ははは、これでもう負けん!」

「アタシがな。お前の武器はもうなくなったぜ」

ラオンの台詞に、ブーーツはギョッ、とする。

その頃にはもう遅く、ラオンはナイフを構えて突撃!

ブーーツの首に蹴りを炸裂させ、直後、ナイフを振り上げて体を切りつけ、一気に高いダメージを負わせる!

ブーーツは勢いよく宙に投げ出され、派手に落下。そのまま気を失った。


「アタシの靴でも舐めとけ。あばよ」

ブーーツの顔を踏みつけ、去ろうとするラオン。



…だが、良い事を思いついた。


「…我ながら良い考えが浮かんだぜ」




その後、ラオンは棘付き靴を質屋に売却した。

意外な程に高級品だったらしく、葵に大半の借金を返済できたのだという。



「返せええええオイラの靴ーー!!!!」

…その後、目を覚ましたブーーツが泣きながら追ってきたので、結局靴を返してあげ、借金も元の額に戻ってしまったのだが…。


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