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とある一人の兵士の死闘

戦闘の最中、突然姿を消したカールとマガツカイ。

両者は、虹色に輝く謎の空間へ飛ばされていた。

地面はなく、重力の概念もない宇宙のような場所だ。

マガツカイは周囲を見渡し、目の前に浮かぶカールに視線を留めた。

「俺の魔弾に、お前の渾身のエネルギーを込めた弾丸をぶつける事で空間を歪ませ、この空間の歪みに移動した訳か」

カールもまた、辺りを見渡す。


魔力が不安定に入り交じる異空間。仲間の姿はなく、自分とマガツカイだけがここに足を踏み入れた。


「成功だな。これであいつらが犠牲になる事ぁないぜ」

カールのその一言を聞いたマガツカイは、実に可笑しそうに高笑いする。


「フハハハハ!!まさかお前一人で俺を倒せると思ってるのか?仲間をこれ以上犠牲にする前に、ここで俺とのタイマンを望んだのだろうが、あまりにも無意味だ。ここでお前を一撃の下で葬り去り、空間を破壊して脱出する。それだけだ」

一人の雑魚が、タイマンを望む。マガツカイにとっては、下手な漫才より可笑しいのだろう。

笑い続ける彼の前で、カールはどのような反応をしたかと言うと…。



「うひゃひゃひゃひゃ!!ふひゃひゃひゃ!!」

下品に笑い飛ばしてみせたのだ。

作り笑いでもなく、正真正銘の可笑しさに溢れたその声に、マガツカイの高笑いが押し負かされた。

「…何を笑ってる?気でも狂ったか」


マガツカイはハットを整えて、無重力の中でも器用にマグナムを振り回した。

そして、ポケットから煙草を取り出し…煙草の先端に弾丸を放ち、火を付ける。


「マガツカイ、お前を馬鹿だと思ったんだよお」

マガツカイは黙っていた。

カールは煙草を吸いながら、語りだす。

「お前は多くの兵士の命を奪ってきたのに、何で今の俺の状態を理解できてないんだ?死を覚悟した時、兵士は凄まじい力を発揮できるんだよ」

マガツカイはその言葉そのものにはあまり耳を貸さなかった。

しかし目の前のカールの状態は、無視できぬ何かがある。

闇の王である自身を前にしても微塵も乱れぬこの余裕。狂った割には理性的だが、正気とも思えぬこの態度。


「…」

マガツカイは何も言わず、拳を突き出す!!





カールは…その一撃をかわしてみせた。

マガツカイの腕の上に降り、白い煙を吹き出す。

「これで分かったか?」

「…!!」

マガツカイの腕から紫の光が放たれ、電撃が周囲に飛び散る!そのまま腕を振り回し、周囲の空間を歪ませる程の魔力を放つ!

普通の人間であれば、あまりのオーバーキル。マガツカイ自身も、一人の人間相手にここまでの攻撃を仕掛けるのも大人げないと考えたが…。


カールはそれすら回避したのだ。それどころか、回避と同時にマグナムを発砲し、マガツカイの顔面にぶち当たる。

その弾丸も、カールのエネルギーがこもって更に高い威力を保っていた。

「これは…確かに興味深い」




その頃、現実世界では…。



突然の静寂のなか、崩れきった大地が揺れ動く白の明星にて、カールを除くワンダーズ全員が、互いに集まっていた。

互いの怪我の具合を確認しつつ、今何が起きてるのか葵が言う。

「恐らく彼は今別の空間でマガツカイと戦ってるわ。たった一人で…」

ラオンが、じれったそうに足を落ち着きなく動かしながら、辺りを見渡している。カールが今どうなってるのか分からず、焦燥心ばかりが集っていた。

「ど、どうすればその空間に行けるんだ!?」

「それが…」

葵は、ため息交じりに視線を逸らす。


…当然だ、別の空間に移動するなど、先程のカールのように相当追い詰められていない限りは不可能な荒業。やろうとしてできるようなものでは無い。

ここで光星王が言いにくそうに口を出した。

「…それに、空間というのは幾つも分散してる。何億何兆もの空間の中から、たった一つの空間を見つけ出さなくてはならないのだ」

…会話が一瞬途切れる。



れみが、恐る恐る言う。

「…そんな事をして、カールはまさか…」

シャナイが、震えるれみの言葉を紡ぐ。

「死ぬ気だろうな…」

その一言に、皆はどよめく。

何とか、何とかできないか…皆は冷や汗を流しながら、ただひたすら辺りを見渡し続ける。

何もかも破壊され、闇に覆われた滅びの大地。使えそうな物など、何ひとつとして存在しない。

空間を移動するなど、まさしく奇跡のような業だ。それに使えるような物がここにあれば、そもそもこの戦いにここまで苦労はしない…。




…と、テリーがここで何かに気づいた。

「おい、闇姫達がいないぞ」


そういえば、いつの間にか闇姫と四天王の姿がどこかに消えている。つい先程までいたはずだが、一体どこへ消えたのか?

一緒に別の空間に飛ばされた…その可能性が一瞬よぎったが、あの闇姫がそんな簡単に飛ばされるとは思えない。



「…上だ!!」

…シャナイが天を指差し、闇に覆われた天空へ向けて飛行を開始した!

闇姫はこの先のようだ。焦る気持ちを抑えつつ、他の戦士達も一斉に続く!




天空をも超え、一同は宇宙へと突入する。荒れ果て、裂けた白の明星の上…そこには、何かに奮闘する闇姫と四天王の姿が。

彼女らだけではない。光姫の姿もある。

彼女らは宇宙の暗がりに手を向けており、何かを必死に念じてる。闇姫は背を向けたまま、背後の皆に向かって怒鳴る。

「そんな所にいねえで手伝え!!魔力で空間を開き、ワームホールからカールの野郎の力を察知する!!」

はっ、と声を揃える一同。

全員が横に並び、両手を構え、それぞれのエネルギーを放ち始めた!!

見えない力が、空間を刺激する。宇宙の暗闇に魔力が溶け込み、勢いよく空間を開いていく。


…しかしここは無重力。大気圏内と比べると魔力は分散しやすく、空間の一部に集中させるのは難しい。それにここはつい先程までマガツカイ、コウノシンが暴れていた場所。残っている魔力がひしめき合い、こちらの魔力を防いでいた。

それでも諦めない。皆は、ただカールと再会する光景だけを頭に、魔力を放ち続ける。

カールのあの顔と、再び目を合わせられる、その光景だけを…。






…カールは、ただの人間の身でありながら、闇の王と一体一の大勝負を繰り広げていた。

マガツカイの刺々しい拳が、カールの皮膚を切りつける。

血を散らしつつも、マグナムの引き金を引いてマガツカイの体に叩き込む。

体のどこに撃つかなど、もはや考えてられない。マガツカイのスピードはカールよりも遥かに上。カールは悠長な隙は作れない。

弾は限られていて、本来ならば慎重に狙う必要があるが、狙う時間はない。もし慎重に狙いでもすれば、マガツカイの渾身の一撃で粉々にされ、撃つ事すらできない。

ならば…がむしゃらながらも、残りの弾丸を吐き出すのが一番だ。

「ここまで足掻くとは。予想外だ。一体何がお前を動かしている?」

マガツカイはあえて弾をかわさない。首や顔面など、急所に当たった渾身の弾丸は激しく崩壊し、マガツカイの体を傷つける。マガツカイは痛みを感じつつも、その余裕を崩すまでには至らない。

カールの渾身の弾丸がこれなのだ。余力の差が大きすぎた。

そして…。

「ふん、弾切れか」

マガツカイは呆れた。目の前の銃口から弾が飛んでこなくなったのを見て、いよいよカールの最期を察知した。

勿論カールは諦めない。互いの身に残された力の差はあまりにも離れているにも関わらず、余裕の態度は全く同じ。

「頼むぜ、俺のマグナムちゃんよ」

カールは手にしたマグナムを構え、マガツカイに向ける。

その持ち方は…銃の持ち方ではない。鈍器を持つような、打撃の構えだ。

勢いよくマガツカイに飛んでいき、マグナムを頭に叩きつける!マガツカイは片手で軽く払い除け、尻尾を叩き込んだ!!

吹っ飛ばされるカールを見下し、心底呆れている。

「もはや打つ手なしか。悪あがきを見るのは好きだが、ここまで惨めな足掻きは見るに耐えん」

もはや遊んでやる価値もないと見たか、マガツカイの方からカールに向かっていき、彼の全身を打撃で打ちのめす!拳が、足が、尻尾が…一部だけでもカールよりも巨大なその部位が、彼を叩きのめす。

衝撃が脳を揺るがし、全身の肉を抉る。


だが、心は尚も形を保っている。全身から溢れる赤い血を見つめながら、カールは笑い続ける。

(ここでこいつを倒せば…俺はヒーローって事だな)

虚しそうなその笑みは、血の嵐の中で、人形のように固まっていた。


(こいつを倒せば、戦争は終わる)

笑みが、より吊り上がる。


(そしてこいつが…最後の犠牲になるはずだ…!)

自身の血を、両手でかき分ける。足場がないにも関わらず、両足を踏み込むような感覚が、彼を包む。

まだ動くカールに、マガツカイはもはや疑問すら覚え始めている。

(生物がここまで生命を留める事など不可能なはずだ。こいつを動かしてる物は一体…)

王でありながら、マガツカイは分からなかった。本来木偶の坊同然の状態となるこの男が、何故戦い始めたばかりの戦士のような闘志を保ち続け、そして肉体がその闘志に応えられるのか…。


カールはマガツカイにマグナムを叩きつけ、蹴り飛ばし、時々旋回する。その度に血が周囲に散り、視界に赤色がちらつく。

自身の血が落ちていく様は、精神的なダメージも高そうなものだが、それすら彼は気にしていない。

マガツカイは両手を向け、無数の闇の光弾を発射する。もはや避ける力も残っていないカールは、それに直撃しながら真正面から迫っていく。

全身を無数の刀で同時に貫かれるような激痛の中、カールは思った。


(皆、さらばだ…)





血まみれのカールを見て薄気味悪くなったマガツカイ…。

「おぞましいやつだ…消してやる」

マガツカイは口を開き、先程白の明星を裂いたあの光線のエネルギーを集めだした。





だが、まさかこの行動が仇となるとは、マガツカイ自身が一番予想だにしなかっただろう…。






「はは!!ついにそれを使いやがったか!」

カールはポケットから何かを取り出し、投げつける!

それは…無数の手榴弾だった。

手榴弾はマガツカイの口内で爆発!更に口内に溜めていたエネルギーが誘爆し、マガツカイは口の中から凄まじい衝撃を受ける!

「ぐああああ!!」

頭から血を散らすマガツカイ。

カールだけでなく、マガツカイの血も空間に浮かび上がった。頭を抑えて苦しむマガツカイの頭部に、赤い傷がついている。

「やったぜ、やっと俺が輝けるな!!」

傷目掛けてマグナムを叩きつける!痛覚がむき出しになった傷への重い一撃は、流石にマガツカイの意識を揺らめかせる。

「おのれええ、クズがああ!!」

両手から無数の光弾、全身から紫の大雷を撒き散らし、空間全土へ攻撃を繰り出すマガツカイ。カールは薄れる意識の中、その猛攻を本能だけで回避する。

回避しつつ、マガツカイの傷へ打撃を叩き込む。もはや人間の所業ではない。

「おらおら行くぜ、パーティーだ!!…俺は用意周到なもんでな!!」

カールは服の中からナイフを取り出し、更にポケットから残る二つの手榴弾を出す。

マガツカイの傷目掛けて集中攻撃!!爆発と刃の閃光が群れる中、カール自身も突っ込んで蹴りを浴びせる。


血を撒き散らしながら、バランスを崩すマガツカイ。いよいよ空間の無重力に全身を引っ張られつつあり、その衰弱は目に取れる。

「貴様…もはや愚かなどという言葉では言い表せない…」

両手を合わせ合い、エネルギーを集めるマガツカイ。紫の光が、空間を彩りだす。

空間そのものが色を変える…マガツカイは本気でカールを殺そうとしていた。


…そんな状況下なのにも関わらず、カールは…。





「あー」





…ポケットから煙草の箱を取り出した。中を開けると、煙草の本数は二本のみ。

「お楽しみが、もうこれだけかよ」

はあ、とため息を付きながら、カールはライターを取り出し、火を付ける。

白い煙が、虹色の空間の中で静かに、優しく、そして虚しく立ち上る。




「何をしているのだ…そんなゴミに何を望むのだ!?まあ良い…死ね!!」

マガツカイの両手から魔力が放たれる、正にその瞬間!





「うるせーよ」




カールは、火のついた煙草をマガツカイの両手目掛けて投げつける…。



火が魔力に反応し、爆発を発生させた!!

「ぐあっ!!」

怯んだマガツカイの隙をつき、カールは二本目の煙草に火をつけた。





最後で、そして最期の一本だ…。





火のついた煙草を片手に猛速度でマガツカイの頭上に回り込み…傷口に煙草を擦り付ける!!

「煙草の良さを知らねえやつが、一丁前に戦争なんか起こすんじゃねえ!!!」

燃え上がる灰が、傷口を抉る。マガツカイの悲鳴が響き渡った!!

更にたった今手先から放出していた魔力が暴発し…マガツカイの手元から、爆発が次々に発生する!

そして、この異空間の乱れた魔力にも振動し、空間中に爆発が巻き起こる。

虹色の空間が激しく点滅し、マガツカイはそれに巻き込まれ、翼を負傷する。

「ぐっ」

血を吐きながら、空間の狭間へと落ちていく闇王マガツカイ。


闇の一派の最期だった。


「闇よ…栄光あれ…」




漆黒の翼が剥がれていく。


その後ろで、空間の色は魔力の乱れによって少しずつ色が変わっていき…。





…黄昏の色に染まるのだった。


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